【発表】『2025 新語·流行語大賞』ノミネート30──知ってる?それぞれの言葉の意味、徹底解説

社会
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今年もまた、その一年を象徴する30の言葉が、私たちの前に提示された。『現代用語の基礎知識』選、「2025 T&D保険グループ新語・流行語大賞」のノミネート語発表。

選考委員会が「スポーツ関連の言葉が少ない珍しい年」と評した通り、2025年は、国民全体が一体となって熱狂するような、大きな“祭り”には恵まれなかったのかもしれない。

その代わりに浮かび上がってきたのは、アメリカから吹き荒れる政治の嵐、私たちの財布を直撃する物価高、そして命を脅かす異常気象といった、より現実的で、切実な社会情勢を反映した言葉たちだ。

一方で、SNSの片隅で生まれ、瞬く間に日本中を駆け巡った小さなミームや、特定のコミュニティが生み出した熱狂的なブームもまた、確かにこの年を彩った。

本稿は、ノミネートされた30の言葉を、単なる流行の記録としてではなく、現代社会を読み解くための重要な「キーワード」として再定義し、その背景にある構造的な変化や人々の心理を、多角的な視点から深く分析するものである。


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第一章:2025年の“顔”──社会・政治・経済を揺るがした、避けられない現実

今年のノミネート語で最も色濃く現れているのは、私たちの生活や価値観を、直接的かつ強烈に揺さぶった、マクロな社会の動きである。

分類ノミネート語解説と背景
国際政治トランプ関税2024年の米大統領選挙で勝利し、再び世界の中心に躍り出たドナルド・トランプ氏。彼の保護主義的な通商政策は、世界経済に大きな不確実性をもたらし、日本もその影響と無縁ではいられない。「力」を背景にした彼の交渉術は、2025年の国際情勢を象徴する言葉となった。
教皇選挙第266代教皇フランシスコの逝去に伴い、次のローマ教皇を選出する「コンクラーベ」が世界的な注目を集めた。アメリカ人の新教皇レオ14世が誕生し、カトリック教会が新たな時代を迎えたことを印象付けた。
国内政治働いて働いて働いて働いて働いてまいります/女性首相自民党総裁選を勝ち抜き、日本初の女性首相となった高市早苗氏。その就任会見でのこの言葉は、彼女の不退転の決意を示すものだったが、同時に「ワークライフバランス」が重視される現代の価値観とのギャップも浮き彫りにし、賛否両論を巻き起こした。
卒業証書19・2秒学歴を巡る問題で注目された静岡県伊東市の市長が、市議会で卒業証書の提示を求められた際、わずか19.2秒間だけ見せたという報道。政治家の説明責任のあり方を、皮肉と共にあらわした言葉として、ネットを中心に拡散した。
オールドメディア新聞・テレビといった既存の大手メディアを指す言葉。政治的な議論や社会問題において、ネット世論と既存メディアとの間の認識のズレや対立が先鋭化する中で、批判的なニュアンスで用いられることが多かった一年だった。
経済・生活物価高数年前から続く、食料品やエネルギー価格の上昇が、2025年も私たちの生活を直撃した。給料が上がらない中での終わりの見えない値上げは、多くの家庭にとって最も切実な問題であり続けた。
古古古米コメ価格の高騰を受け、政府が市場に放出した備蓄米の呼び名。普段聞き慣れないこの言葉は、「令和の米騒動」とも呼ばれる社会状況の異常さを象徴し、人々の生活防衛意識の高まりを示すものとなった。
社会問題緊急銃猟/クマ被害市街地へのクマの出没が過去最悪レベルで頻発。人身被害が相次ぐ中、改正鳥獣保護管理法に基づき、市街地での銃猟が可能となる「緊急銃猟」が導入された。人間と野生動物との境界線が揺らぐ、現代社会の課題を象徴する言葉。
オンカジオンラインカジノの略。スポーツ選手や著名人の利用が次々と発覚し、その違法性や依存症の危険性が、改めて社会問題としてクローズアップされた。スマートフォンの向こう側に潜む、新たな形のギャンブル依存の闇を浮き彫りにした。
企業風土ジェンダー問題や職場でのハラスメントなど、個人の資質だけでなく、組織全体の構造的な問題である「企業風土」に注目が集まった。声を上げにくい空気や、旧態依然とした価値観が、多くの問題の根源にあると認識された年だった。
労働フリーランス保護法2024年11月に施行されたこの法律は、多様な働き方が広がる中で、弱い立場に置かれがちだったフリーランスの権利を守るための重要な一歩として、多くの当事者から注目された。
歴史認識戦後80年/昭和100年2025年という年が持つ、歴史的な節目。戦争の記憶の風化が懸念される中で、改めて平和の尊さを問い直す企画や報道が数多く行われた。
POINT

