ほっかほっか亭が、見つからない──
SNS上にそんな声が次々とあがっている。
2025年現在、日本の弁当チェーン市場において「ほっともっと」は全国で約2,300店舗を展開。
一方、「ほっかほっか亭」は約700店舗と、かつての面影を知る者にとっては驚くべき数字かもしれない。
一体、何が起こったのか。なぜ「ほっかほっか亭」は人々の記憶から“消えた”のか──。
第1章:「あたたかい弁当」が、まだ“奇跡”だった頃
1976年(昭和51年)、埼玉県に誕生した「ほっかほっか亭」。
当時、コンビニ弁当やスーパーのお惣菜は冷めていて当たり前。
電子レンジはまだ一般家庭に広く普及しておらず、“ほんのり温かい”だけで感動された時代だった。
「発泡スチロールの中に入った、ほんのり温かい弁当が嬉しかった」
──公式Xより
この“ちいさな感動”こそが、チェーン拡大の原点。
数年で全国展開へと加速し、最盛期には約3,500店舗という圧倒的ネットワークを誇った。
第2章:弁当業界の「分裂劇」──プレナス vs 総本部
しかし、この成功はやがて分裂を生む。
1999年、経営危機にあった親会社ダイエーが、関東・東日本の「ほっかほっか亭」事業の株式を九州のフランチャイジー「プレナス」に売却。
ここから、混迷の歴史が始まる──
■ フランチャイズ契約の崩壊と泥沼の商標戦争
- 2006年:プレナスが「商標権の侵害」を主張、総本部に損害賠償請求
- 2008年:プレナスが「ほっかほっか亭」から離脱し、「ほっともっと」ブランドを独立展開
- 結果:プレナスの運営していた約2,200店舗が「ほっともっと」へ転換
これは単なるリブランディングではなく、“弁当チェーン業界の内戦”だった。
第3章:“ほっともっと”の拡大と、“ほっかほっか亭”の再出発
分裂後、プレナスの「ほっともっと」はブランド刷新とともに急成長。
全国規模のCM展開、メニュー刷新、電子レンジ対応パッケージの導入など、現代的な戦略で攻勢に出る。
一方で、「ほっかほっか亭」は九州・西日本を中心に地道に継続。
特に関西・山陰エリアでは根強い人気を誇り、地域密着型のスタイルを続けてきた。
◆ 現在の店舗数(2025年時点)
ブランド | 店舗数 | 主な展開エリア |
---|---|---|
ほっともっと | 約2,300 | 全国(特に関東圏強い) |
ほっかほっか亭 | 約700 | 西日本中心 |
第4章:「あたたかさ」を問い直すSNS時代の存在感
X(旧Twitter)では、近年このような投稿が目立つ。
- 「ほっかほっか亭、最近見かけないけどまだあるの?」
- 「唐揚げ弁当といえば、こっちだった」
- 「ほっともっとに変わったんじゃなかったっけ?」
この“混線”こそ、ブランド分裂の影響が今も続いている証拠だ。
そんな中、「ほっかほっか亭 公式」はこんな呼びかけを行っている。
「街の台所 ほっかほっか亭がある場所を教えてください…」
この投稿は、懐かしさと同時に“切実さ”も感じさせる。
「見えないけれど、なくなってはいない」。そう訴えているようでもある。
第5章:3Hの信念──Hot・Heart・Honesty
ブランド分裂後も、「ほっかほっか亭」は創業時からの理念を守り続けてきた。
Hot:あたたかいお弁当を
Heart:心をこめて
Honesty:まじめに
この「3H(スリーエイチ)」の信念は、創業から48年を経ても変わっていない。
「初心を忘れず、まごころ込めてあたたかいお弁当を届ける」
──公式Xより
それは、大手チェーンとの差別化ではなく、「原点を忘れない」覚悟の表明である。
第6章:そして私たちは、何を選ぶのか?
「どっちが美味しい?」という問いに、答えはない。
「ほっともっと」は進化の象徴であり、
「ほっかほっか亭」は記憶の象徴かもしれない。
でもきっと誰にでも、“あの店の、あの味、あの匂い”が心に残っている。

「味は時代とともに変わるけど、“あたたかさ”って記憶にはずっと残るんだブー!」
まとめ:あたたかさは、姿を変えても消えない
ほっかほっか亭は、“過去の弁当チェーン”ではない。
それは、昭和の商店街で感じたぬくもりであり、
平成の部活帰りに買った唐揚げ弁当であり、
令和に見つけて「あっ、まだあった」と感じる再会の喜びだ。
姿を変え、数を減らしても、
“あたたかい記憶”という意味で、今も私たちの中に存在している。
街角でふと見かけたら、
立ち寄ってみよう。
そしてこう言いたい。
「ほっかほっか亭、まだここにあるよ」って。
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