「最近、回転寿司に行ったのに、寿司が回ってなかった」そんな声を耳にしたことはないだろうか?
実際、大手チェーン店を中心に、「寿司が回らない回転寿司店」が増えてきている。
その背景には、SNSで大きな話題となった迷惑動画騒動もあるが、実はそれ以前から、“回転寿司”というスタイル自体が変化を始めていたのだ。
今回は、回転寿司が“回らなくなった”理由と、そこから見えてくる外食業界の進化と課題について読み解いていく。
【1】「迷惑動画」はきっかけであって、決定打ではなかった
2023年、回転寿司チェーン各社を震撼させたのが、いわゆる“寿司ペロ”動画をはじめとする迷惑行為のSNS拡散だ。
- 皿に触れる
- レーン上の寿司に悪戯をする
- 醤油差しに口をつける
など、公共の場とは思えぬ振る舞いが記録され、社会問題として報道された。
これにより各社は、
・注文ごとに配膳レーンで提供
・店舗の完全タッチパネル制
などの対策を加速させた。
しかし、「寿司が回らなくなる」流れは、その前からすでに始まっていたのである。
【2】フードロス対策としての“回転縮小”
実は回転寿司業界では、
回せば回すほど、売れ残ったネタが廃棄されるリスクも増える。とくにマグロやウニなどの高価なネタほど、売れ残りは痛手になる。
結果として、
- 人気ネタしか回さない
- 一部店舗では“レーンは飾り”と化すという傾向が強まり、
迷惑動画は“安全性”の理由付けとなったが、経済合理性の観点からも「回さない方が得」という判断は、すでに浸透していたとも言える。

「じゃあさ、カピカピになったお寿司はスーパーみたいに半額シール貼って流したら良いんじゃないの?」
だが、それも偽装リスクや衛生管理の観点からも難しいだろう。
が、もし“半額皿”なる色分けが導入されたら……お客さんも承知の上でカピカピ寿司を食べる。それはそれで、新たな寿司の楽しみ方になるのかもしれない…。実現するかは分からないが…。
【3】DX化による“配膳革命”と顧客体験の変化
- タッチパネルで注文
- 鮮度保持のため個別配膳
- 自動仕分けの配膳レーン(新幹線風など)
こうした仕組みは、注文の効率化だけでなく、
つまり、“寿司が回らない”ことが、むしろ“クオリティ向上”と見なされるようになっているのだ。
【4】でも…“回転寿司”って、ちょっとワクワクしたよね?
とはいえ、回転寿司には
- 子どもが喜ぶ
- 意外なネタとの出会い
- “寿司が流れる非日常”という演出
こうした体験は、“注文効率”では代替できない部分でもある。
つまり今、回転寿司チェーンは
【5】“OFF的視点”で見ると…「回らない」のは悪なのか?
NEWS OFFとしては、ここに問いを立てたい。
そしてもうひとつ。
でも今は「効率」「衛生」「コスト」で“止められて”いる。
それって本当に進化なのか、それとも“置き忘れた何か”なのか──。
- フードロスを減らす → 環境への配慮
- 注文制への移行 → 効率化と顧客満足の最適化
- 非日常感の喪失 → 子どもの情緒体験の希薄化
合理化の中でこぼれ落ちた“ワクワク”や“偶然性”──
それをどう補っていくのか?外食という体験価値の問いが、今また浮かび上がっているのだ。
【まとめ】
- 回転寿司が回らなくなった背景には、フードロスやDXなどの事情が先にあった
- 迷惑動画騒動は、その流れを加速させる“後押し”に過ぎない
- しかし、回転そのものが持つ“体験価値”は失われつつある
寿司は今もおいしい。
でも、あの「くるくる」に胸を躍らせた日々は──
もしかすると過去のものになってしまうのかもしれない。

「俺も子どもの頃、寿司が流れてきただけでテンション上がってたなぁ…」
「そういえば、今の店じゃタブレットで静かに食べるだけだな…」
大人たちは覚えている。
子どもの頃に行った回転寿司の、ちょっと特別なあのワクワクを。
これからの子どもたちにも、それを味わわせてあげられないままで良いのだろうか?
寿司を“味わうだけ”で本当にいいのか。
かつて我々は、「おいしい」と「たのしい」を、同時に回していたのではなかったか?
けれど、寿司の楽しみ方は、時代とともに変わっていく。
“変化”のその先にある、新しい寿司との向き合い方を読み解くこと──
それこそが、今を見つめるNEWS OFF的な眼差しなのかもしれない。
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