これらの言葉は、2025年が、国内外の大きな構造変化の波に、私たち一人ひとりが否応なく晒され、自らの生活や価値観を見直さざるを得なかった一年であったことを、力強く物語っている。


第二章:ピンポイントの熱狂──SNSとコミュニティが生んだ、小さな“祭り”

マクロな社会の動きとは対照的に、特定のコンテンツやコミュニティから生まれ、爆発的な拡散力で日本中を席巻した「ピンポイントの熱狂」も、今年の大きな特徴であった。

分類ノミネート語解説と背景
エンターテインメント国宝(観た)吉田修一原作、李相日監督による映画『国宝』が、興行収入・評価ともに社会現象的な大ヒットを記録。「#国宝観た」というハッシュタグと共に、その圧倒的な熱量を語る感想がSNSに溢れ、世代を超えたムーブメントとなった。
水曜日のダウンタウン
「長袖をください」
「ひょうろく」
TBSの人気番組『水曜日のダウンタウン』からは、2つの言葉がノミネート。人気企画「名探偵津田」で生まれたダイアン津田の迷言と、同番組からブレイクしたピン芸人「ひょうろく」。番組が持つ、新たなスターと流行語を生み出す圧倒的な影響力を改めて証明した。
NHK朝ドラ
「ほいたらね」
NHK連続テレビ小説『あんぱん』の舞台となった高知県の方言で「またね」の意味。毎朝聞かれるその優しい響きが、視聴者の心を掴んだ。
SNS・ミームエッホエッホ海外の写真家が撮影した「草むらを走るメンフクロウのヒナ」の写真に、日本で「エッホエッホ」という擬音が添えられ大ブレイク。その愛らしい姿と音が融合し、楽曲化やショート動画などで一大ミームとなった。
ビジュイイじゃん男性ボーカルダンスユニット・M!LKの楽曲「イイじゃん」の歌詞の一部。TikTokを中心に、その日の見た目が良いことを褒め合うポジティブな言葉として、若者層に広く浸透した。
チョコミントよりもあ・な・たメディアミックスシリーズ「ラブライブ!」から生まれた声優ユニット・AiScReamの楽曲のセリフ部分。その甘くキャッチーなフレーズがTikTokで人気を博した。
キャラクターミャクミャク大阪・関西万博の公式キャラクター。当初は「不気味」「怖い」と評されながらも、その独特の世界観が徐々に受け入れられ、最終的には社会現象的な人気を獲得。グッズは完売が続出した。
ラブブ香港のデザイナーが生んだ、ウサギ耳のキャラクター。BLACKPINKのリサが紹介したことをきっかけに、世界的なブームが日本にも到来。スクールバッグにキーホルダーを大量につける文化の再燃にも繋がった。
社会現象・デマ7月5日「7月5日に巨大津波が来る」という、科学的根拠のないデマがSNSで拡散。人々の防災意識の高さや、災害への潜在的な恐怖心に、偽情報が付け込む危険性を改めて示した。
POINT

これらの言葉からは、熱狂が生まれる起点が、もはやテレビや映画といった「オールドメディア」だけでなく、SNSのたった一つの投稿や、特定のファンコミュニティの熱量へと、大きくシフトしていることが見て取れる。大きな“祭り”はなくとも、無数の小さな“祭り”が、至る所で生まれていたのだ。

