2025年4月13日に開幕した「大阪・関西万博」。
「未来社会の実験場」として注目され、政府・自治体・企業が総力を挙げて取り組んできたこのイベントだが、開幕から1か月が経過した5月13日時点での来場者数はおよそ261万3000人──6カ月間の開催期間で掲げる“2820万人”のわずか9%程度にとどまっている。
はたして、この“伸び悩み”は一過性のものなのか。それとも、万博という枠組みに対する「時代の違和感」が顕在化してきたのだろうか?
『NEWS OFF』では、この数字の裏にある“OFFな視点”から、低調スタートの背景を掘り下げてみたい。
【1】想定来場者数と“目標ペース”のズレ
まず前提として、6カ月で2820万人の来場者数を達成するには、
→ 1日あたり 約15万6000人→ 1か月あたり 約470万人
…が必要とされていた。しかし、実際の1カ月目(4月13日〜5月13日)の来場者は約261万人。
これは、理想のペースの「およそ5.5割」にとどまっており、現状のままでは目標達成が難しいという試算になる。
【2】来場者数が伸びない理由は?
ここで浮かぶのが、「なぜこんなにも低調なのか?」という疑問だ。
“未来感”の演出不足 → 万博の醍醐味は「未知の未来を体感できるワクワク感」。だが、現地の展示・パビリオンに関して「期待ほど未来的ではない」「企業プロモーション感が強い」といった声が目立つ。
アクセス&天候リスク → 会場の夢洲(ゆめしま)地区は、公共交通機関の接続が限定的で、アクセスに不安の声。さらに4月後半〜5月前半は悪天候も重なり、外出の足が鈍った側面も。
“物価高”と“万博疲れ” → チケット代(前売り大人6000円)に加え、現地での飲食・グッズの高価格化、そしてコロナ禍を経た「大型イベント疲れ」も影響。お祭り感に乗れない層が想定より多かった。
SNSでの“ネガティブ拡散” → SNS時代において、現地の「混雑」「展示物の少なさ」「工事の残り香」などが即座に拡散。行く前から“マイナスイメージ”を持つ人も増え、行動のハードルが上がった。
【3】「万博」というコンテンツの構造変化?
そもそも「万博」というフォーマット自体が、今の時代とズレ始めているのでは?という指摘もある。
昭和の万博(1970年・大阪万博)では、テレビや海外旅行が一般化していない時代において、「未来技術をリアルに体験できる」ことが大きな魅力だった。
だが、現代では技術情報も映像も“スマホで即閲覧”できる。さらに、企業の製品発表や技術体験は、単体イベントや常設施設でも体感できるようになっている。
「じゃあ、わざわざ“万博”として行く意味は?」
この問いに、主催側が十分に答えられていない印象も否めない。
【4】これからの巻き返しに必要なもの
低調なスタートを受けて、主催者側もテコ入れを図り始めている。
- 学生割引やファミリー層向けキャンペーン
- 夜間開場やライトアップ演出の強化
- 各国パビリオンのコンテンツ充実
これに加えて重要なのは、
→ 「ここでしか見られない」体験の明確化→ 来場者の“投稿・発信”を誘発するストーリー設計→ オンラインとの連携による“疑似体験”の先出し誘導
など、「行きたくなる理由の再構築」である。
【まとめ】
大阪・関西万博が直面する“来場者数の伸び悩み”は、単なる数字の問題ではない。
それは、
という問いを、主催者側も、社会全体も、突きつけられているということなのだ。
未来を描く場として、再び“熱狂”を呼び起こせるのか。それとも、静かなまま通り過ぎるのか──。
ここからの残り5か月。万博という枠組みの“OFFな再定義”が、問われている。
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