スーパーやカフェでよく見かける「セイロンティー」。
ふと考えてみれば──今の国名はスリランカ。それなのに「セイロン」という呼び方が残っているのは、どこか不思議ではないでしょうか。
実はこの名前のねじれには、植民地支配・独立・ブランド価値という三層構造が絡み合っています。
第1章:「セイロン」という名のルーツ
「セイロン」という呼び方は、イギリス植民地時代に根づいたものです。
現地語「シンハラ」から派生し、“ライオンの島”を意味するとされます。
- 16世紀:ポルトガル人が「セイラン」と呼び始める
- その後、オランダ・イギリスと植民地が移り変わる中で「セイロン」に定着
- 1948年の独立後も、しばらく国名は「セイロン」のまま
つまり、「セイロン」は本来の地名というよりも、外から与えられた名前だったのです。

「外からの呼び名が、国名になっちゃってたんだブー!」
第2章:スリランカへ――国名改称の背景
1972年、国名は「セイロン」から「スリランカ」へ改められました。
これは単なる気分の一新ではなく、植民地時代からの脱却を象徴する大きな出来事でした。
- 共和国への移行を機に、名称を本来の「スリランカ」(=光り輝く島)に改称
- 「カルカッタ → コルカタ」「ボンベイ → ムンバイ」と同じく、現地の言語に根ざした呼称を取り戻す動き
つまり、「スリランカ」という国名は、アイデンティティの再確認だったのです。
第3章:なぜ紅茶だけ「セイロン」のまま?
ではなぜ紅茶の世界では、いまだに「セイロン」の名が残っているのでしょうか。
理由はシンプルで──ブランド価値です。
- すでに「セイロンティー」は世界市場で確立
- 「セイロン=高品質な紅茶」という認知が根づいていた
- 改称すれば、せっかく築いた信用を失うリスクが高い
こうして「セイロン」という名は、国名では消えても商品名として残るという特殊な運命をたどることになりました。

「ブランドって、一度定着すると変えられないブー!」
第4章:名前の“ねじれ”が語るもの
この「セイロン/スリランカ問題」は、単なる言葉の違い以上の意味を持ちます。
- 歴史の残滓:植民地支配の名残が、ブランド名に化石のように残る
- 経済の論理:歴史的背景よりも、世界市場での認知度が優先された
- 文化の二面性:「セイロン」は異国情緒を漂わせる一方、「スリランカ」は現代国家としての誇りを示す
ここには、名前=アイデンティティと経済価値がぶつかる地点がくっきり見えます。
終章:セイロンに口をつけながら考える
今日もどこかのティールームで、「セイロンティーください」と注文する人がいます。
その一言の中には、植民地の歴史・独立の記憶・グローバル市場の力学がぎゅっと濃縮されているのです。
私たちが何気なく口にする言葉は、ときに歴史を抱え込み続ける。
一杯の紅茶が放つ芳香の奥に──そんな知的な余韻が潜んでいるのかもしれません。
- 「セイロン」は植民地由来の呼称
- 1972年に国名は「スリランカ」へ改称
- しかし「セイロン紅茶」は世界的ブランドとして存続
- 名前のねじれは、歴史と経済の交錯点を映す

「次にセイロンティー飲むときは、ちょっとだけ歴史の味も感じるブー!」
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