ブクブー
ブクブー

「エッホエッホ、流行ったんだブー!あのフクロウ、かわいかったんだブー!こうやって見ると、テレビから生まれた言葉と、ネットから生まれた言葉が、半分半分くらいなんだブーね。時代が変わったんだブー…」


第三章:ライフスタイルの“今”を映す、静かな言葉たち

私たちの日常生活や価値観の変化を、静かに、しかし的確に捉えた言葉も数多くノミネートされた。

分類ノミネート語解説と背景
ライフスタイル・価値観おてつたび「お手伝い」と「旅」を組み合わせた造語。人手不足の地方と、新たな旅の形を求める若者とを繋ぐこのサービスは、関係人口の創出や、ワーケーションの新たな形として注目された。
ぬい活好きな「ぬいぐるみ」と生活を共にする活動。単なる子供の遊びではなく、大人たちが「推し」の分身としてぬいぐるみを愛で、共に旅をし、写真を撮るという、新しい形の愛情表現として定着した。
平成女児1990年代後半~2000年代初頭の少女文化への再評価。「Y2Kファッション」の流行とも連動し、当時のアニメやキャラクターグッズ、パステルカラーの色使いなどが、現代の若者たちにとって「新しいカワイイ」として再発見された。
二季春や秋といった過ごしやすい季節が短くなり、長い夏と冬だけになってしまったかのような、近年の日本の気候変動を端的に表した言葉。多くの人が肌で感じる異常気象への危機感が、この言葉に凝縮されている。
健康・ウェルネスリカバリーウェア疲労回復や睡眠の質向上を謳う高機能ウェア。多忙な現代人が、限られた休息時間をいかに効率的に使うかという、タイムパフォーマンス(タイパ)重視の価値観が、健康分野にも及んだことを象徴する。
薬膳専門的な知識が必要と思われがちだった薬膳が、身近な食材で体調を整えるライフスタイルとして、若い世代にも浸透。健康への意識の高まりと、食を通じて自分を労わりたいというニーズの現れ。
食文化麻辣湯中国発祥の、しびれる辛さが特徴のスープ。具材や辛さを自分好みにカスタマイズできる点が、多様性を重視する現代の消費者の心を掴み、専門店が急増した。
その他チャッピーAIチャットサービス「ChatGPT」の愛称。AIが一部の専門家のものではなく、誰もが日常的に使うツールとして、社会に完全に浸透したことを示す、親しみを込めた呼び名。
POINT

これらの言葉は、私たちがどのような事に関心を持ち、どのようなライフスタイルを志向し、そして何に不安を感じているのかを、鏡のように鮮やかに映し出している。


終章:2025年、私たちは何を見つめ、何に熱狂したのか

30のノミネート語を俯瞰すると、2025年という年の輪郭が、より鮮明に浮かび上がってくる。

それは、世界規模の政治・経済の大きな変動に、否応なく影響を受ける「受動的な私たち」と、SNSやコミュニティの中で、自らの手で小さな、しかし熱狂的なブームを生み出す「能動的な私たち」という、二つの顔を持つ一年だった。

国民全体を一つにするような大きな物語(スポーツの祭典など)が不在の中で、社会の分断は、より一層進んだのかもしれない。しかしその一方で、人々はそれぞれの場所で、それぞれの「推し」を見つけ、それぞれの「言葉」を生み出し、繋がり、熱狂していた。

12月1日、この30の言葉の中から、年間大賞とトップテンが選出される。
どの言葉が選ばれようとも、このノミネートリストそのものが、2025年という時代を生きた、私たち自身の、かけがえのない記憶のアルバムなのである。

ブクブー
ブクブー

「こうやって全部並べてみると、本当にいろんなことがあったんだブーね…。大変なニュースも多かったけど、『エッホエッホ』とか『ビジュイイじゃん』みたいな、楽しい言葉もたくさんあったんだブー。来年は、もっともっと楽しい言葉が流行るといいんだブー!」

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