「大学入学共通テスト」。2021年から始まったこの新しい試験に対し、多くの大人は「昔のセンター試験がただ名前を変えただけだろう」と漠然と考えているかもしれない。
しかしその認識は完全に間違っている。
センター試験から共通テストへ。
この変化は単なる名称変更ではない。
それは日本の教育が、そして社会全体が若者に求める能力の「ものさし」を「知識をどれだけ覚えているか」から「知識をどう使うか」へと、根本的にシフトさせた歴史的な教育改革の象徴なのである。
第一章:何がどう違うのか?──「問われ方」の根本的な変化
センター試験と共通テストの最大の違い。それは「問題の問われ方」そのものである。

| 項目 | 大学入試センター試験(~2020年) | 大学入学共通テスト(2021年~) |
|---|---|---|
| 性格 | マーク式の“知識確認テスト” | 情報処理型の“読解テスト” |
| 重視する力 | 知識の量・正確さ | 思考力・判断力・読解力 |
| 問題文 | 比較的短い | 非常に長い。資料・グラフ・会話文が多用される |
| 解法 | 1問=1つの知識で解ける問題が多い | 複数の知識を組み合わせて解く必要がある |
- センター試験:「知っているか」を問う試験
- 教科書レベルの内容を「正しく覚えているか」「ミスなく処理できるか」という知識の正確性を問う問題が中心だった。
- 共通テスト:「どう考えるか」を問う試験
- 初めて見るグラフや契約書、あるいは登場人物の会話文といった膨大な資料をその場で読み解き、「持っている知識をどう使って目の前の問題を解決するか」という思考のプロセスが問われる。

ブクブー
「ええーっ!?ただ覚えるだけじゃダメになったんだブーか!知らない資料を読んで自分で考えないと解けないなんて…!僕たちの頃のセンター試験とは全然別物なんだブーね!今の高校生って大変なんだブー!」
第二章:教科ごとの具体的な“変化”
この根本的な方針転換は、各教科の出題形式に具体的に表れている。

- 英語:配点が「1:1」になり、より実践的に
- センター試験: 筆記200点:リスニング50点。文法や発音の単独問題も存在した。
- 共通テスト: リーディング100点:リスニング100点の均等配点へ劇的に変更。文法問題はなくなり、全てが広告やメール、会話文といった実用的な長文読解問題となった。リスニングも一部が「1回読み」になるなど、より実践的な運用能力が重視される。
- 国語・数学:「読む力」がなければ解けない
- 国語では複数の文章や図表を横断的に読み解き、情報を整理する力が求められるようになった。
- 数学でも「太郎さんと花子さんの会話」から数学的な課題を読み取るなど、問題文そのものの読解力がなければ計算式を立てることすらできない形式が増加した。
第三章:なぜセンター試験は終わったのか?
ではなぜこれほどまでに大きな改革が必要だったのか。その理由は大きく三つある。

- 理由①:社会が「知識暗記型」では通用しなくなった
- インターネットやAIの普及により、「知識をただ覚えていること」自体の価値が相対的に低下した。
- これからの社会で求められるのは、検索すれば分かる知識ではなく「膨大な情報から必要なものを選び出し、論理的に考えて答えを出す力」である。
- 理由②:大学側が求める学生像の変化
- 大学が欲しいのは「指示待ち型の優等生」ではなく、「自ら課題を発見し主体的に考えることができる学生」へと変わった。
- 共通テストは、そのような学生を選抜するための大学教育への「入口テスト」として再設計されたのだ。
- 理由③:高校教育改革との連動
- 「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)」を重視する新しい高校の学習指導要領と、従来の暗記偏重のセンター試験とでは、その目指す方向性が完全に食い違ってしまっていた。
- 高校教育と大学入試をシームレスに繋げるという、国家的な教育改革の一環なのである。

ブクブー
「なるほどだブー…。社会が変わって大学が求める学生も変わったから、テストの方も変わらなきゃいけなかったんだブーね!時代の流れなんだブー…。」
終章:「難しくなった」のではなく、「問われる力が変わった」
「共通テストは難しくなった」という声をよく耳にする。
しかしそれは正確ではない。難しくなったのは問われる「知識」のレベルではなく、情報を読み解き処理する「複雑さ」だ。
センター試験が「高校3年間の勉強の総チェック」であったとすれば、
共通テストは「これからの大学4年間で学ぶ準備ができているか」を見るための試験である。
「時間が足りない」「解きにくい」と感じる人が増えたのだとすれば、それはまさしくこの入試改革の「狙い通り」の結果なのかもしれない。



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