「名探偵コナン」。1994年に『週刊少年サンデー』で連載を開始し、気づけば2025年の今、30周年を超えている…。
当初は1年か2年で完結するつもりだった──というのは、原作者・青山剛昌氏自身も語っている有名なエピソードだ。しかし、現実はまったく逆。コミックスは100巻を超え、アニメも1000話を突破、劇場版も毎年更新され、興行収入は日本映画界を席巻する一大コンテンツとなっている。
だが一方で、ふと疑問が湧く。

「コナン、いつまで子どものままなの?」
「黒ずくめの組織はまだ壊滅してないの?」
「そろそろ“目的達成”しても良くない?」
こうした声は、決して少なくない。今回はこの“終わらない名探偵”の構造について、NEWS OFF的視点で掘り下げてみたい。
【1】もともと長期連載の想定ではなかった
『名探偵コナン』は、連載開始当初から「新一が元の姿に戻り、事件を解決する」という明確なゴールを持った作品だった。
それゆえ、普通に考えれば“長期連載には向かない構造”である。
ところが、読者人気は想定を遥かに上回り、物語は“推理+日常+恋愛+陰謀”という要素を複層的に展開させ、キャラクターも激増。
特にアニメ化以降、「コナンが事件に巻き込まれる=1話完結の連続型」というフォーマットが確立されてからは、「1話進んでも黒の組織は動かない」「日常だけど殺人事件が発生する」という“永久機関”が成立した。
【2】「構造的ジレンマ」も抱えている
長期連載化したことによる“構造的な問題”もいくつか指摘されている。
- 成長しない時間軸:コナンの物語は「半年〜1年程度」しか経過していない設定。だが現実には30年分の事件が起こっており、「この半年で何人死んでるの!?」というツッコミも。
- “黒の組織”が進展しにくい:組織を倒してしまえば物語の目的が達成されてしまうため、「強敵だけど、いつも核心には至らない」立ち位置が必要。
- キャラ増加による回収難:服部平次、赤井秀一、安室透など、人気キャラが増えるほど“出番調整”が難しくなり、各キャラの物語が未完状態に。
このように、「人気=引き延ばし」を招き、「引き延ばし=構造的な矛盾」へとつながっている。
【3】“終われない”理由はビジネスモデルにある
とはいえ、終わらせない最大の理由は“ビジネス”にある。
『名探偵コナン』は、
- 毎年の劇場版(2024年作は100億円超)
- TVアニメの安定的視聴率
- グッズ・コラボ・イベント展開
など、多岐にわたる収益モデルを持っている。
ここに「最終回」が訪れてしまうと──ストーリーとしての締めくくりは可能でも、商品展開としての“エネルギー”が失われてしまうリスクもある。
特にファミリー層・若年層に絶大なブランド力を持つだけに、“連載中”という状態そのものが経済圏を支えているとも言える。
【4】じゃあ、どう終わらせるのが理想?
ここでファンの間でもたびたび話題になるのが「コナンをどう終わらせるべきか?」という問い。
- 黒の組織の壊滅?
- 新一に戻って蘭に告白?
- 謎の新薬で解決?
- 阿笠博士の“あの発明”で時間遡行?
…など様々な予想がなされているが、いずれにしても「大団円を望みつつも、寂しい」と感じるファンも多い。
“終わるとき”が、作品最大の事件になる──それが『名探偵コナン』の宿命なのだ。
【5】「事件を解く」という普遍フォーマット
それでも作品が愛され続けている理由は何か?
それは、コナンが持つ「謎解きの快感」という普遍性にある。
- 毎回違う登場人物
- 毎回違うトリック
- 毎回“正義が勝つ”爽快感
このワンセットの保証感が、見ていて飽きない。
つまり“黒の組織”は終わっていなくても、「推理劇としての満足」は日々、完結しているのだ。
これは“続けること”そのものが作品価値を生む例でもある。
【まとめ】
名探偵コナンが終わらない理由。それは、
● フォーマットの普遍性
● キャラクターの愛着
● ゴールに近づかない設計の妙
これらが複雑に絡み合った“奇跡のバランス”の上に成り立っている。
そして、NEWS OFF的に言うならば──
私たちは、コナンという少年の姿を借りて、「真実を暴くことの爽快さ」と「いつまでも子どもでいたい願望」を同時に投影しているのかもしれない。

終わらない謎解きの物語は、今日もまた、静かに「次回へ続く」。
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