姫路男性刺殺事件、通報時の謎の「いびき」が示した重大サイン──“死戦期呼吸”の正しい知識

社会
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2026年1月20日午前、兵庫県姫路市で起きた痛ましい事件。集合住宅の敷地で30代の男性が背中を刺され死亡した。
このニュースの中で多くの人が違和感を覚えたであろう、最初の119番通報のある一節がある。

「若い男性が背中を刺されたと言っています。さっきまでしゃべっていたが、今はいびきをかいています

なぜ瀕死の重傷を負った人間が「いびき」をかくのか。

一見奇妙に聞こえるこの証言。しかしこれこそが人の命がまさに尽きようとするその瞬間に見られる、極めて危険なサイン「死戦期呼吸(しせんきこきゅう)」の典型的な症状であった可能性が高い。

本稿は、この悲劇的な事件をきっかけに我々が知るべき救命の知識、「いびきに見える呼吸」の本当の正体と、その時に我々が取るべきだったかもしれない行動を医学的な見地から解き明かすレポートである。


第一章:「死戦期呼吸」とは何か?──“生きている”と誤解させる死のサイン

死戦期呼吸とは心停止(心臓が止まること)の直後に見られる、しゃくりあげるような、あるいはあえぐような異常な呼吸のことである。

  • なぜ起きるのか?
    • 心臓が止まり脳への酸素供給が絶たれると、脳の最も深い部分にある呼吸中枢が最後の力を振り絞り、反射的に「呼吸しろ」という指令を出す。
    • しかし心臓が動いていないため正常な呼吸はできず、顎(あご)だけがパクパクと動いたり喉がゴロゴロと鳴ったりする。これが死戦期呼吸の正体だ。
  • なぜ「いびき」と誤解されるのか
    • このしゃくりあげるような顎の動きや喉の音が一般的な「いびき」や「あくび」に見た目が酷似しているため、「気を失って寝ているだけだ」と誤認されやすい。
    • 「動いているから大丈夫」「呼吸しているから大丈夫」という目撃者の「助かってほしい」という心理的なバイアスも、この危険な誤解を助長する。
ブクブー
ブクブー

「ええーっ!?そうだったんだブーか!心臓が止まった直後に最後の力でしようとする呼吸が『いびき』みたいに見えることがあるんだブーか…『生きてる!』って勘違いしちゃうのも無理ないんだブー…。怖すぎるんだブー…。」


第二章:「様子を見る」か「直ちに圧迫か」──正常な呼吸との決定的な違い

目の前で人が倒れた時、その呼吸が「正常」なのかそれとも「死戦期呼吸」なのかを見分けることが、その人の運命を分ける。

特徴死戦期呼吸(心停止のサイン)正常な呼吸・睡眠
リズム途切れ途切れで不規則一定のリズムがある
「ガアッ、ガアッ」というあえぐような音スー、ピーという寝息や通常のいびき
胸の動き胸や腹が動いていない(顎だけが動いている)胸や腹部が規則的に上下している
呼びかけ全く反応がない反応があるか、強い刺激で目覚める

第三章:もしあなたがその場にいたら

日本心臓財団などが呼びかける救命ガイドラインによれば、もし目の前で倒れた人が死戦期呼吸をしている、あるいは「普段通りの呼吸をしていない」と判断した場合、取るべき行動はただ一つである。

それは「心停止」と同じとみなし、一刻も早く119番通報と胸骨圧迫(心臓マッサージ)、そしてAED(自動体外式除細動器)の使用を開始することだ。

「いびきをかいているからしばらく様子を見よう」という善意からの判断。それこそが救えるはずの命を失わせてしまう、最も危険な“罠”なのである。

ブクブー
ブクブー

「なるほどだブー…。ちょっとでも『呼吸がおかしいな』って思ったら、もうそれは『心臓が止まってる』って考えてすぐに心臓マッサージを始めなきゃいけないんだブーね!『様子を見る』っていう選択肢はないんだブー!」


終章:正しい知識が命を救う

姫路で起きたこの悲劇的な事件。通報者が「いびきをかいている」とその異常な状態を正確に通信指令員に伝えたことは、極めて重要であった。

しかしもし我々自身がその場に居合わせた時。
あの奇妙な呼吸を「ただのいびきだ」と誤解せず、「これは心停止のサインかもしれない」と気づくことができるか。

このあまり知られていない「死戦期呼吸」という救命の知識。
それを頭の片隅に置いておくこと。
それこそがいつかどこかで誰かの、そして我々の愛する人の命を救う、最も確実なお守りとなるのかもしれない。

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