フランス・パリの象徴、エッフェル塔。
誰もが知るこの鉄の塔は、鋼鉄でできた不動のランドマーク──
…と思われがちだが、実は「夏になると15cmほど“身長が伸びる”」という驚きの性質を持っている。
建築物が、環境に応じて“呼吸”している。
この事実は、目に見えないところで繊細に動き続ける“構造の生命力”を私たちに教えてくれる。
第1章:「動かない」は“常識”なのか?
私たちの感覚では、「建築物=動かないもの」だ。
ましてや、高さ300メートルを超えるような超高層構造物が、日々伸びたり縮んだりするなど、想像すらしない。
だがエッフェル塔──この19世紀の鉄の芸術品は、環境に反応して動いている。
エッフェル塔は、気温の上昇により最大で15センチメートル程度伸びる
(公式サイト “The Eiffel Tower’s surprising summer growth” より)
toureiffel.paris
第2章:なぜ伸びる?──鉄の“正直な性質”
エッフェル塔の素材は鋼鉄(wrought iron)でできている。
この鉄は、温度が上がるとわずかに“膨張”するという特性を持つ。
- 鉄は 1℃の上昇で、1mあたり約0.012mm伸びる
 - エッフェル塔のように高さ300mを超えると、その伸び幅は「0.012mm × 300m × Δ温度」=数センチ以上
 
パリの夏、炎天下で鉄材が熱されると、塔の頂点がわずかに上昇する。
人間の目には見えないが、構造そのものが「膨らんでいる」のである。
第3章:この“動き”は計算済みだった
驚くべきは、この現象が設計段階から織り込み済みであるということ。
ギュスターヴ・エッフェルの設計チームは、19世紀という時代にありながらすでに、
素材の膨張係数・気温変化による変形・耐風性・安定性などを緻密に計算し、
「伸びることも想定して建てた」のである。
つまりこの塔は、動いてなお美しく立ち続ける“生きた設計”だった。
第4章:「伸びる構造物」は、他にもある?
実は、こうした“伸びる建築物”はエッフェル塔だけではない。
- 橋梁(レインボーブリッジなど)は夏と冬で十数cm伸縮
 - 鉄道のレールにも「温度調整の隙間」が設けられている
 - 超高層ビルも、風や温度による微細な揺れと伸縮を前提に構造が組まれている
 
■ そして、日本にも…
もしかしたら、日本の東京スカイツリーも、気温によって微細な伸縮をしているかもしれませんね。
鋼鉄と自然のせめぎ合いの中で、静かに伸びたり縮んだりしている──
そんな視点でランドマークを見上げてみるのも、また一興です。

「塔って、ずっと黙って立ってるだけかと思ったブー…
でも本当は「わずかに動く」「環境に反応する」…まるで生きてるみたいブーね〜!
建築って…ちょっとロマンチックだブー!」
まとめ:動かないものの中に、動いているものがある
「構造物が動く」と聞くと不安になるかもしれない。
だが、エッフェル塔の“15cmの伸び”は、むしろしなやかに自然と共に生きている証だ。
私たちが「不変」と思っているものほど、実は、
誰にも気づかれないところで微細に、そして確かに動いている。
それは、建築というよりも、呼吸する彫刻なのかもしれない。

  
  
  
  

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