さらば、ロッテリア──なぜエビバーガーの“元祖”は54年で「ゼッテリア」に“転換”されるのか

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2026年1月21日、日本の外食産業における歴史的な転換点が公表された。ゼンショーホールディングスは傘下のハンバーガーチェーン「ロッテリア」の全店舗を、同年3月末をもって新ブランド「ゼッテリア」へと完全に転換し、半世紀以上にわたり親しまれてきた「ロッテリア」のブランド名を消滅させることを決定した。

このニュースに先立ち、2025年末に閉店したJR札幌店のレシートに印字された「50年以上、ありがとうございました」というメッセージがSNS上で拡散され、多くの人々が「ロッテリアのある風景」の喪失を実感し始めていた矢先の出来事だった。

1972年の創業以来マクドナルドやモスバーガーと共に日本のハンバーガー文化を支え、独自の進化を遂げてきた「赤と黄色の看板」がなぜ今その名を閉じることになったのか。本稿は、その54年間の栄光と苦闘の軌跡を解き明かすレポートである。


第一章:黎明期──「エビバーガー」という“日本独自”の発明

ロッテリアの歴史を語る上で1977年の「エビバーガー」の発売は、最大のトピックの一つである。

  • 「世界初」の真相
    • ロッテリアは公式にこの商品を「世界初」としている。しかし食文化史を紐解くと、アメリカ南部には1950年代から「シュリンプ・バーガー」と呼ばれる郷土料理が存在していた。
    • ロッテリアの発明の本質は「エビをハンバーガーにする」というアイデアそのものではなく、「エビをすり身にしてカツ(パティ)状に成形し、タルタルソースと合わせてファストフードのシステムで大量提供可能な規格に落とし込んだこと」にある。これは日本の「エビカツ」の技術を応用した、欧米の模倣ではない日本独自のイノベーションであった。
  • その後の影響
    • このエビバーガーの成功は他社にも多大な影響を与えた。マクドナルドが日本独自の「えびフィレオ」を発売したのは2005年、ロッテリアから実に28年も後のことである。「日本のハンバーガーショップにはエビバーガーがある」という常識を作り上げたのは、間違いなく1977年のロッテリアの功績だ。
ブクブー
ブクブー

「ええーっ!?エビバーガーってロッテリアが元祖だったんだブーか!しかもマクドナルドより30年近くも早かったなんて…!知らなかったんだブー!すごい発明だったんだブーね!」


第二章:再生と革新──「絶品チーズバーガー」の衝撃

1990年代のデフレ競争の中で一時は迷走したロッテリア。しかし2005年、企業再生会社リヴァンプとの提携を機に劇的な復活を遂げる。その象徴が2007年に発売された「絶品チーズバーガー」である。

  • 「引き算」の美学
    • 当時の市場トレンドは具材を山盛りにしたボリューム重視の商品だった。しかしロッテリアはあえて野菜もソースも一切使用せず、バンズ、パティ、チーズという素材そのものの品質で勝負する「引き算」のアプローチを選択した。
    • 酒種を使ったバンズ、つなぎなしのパティ、2種のナチュラルチーズ。ごまかしの効かないこの構成は消費者に受け入れられ、ロッテリアのブランドイメージを「安売り」から「本格派」へと引き上げることに成功した。

第三章:ゼンショーによる買収と、「ゼッテリア」への転生

順調にブランドを再構築したかに見えたロッテリア。しかし2023年、親会社であるロッテホールディングスはロッテリアの全株式を「すき家」などを運営するゼンショーホールディングスに売却するという決断を下す。

※「ゼンショー」の「ゼ」説は、公式には明文化されていません。
  • なぜ売却されたのか?
    • ロッテ側は「選択と集中」を理由に挙げたが、背景には原材料高騰や人件費の上昇、そしてマクドナルドとの競争激化があったと推測される。
  • なぜゼンショーは買ったのか?
    • 一方買い手であるゼンショーにとって、ロッテリアの買収は自社グループに唯一欠けていた「ハンバーガー」という最後のピースを埋めるための重要な戦略であった。
  • 「ゼッテリア」という名の“二重の意味”
    • 買収後ゼンショーは新ブランド「ゼッテリア」への転換を開始した。
    • この名称は公式には「品バーガー」と「カフェテリア」を組み合わせた造語と説明されている。
    • しかし多くの人々はそこに、親会社である「ンショー」の「ゼ」というもう一つの意味を読み取った。ロッテリアが「ロッテ」の名を冠していたように、「ゼッテリア」はゼンショーグループの一員であることを内外に示す極めて巧みなネーミング戦略だったのである。
ブクブー
ブクブー

「なるほどだブー!『ゼッテリア』の『ゼ』は『絶品』の『ゼ』でもあり、『ゼンショー』の『ゼ』でもあったんだブーか!うまいこと考えるんだブーね!座布団一枚なんだブー!」


終章:ロッテリアが遺したもの、ゼッテリアが描く未来

2026年3月末日をもって「ロッテリア」という名前は日本の街角から姿を消す。
創業から54年間、ロッテリアが果たした役割は計り知れない。

第一に「日本的ファストフードの確立」である。エビバーガーは欧米の模倣ではない日本の食文化が生んだ発明だった。
第二に「品質回帰への挑戦」である。「絶品チーズバーガー」が示した「高くても美味しいものは売れる」という事実は、後のグルメバーガーブームの布石となった。
第三に「エンターテインメント性」である。タワーバーガーやアニメコラボなど、食事を「体験」として提供する姿勢は現代のSNSマーケティングの先駆けであった。

ゼンショーによる「ゼッテリア」への転換は冷徹な経済合理性の帰結である。店舗はより洗練され収益性の高いビジネスモデルへと生まれ変わるだろう。しかしそこにかつてのロッテリアが持っていた、製菓メーカー由来の甘くどこか牧歌的で時に無謀な挑戦をする「人間味」のような個性は希薄になるかもしれない。

2026年春、ひとつの時代が終わり、新しい「Z」の時代が始まる。

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