「アホウドリのフンでできた国がある」
もしそう聞かされたら、あなたは信じるだろうか。
太平洋の真ん中にぽつりと浮かぶ、世界で3番目に小さな国、ナウル共和国。
自転車で島を一周しても30分ほどしかかからないこの小さな島は、実は数百万年という気の遠くなるような時間をかけて、海鳥たちの落とし物(フン)がサンゴ礁の上に降り積もってできあがった、奇跡のような島だ。
そして1月31日は、そんなナウル共和国にとって特別な日──独立記念日である。
かつては「世界一の富豪」になり、その後「国家破綻」を経験しながらも、たくましく生き続けるこの愛すべき小国の素顔と、現在の姿について解説する。
第一章:空から降ってきた「白い黄金」と、かつての栄光
ナウルが「アホウドリのフンでできている」というのは、比喩ではない。太古の昔、この島は渡り鳥たちの休憩所であり、彼らが残した大量のフンとサンゴ礁の石灰が化学反応を起こし、島全体が高純度な「リン鉱石」の塊へと変化したのだ。

- 地面を掘れば「お金」が出た時代
- リン鉱石は農作物を育てるための最高級肥料として高値で取引された。
- 1980年代、ナウルはこの資源のおかげで、国民一人当たりの所得が世界トップクラス(当時のアメリカや日本以上)という、夢のような繁栄を手にした。
- 伝説となった「夢の生活」
- この時期の生活はまさに伝説的だ。税金はゼロ、医療費・教育費・光熱費もすべてタダ。結婚すれば国から家が支給された。
- 国民は労働を放棄し、公務員として登録するだけで給料を得て、余暇を楽しんだ。これが、今も語り継がれる「ナウルの黄金時代」である。

「うわーっ!税金もタダで家ももらえるなんて、羨ましすぎるんだブー!僕もアホウドリにお礼を言いたいんだブー!まさにドリームだブー!」
地面を掘ればお金が出た「黄金時代」
- 資源バブル: リン鉱石は最高級の肥料として世界中で高値で取引された。
- 夢の生活: 1980年代、資源収入により国民所得は世界トップクラスに。
- 働かない国民: 税金ゼロ、医療費・学費・光熱費タダ。家も支給。 国民は労働を放棄し、遊んで暮らすことができた。
まさに「働いたら負け」を地で行くユートピアが、そこには存在していたのである。
第二章:1月31日が「特別な日」である理由
しかし、ナウルの歴史はただの「成金物語」ではない。今日の独立記念日には、彼らの「民族としての誇り」が刻まれている。

- 「島を捨てろ」という提案
- 独立前夜の1960年代、採掘によって島が荒廃することを懸念したオーストラリア政府は、「島を捨てて、オーストラリアに移住しないか?」と提案した(カーティス島移住計画)。
- 選んだのは「豊かさ」より「自分」
- しかし、ナウル人はこれを拒絶した。「私たちはナウル人だ。他の何者にもなりたくない」。
- 彼らは大国の市民になる経済的安定よりも、貧しくても自分たちのアイデンティティを守る道を選んだ。そうして1968年1月31日、ナウルは世界最小の共和国として独立を果たしたのである。

「おおっ…。楽な生活よりも自分たちの故郷を選んだんだブーね。カッコイイ決断だブー!だからお祝いの日なんだブー!」
第三章:夢のあと、現在のナウルはどうなっている?
ここで重要なのは、「黄金時代はすでに終わっている」という現実だ。1990年代後半にリン鉱石が枯渇すると、ナウルの状況は一変した。

- 「タダ」の時代の終焉
- 資源が尽きると同時に経済は崩壊。かつてのような「働かなくても国が養ってくれる」システムは維持できなくなった。
- 2014年には雇用税などの税金制度も導入され、現在は多くの国民が生活のために働いている。物価も高く、生活は決して楽ではない。
- 生き残るための「なりふり構わぬ」戦略
- 現在のナウルを支えているのは、オーストラリアへの「難民収容協力」や、大国との外交交渉だ。
- 特に2024年には、長年の友好国だった台湾と断交し、中国と国交を樹立したことが大きなニュースとなった。これも、より大きな経済支援を得るための、小国ならではのシビアな生存戦略なのだ。
第四章:なぜか日本で大人気? フォロワー59万人の奇跡
そんな激動の歴史を持つナウルだが、今、日本とは不思議な形で繋がっている。

- 国民より多い「日本人フォロワー」
- X(旧Twitter)の「ナウル共和国政府観光局(公式)(@nauru_japan)」は、人口約1万2000人の国にもかかわらず、約59万人(2026年1月現在)ものフォロワーを持つ。
- 「ナウルは今、何時? → 日本と同じく21世紀です」「観光地? 特にないです」といった、自虐的でユーモアあふれる投稿が大人気だ。
- 愛すべきサバイバー
- 本国の人口の約50倍もの日本人がフォローしているという異常事態。
- これは、数奇な運命に翻弄されながらも、どこか陽気に生き抜くナウルという国のキャラクターが、多くの日本人に愛されている証拠かもしれない。
終章:おめでとう、ナウル共和国
アホウドリのフンから始まり、世界一の富豪になり、一文無しになり、それでも今はSNSで日本中と繋がっている。
ナウル共和国の歴史は、まるでジェットコースターのような冒険活劇だ。
「楽園」の魔法は解けてしまったかもしれないが、自分たちの国を自分たちで守ると決めたあの日の決断は、今も彼らの誇りである。
1月31日。遠い南の島で58回目の独立記念日を祝う彼らに、日本から「おめでとう」の“いいね”を送ってみてはいかがだろうか。



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