「コーンに生まれた この命〜」
「キリンさんが好きです… でも…ゾウさんのほうがもっと好きです!」
「おててのシワとシワを合わせて幸せ〜」
これらのフレーズを、ふとした瞬間に思い出す人は少なくない。だが考えてみてほしい。
これらを流していた企業は、いま同じCMを打ち続けているだろうか? 答えは否だ。
つまり、CMはすでに終わっていても、商品名・企業イメージ・広告の印象だけは、私たちの中に根付いている。
この現象こそ、企業が広告で“本当に勝つ”ということではないか。
本記事では、90年代CM文化の中でも特に記憶に残る3つのCMを通して、
「なぜ今も覚えているのか」
「どうすれば広告は人々の記憶に刻まれるのか」
を、知的に考察する。
【第1章】コーンに生まれた この命──シャキッとコーンCMの記憶戦略
はごろもフーズ「シャキッとコーン」のCMは、1994年の放送開始以来、今なお語り継がれている。
特に印象的なのが、このフレーズだ。
「コーンに生まれた この命
シャキッと咲かせてみせましょう
シャキッと歯ごたえ
シャキッとコーン〜」
- 渋すぎる男性ボーカル
- 立体感あるコーン粒の映像演出(出たての3DCG的質感)
- 「命」「咲かせる」といった商品広告にしては壮大すぎるワード選び
こうした違和感が、強烈な印象とともに記憶に刻まれた。
また、キテレツ大百科やこち亀など、家族で見る安心の時間帯に頻繁に流れたことも、記憶定着の大きな要因だ。
すでにCMの放送は終了しているが、「シャキッとコーン」という商品名とともに、企業イメージは今なお私たちの記憶に残り続けている。
【第2章】ゾウさんのほうがもっと好き──松本引越センターCMとブランドの刷り込み
「キリンさんが好きです…
(電話口の担当者、しんみりと涙声)
でも…ゾウさんのほうがもっと好きです!」
この松本引越センターのCMは、一見すると電話の小芝居のように聞こえる。
だが実は、同社は当時からゾウさんをブランドキャラクターとして前面に押し出していた。
このCMは、
広告はもう流れていなくても、「松本引越センター=ゾウさん」という刷り込みは、今もなお多くの人の中に残っている。
【第3章】おててのシワとシワを合わせて幸せ〜──お仏壇のはせがわCM、親しみと記憶への工夫
「おててのシワとシワを合わせて幸せ〜」
宗教色の強い商品である仏壇を、子供でも口ずさめるリズムと親しみで包み込む。
このフレーズは、
…によって、日常の中に商品イメージを自然に溶け込ませた。
現在、このCMが流れているわけではないが、フレーズと企業名の記憶定着は長年維持され続けている。
【第4章】なぜ、あのCMたちは“企業の勝ち”だったのか?
今、テレビCMは溢れている。だが「記憶に残るCM」は、どれだけ存在しているだろうか。
今回紹介した90年代CMは、
これは広告戦略として、極めて大きな成功と言える。
今、同じように記憶に刻まれるCMはどれだけあるだろうか?
単なる情報発信ではなく、生活や文化に溶け込む“本物のCM”は、私たちの記憶の中にこそ生き続けている。

「CMが終わっても、覚えてるって…それが企業の“勝ち”なんだブー!オイラ、シワとシワもコーンの命も全部覚えてるブー!」
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