2025年春、フジテレビの番組編成に首をかしげた視聴者は少なくなかった。
木曜深夜0:25に放送されていたバカリズムMCの人気バラエティ『私のバカせまい史』が突如休止。その直後、同枠には月曜23時から放送されていた『何か“オモシロいコト”ないの?』がスライドされ、月曜23時台には、PR番組やFOD配信用に作られた番組の地上波再編集版(たとえば『世界で一番怖い答え』など)が放送されており、明らかに制作費を抑えた“節約型編成”が続いている。
視聴習慣の流れを考えると不自然な構成であり、バラエティ好きの視聴者の間でも疑問の声が上がっている。
今回は、この枠移動の裏にある“静かな地殻変動”について、番組表では読み取れない編成意図や業界事情を深掘りしてみたい。
【1】本来想定されていた“番組トレード案”
視聴者の間で囁かれている一説が、
これは決して荒唐無稽ではない。『バカせまい史』は2023年にはゴールデンで放送されていた実績もあり、深夜枠に再移動してからも一定の熱量あるファン層を獲得していた。一方、『何か“オモシロいコト”ないの?』は企画段階から“若年層向け”に設計されていたため、木曜深夜帯の方がむしろ適性が高いと見なされることもあった。
つまり、「バカせまい史を月曜23時に昇格」「何か〜を深夜へ移行」という番組の“トレード構想”が水面下で検討されていた可能性は十分にあるのだ。
【2】想定外の“収益構造の崩れ”と番組休止
しかし、2025年1月頃からフジテレビを取り巻く空気が一変する。
中居正広氏にまつわる一連の報道をきっかけに、同局がスポンサー企業との信頼関係を揺るがせたとされ、CMの差し替え、制作費縮小などの影響がじわじわと編成に表れ始めた。
この影響を最も受けやすいのが、「高品質だが制作費がかかる深夜バラエティ」だ。『バカせまい史』は構成作家のこだわりやVTR制作に予算がかかるタイプであり、局内でも“金のかかる深夜番組”の代表格だった。
結果的に、月曜23時への昇格どころか、制作休止=実質的な撤退という事態に至ったと考えるのが自然だ。
【3】月曜23時台の“空洞化”と緊急避難的な穴埋め
そうしてぽっかりと空いた月曜23時台。そこに投入されたのが、PR番組やFOD流用コンテンツという“埋め草”的な番組だった。
この状況が示すのは、
23時台といえば、他局では日テレ『news zero』、TBS『news23』といった報道番組が放送されており、バラエティ色はやや抑えめの時間帯だ。一方で、テレビ朝日では『激レアさんを連れてきた。』を編成。長年にわたり安定している。
そこの時間帯にフジテレビは、“PR番組”や“FODの地上波流用番組”とは、明らかに旗色が悪い。
この編成は、経済的に「動けないテレビ局」の苦肉の策であり、逆に言えば、今のフジテレビの体力を最も象徴している枠といえるかもしれない。
【4】“枠移動”に見え隠れするテレビ局の現実
枠移動というのは、単なる番組の引っ越しではない。
- 視聴者層の最適化
- 広告との親和性
- 制作コストと枠のバランス
すべてが織り込まれた“テレビ局の意思”である。
『バカせまい史』の昇格が流れ、『何か〜』が深夜帯に回されたという事実は、局の中で一度「昇格ラインに達した」評価を受けた番組ですら、外的要因(収益・信頼・スポンサー)によって打ち切られてしまうことを示している。
今後、他のバラエティ番組にも同様の影響が及ぶかどうか、注視する価値は十分にある。
【まとめ】
2025年春、フジテレビ月曜23時台で起きた番組編成の変化は、
視聴者が“違和感”を抱くとき、そこには必ず、表に出ない事情がある。
『私のバカせまい史』という高品質な番組ですら、予算や空気によって止まってしまう現実。 それは、“テレビ局という組織”の限界を静かにあぶり出している。
番組表に見えない“もう一つの真実”こそ、私たちが知るべき「メディアの向こう側(=OFF)」なのかもしれない。
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