2026年1月15日夜、大阪府の吉村洋文知事と大阪市の横山英幸市長は、日本の地方自治史上極めて異例の政治的賭けに出た。自らの職を辞し、それに伴う「出直しダブル選挙」に立候補すると正式に表明したのである。
その公約の核心にあるのは、ただ一つの言葉。「大阪都構想」。
過去二度にわたり住民投票で否決され、一度は完全に「死んだ」はずのこの構想を、なぜ彼らは三度蘇らせようとするのか。
本稿は、この異例のダブル選挙の背景にある維新のしたたかな戦略と、そもそも「大阪都構想」とは何であり、なぜ10年以上にわたって大阪の政治を揺るがし続けているのか、その本質を解き明かすレポートである。
第一章:「大阪都構想」とは何か?──“不幸せ”な関係を断ち切るための、大手術
「大阪都構想」とは単なる名称変更ではない。それは日本の地方自治制度の根幹に関わる構造改革の提言である。

- 最大の目的:「二重行政」の永久的な解消
- 大阪府と大阪市は歴史的に「府市合わせ(不幸せ)」と揶揄されるほど、産業政策やインフラ整備において対立と重複を繰り返してきた。
- 都構想の核心は、現在の大阪市を廃止し、その権限と財源の多くを大阪府(都)に一元化することにある。これにより制度として二重行政を不可能にするのが最大の狙いだ。
- もう一つの柱:住民サービスの拡充
- 同時に現在の大阪市は4つの「特別区」に分割され、それぞれに公選の区長と区議会が設置される。
- これにより270万人を超える巨大都市では難しかった、地域ごとのニーズにきめ細かく対応できる体制(ニア・イズ・ベター)が実現すると維新は主張している。
- なぜ「今」なのか?
- 現在は知事と市長が同じ「大阪維新の会」に所属し、個人的な信頼関係で連携している「バーチャル都構想」状態にある。
- しかし吉村知事は会見で「意思決定を統一させていくというのは、未来永劫続けられるとは到底思えない」と述べ、この人間関係に依存した脆弱な体制を制度として確立する必要性を訴えた。2025年の大阪・関西万博後の成長戦略を描く上で、統治機構の改革は不可欠であるというのが彼の論理だ。

「なるほどだブー!大阪府と大阪市がずっとケンカしてきたから、もう大阪市をなくしちゃえ!っていうすごい手術なんだブーね!でもそうしないと未来の大阪が良くならないって、吉村さんは本気で考えてるんだブーか…。」
「大阪都構想」の二つの核心
- 「二重行政」の永久的な解消: 歴史的に対立と重複を繰り返してきた大阪府と大阪市の関係(府市合わせ=不幸せ)を断ち切るため、大阪市を廃止しその権限と財源の多くを大阪府(都)に一元化する。
- 住民サービスの拡充: 同時に現在の大阪市を4つの「特別区」に分割し、それぞれに公選の区長と区議会を設置。地域ごとのニーズにきめ細かく対応できる体制(ニア・イズ・ベター)を実現する。
第二章:二度の敗北の歴史──なぜ大阪市民は「NO」と言ったのか
大阪都構想の歴史は大阪維新の会の歴史そのものであり、二度の住民投票における劇的な敗北の記録でもある。

| 投票年 | 結果 | 賛成票数 (割合) | 反対票数 (割合) | 票差 | 提唱者 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2015年 | 否決 | 694,844票 (49.6%) | 705,585票 (50.4%) | 10,741票 | 橋下徹 |
| 2020年 | 否決 | 675,829票 (49.4%) | 692,996票 (50.6%) | 17,167票 | 松井一郎・吉村洋文 |
- 敗因の分析
- 二度の否決、特に有利と見られた2020年の敗北には複合的な要因が指摘されている。
- 「大阪市」という名称喪失へのアイデンティティ不安: 特に高齢層で根強い抵抗感があった。
- メリットの不可視性: 二重行政解消というマクロな「成長」のメリットに対し、住民サービスの低下というミクロな「不安」が勝った。
- 「府民不在」の制度設計: 住民投票の有権者は「大阪市民」に限定されており、市外の利益のために市内が解体されるという構図が市民の防衛本能を刺激した側面がある。
- 二度の否決、特に有利と見られた2020年の敗北には複合的な要因が指摘されている。
第三章:三度目の挑戦と“党内の壁”
二度の敗北を受け一度は封印されたはずの都構想。しかし吉村・横山両氏は「出直し選挙」という禁じ手を使ってでも、三度目の住民投票への道筋をつけようとしている。

- 「だまし討ち」批判と党内の不協和音
- しかしこの決断は盤石な党内合意の上でなされたものではない。会見に先立つ大阪維新の会の会合では「『だまし討ち』のようなタイミングで民意を得るのは難しい」といった批判が噴出した。
- 十分な党内議論や市民への説明を経ずに突如として「三度目の挑戦」を掲げたことに対する、身内からの強烈な懸念の表れである。
- 野党の“総スカン”と無投票のリスク
- 対立する自民党や公明党は、この選挙自体に「大義がない」として対立候補の擁立を見送る方向だ。
- もし選挙戦が無投票あるいは低調な信任投票に終わった場合、「都構想への挑戦が民意を得た」という維新の主張の正当性が根底から揺らぐことになる。

「うわー…。仲間からも『だまし討ちだ!』って言われてるんだブーか…。しかも相手も選挙に出てこないかもしれないなんて…。なんだか吉村さんたち、ちょっと焦りすぎてる感じがするんだブー…。」
終章:10年越しの“闘争”の、最終章
橋下徹氏がこの構想を掲げてから10年以上。
大阪都構想はもはや単なる政策論争ではなく、大阪維新の会という政治団体の存在意義そのものと分かちがたく結びついている。
二度の住民投票で示された「NO」という民意を、三度目の選挙で覆すことはできるのか。
それともこの“最後の賭け”は、維新の金看板そのものを終わらせる引き金となるのか。
衆議院選挙と同日に行われる見通しのこのダブル選挙。
その結果は大阪の、そして日本の地方自治の未来を大きく左右することになるだろう。



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