日本が世界一に輝いた2023年のWBC決勝。平日午前にもかかわらず視聴率は42.4%。誰もが“あの瞬間”をリアルタイムで共有した──テレビを通じて。
だが次回、2026年のWBCは「テレビで見られない」かもしれない。
放送権を手にしたのは、Netflix。しかも“独占”。地上波は消滅へ。
これは、スポーツとテレビの関係性の終焉なのか?それとも、新たな時代の幕開けなのか?
第1章:Netflixが放った“メディア革命”──WBC独占のインパクト
■ 地上波“消滅”の決定打
2025年8月25日、NetflixはWBCを運営する「WBCI」と独占契約を結び、2026年大会全47試合のライブ配信を発表。
これにより、前回大会で日本戦を中継していたTBSやテレビ朝日などの地上波局は完全に排除されることとなった。
「すでに数百万世帯で利用されているNetflixを通じ、ファンが新しい視聴体験を楽しめる」
──Netflix日本コンテンツ担当VP 坂本氏
つまり今回、WBCは“テレビ局を通さず”Netflixと直接契約されたという構図。
スポーツ中継をめぐる地殻変動が、いよいよ地上波にも及んだ形だ。
第2章:地上波各局の“落胆”と“限界”──放映権ビジネスの変容
■ 「取得できなかった」テレビ朝日、「意義がある」と語るTBS
- テレビ朝日:「第1回から放送してきたが、今回は権利獲得に至らず」
- TBS:「無料の地上波で中継する意義は非常に大きい」
両社ともに、国民的関心イベントを“無料で提供する価値”を語りつつも、高騰する放映権料の前に為す術なく敗北した印象は否めない。
■ 視聴率42.4%の“栄光”も過去に…
前回WBCでは、日本戦すべてで視聴率40%超を記録。
しかし、その大成功こそが、放映権料の暴騰に拍車をかけたとも言える。
- 2023年:テレビ+Amazon Primeの“ハイブリッド中継”
- 2026年:Netflix“単独”独占
まさに“熱狂”の代償として、“視聴の敷居”が高くなったのである。
第3章:WBCの“普及目的”は矛盾するのか?
■ 無料で見られないWBCに、ネットはザワつく
ネット上ではこんな声が相次いでいる。
《子どもが野球に興味を持つチャンスなのに、見られないの?》
《地上波でやらないなら、野球人口減る未来しか見えない》
《普及を掲げるWBCの理念と矛盾してない?》
確かに、「地上波=普及の装置」という見方は根強い。
とくに、テレビをつければすぐ見られる環境がない今、ライト層の関心喪失=競技人口の減少はあり得るシナリオだ。
第4章:それでも「900円払えば見れる」論の現実
■ 「安いだろ」「時代の流れ」というカウンター意見
一方、肯定派の声も無視できない。
《900円くらい払えよ》
《世界的なイベントだぞ?金を出す価値ある》
《たかがスポーツに高望みするな》
Netflixの最安プランは月額890円。
確かに、DAZNの月額4200円に比べれば良心的だ。
ただし注意点もある。
- 広告付き
- 録画不可
- オフライン再生制限
つまり、テレビと同じ感覚で“家族で観戦”“録画保存”とはいかないのだ。
第5章:なぜ“独占”が進むのか?放映権ビジネスの構造変化
■ WBCIが動いた“直接契約”の意味
今回の契約、注目すべきは読売新聞社を通さずWBCIがNetflixと直接契約したという点。
つまり、既存メディアの枠組みを飛び越えた構造変更が起きている。
これは世界的な潮流でもある。
- WWE(プロレス) → Netflix独占
- NFL → Amazon Prime
- サッカーW杯アジア予選(アウェー戦) → DAZNのみ(地上波なし)
「カネを出せるプラットフォーム」が配信権を握る時代──
それが“スポーツ×ビジネス”の現実になってきている。
- 野球普及を妨げる“ライト層との断絶”
- 高齢層・家庭環境による視聴格差
- 録画不可・広告付きなどの体験制限
- 「見ない自由」ではなく「見られない現実」
“WBCは見るもの”から“契約しないと見られないもの”へ。
その違いは大きい。

「有料でもいいから見たいブー!でも「地上波ゼロ」はやっぱり…寂しいブー…
ブクブーは子どもたちと一緒にワイワイ野球見るのが好きなんだブー!
野球の楽しさ、置いてけぼりにならないといいブー…」
結論:スポーツ中継はどこへ向かうのか
WBC地上波“消滅”というニュースは、単なる放送形態の変更ではない。
それは「野球をどう届けるか」という思想と、「放映権ビジネスの構造」が衝突した結果でもある。
時代は進む。
だが、“みんなで見る楽しさ”は後退していないか?
テレビの時代の“共有”と、ネットの時代の“選択”──
そのはざまで、スポーツとメディアの関係は、いま大きな曲がり角を迎えている。
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