いま見れば、完全アウト。
でも、昭和のあの頃は、それが“当たり前”だった。
学校、職場、家庭、街──
いまなら即炎上レベルの“非常識”が、堂々とまかり通っていた時代。
笑いながら、少し怖がりながら、
そして、少しだけ懐かしく。
昭和の“非常識”を、いまだからこそ振り返ろう。
それは、私たちが歩いてきた確かな足跡だから。
- 【第1章】自由すぎた車内、無防備な旅路
- 【第2章】電車内タバコ天国
- 【第3章】授業中、先生のチョーク投げが名物
- 【第4章】学校では「水を飲むな」が常識
- 【第5章】バス停や駅に「痰壺(たんつぼ)」設置
- 【第6章】教室でゲンコツ・ビンタは日常茶飯事
- 【第7章】正月三が日は全休、街はゴーストタウン
- 【第8章】部活=根性、脱水、坊主頭強制
- 【第9章】バイク三人乗り、ノーヘル暴走上等
- 【第10章】飛行機でタバコモクモク
- 【第11章】ゴールデンタイムにプロレス中継
- 【第12章】道路遊びは日常、轢かれても自己責任
- 【第13章】飲酒運転は“ちょっとくらい平気”
- 【第14章】家庭内どつき漫才、愛情表現の一環
- 【第15章】学校の成績順位、廊下に張り出し
- 【第16章】給食で鯨肉
- 【第17章】正座・腕立て・廊下立たされ三点セット
- 【第18章】電話は一家に一台、黒電話でダイヤル回し
- 【第19章】テレビは“神聖”、親父のチャンネル独裁
- 【第20章】お年玉=数百円、子ども経済超ミニマム
- 【第21章】家族風呂=父親優先、最後は子ども
- 【第22章】会社の飲み会は“強制”、無礼講で泥酔
- 【第23章】パワハラ・セクハラ概念ゼロの職場
- 【第24章】女性の職業選択肢、限られすぎ問題
- 【第25章】正社員=安定、転職=脱落者扱い
- 【第26章】自動販売機、子どもでもタバコ・酒が買えた
- 【第27章】電車のトイレ、線路にダイレクト垂れ流し
- 【第28章】子どもの外遊び、暗くなるまで帰らない
- 【第29章】学園祭の“火炎瓶騒ぎ”も普通
- 【第30章】ラジオ体操、夏休み皆勤が当たり前
- 【第31章】テレビから流れる音楽をカセットでエア録音
- 【第32章】学校伝言板に待ち合わせメッセージ
- 【第33章】就職=一生安泰、終身雇用信仰
- 【まとめ】──いま、なぜ昭和を振り返るのか
- 【締めに】──それでも、私たちは生き抜いた
【第1章】自由すぎた車内、無防備な旅路
■昭和の光景
- シートベルト?そんなものは着けない。
- チャイルドシート?存在すらしていない。
- 子どもは後部座席で立ったり、座席にゴロゴロ寝転んだり。
- 家族旅行は“ノールール”の冒険だった。
■なぜ、そんな無防備が許されたのか?
- 法規制未整備:シートベルト着用義務なし、チャイルドシートも普及前。
- 安全意識の未成熟:「事故は運転手の腕次第」という価値観。
- 社会の雰囲気:「子どもはケガをして育つ」「自由が健全」という子育て哲学。
■現代との比較
- シートベルト着用義務化:1985年以降。
- チャイルドシート義務化:2000年以降。
- 交通事故死者数:ピーク時(1970年・1万6765人)→ 2023年(約2600人)へ大幅減少。
無防備な自由。
それは、無知という名の自由でもあった。
あの時代の子どもたちは、今思えば奇跡のように生き延びてきたのかもしれない。
【第2章】電車内タバコ天国
■昭和の光景
- 電車内でタバコを吸うのが“男の嗜み”。
- 駅のホームには痰壺(たんつぼ)が設置。
- 煙が充満する車内が当たり前。
■なぜ、そんなにタバコ天国だったのか?
- タバコ文化:大人の象徴。
- 健康意識ゼロ:タバコの害はほとんど知られていなかった。
- 公共マナー未発達:分煙・禁煙という概念自体がなかった。
■現代との比較
- 全面禁煙化:鉄道、バス、航空機すべて禁煙。
- 健康意識の高まり:喫煙率、昭和60年台約50% → 令和では約16%。
公共交通機関は、タバコの香りとともにあった。
いまでは信じられない光景が、かつては当たり前だった。
【第3章】授業中、先生のチョーク投げが名物
■昭和のリアル
- 教室で生徒が話し込んでいると、黒板の前からチョークがシュバッ!
- 集中力を欠いていると黒板消しが飛んできた。
- 「油断大敵」が合言葉、先生の威厳を象徴する瞬間だった。
■なぜ、そんなことが?
- 教育=厳しさが美徳:多少の体罰は「愛のムチ」とされていた。
- 指導=威圧が効果的と信じられていた時代背景。
- 社会全体が軍隊式:集団行動を最優先、規律こそすべて。
■いまは?
- 体罰全面禁止:2000年代以降、学校教育法の改正で厳格に規制。
- 指導スタイルの転換:褒める・認める教育へ。
- 生徒の人権意識の高まり:パワハラ・モラハラ概念の浸透。
いまや許されない「飛び道具指導」。
だけど、あの瞬間、クラス全員の空気がピリッと締まったのも事実だった。
【第4章】学校では「水を飲むな」が常識
■昭和のリアル
- 体育の授業中も部活中も、給水は「甘え」とされ禁止。
- 真夏のグラウンドで生徒がバタバタ倒れるのも「鍛錬のうち」。
■なぜ、そんなことが?
- スポ根全盛:「耐えてこそ強くなる」が信条。
- 医学的誤解:「運動中の水分補給は体に悪い」という俗説。
- 軍隊教育の残滓:厳しさ=強さという時代のメンタリティ。
■いまは?
- 熱中症対策が最優先:科学的に水分補給の必要性が立証。
- スポーツ医学の進歩:こまめな水分・塩分補給が推奨。
水を飲むな──。
科学なき時代の非科学的な“常識”が、子どもたちの命をリスクに晒していた。
【第5章】バス停や駅に「痰壺(たんつぼ)」設置
■昭和のリアル
- 駅のホーム、バス停、路地裏──痰壺は当たり前に存在。
- 痰を吐くのは生理現象、公共の場で吐いても問題なし。
■なぜ、そんなことが?
- 結核・呼吸器疾患の多発:衛生よりも病気対策として設置。
- 喫煙率の高さ:喫煙習慣が当たり前、痰を吐く人も多かった。
- 公共空間の意識低さ:個より全体、という社会風潮。
■いまは?
- 公共衛生概念の進化:公共空間の清潔さが重要視。
- 禁煙推進:喫煙率の低下に伴い、痰壺も姿を消した。
今では想像もつかない“痰壺のある風景”。
あの頃の日本は、確かにそんな空気だった。
【第6章】教室でゲンコツ・ビンタは日常茶飯事
■昭和のリアル
- 忘れ物をすればビンタ、授業中のおしゃべりにはゲンコツ。
- 生徒も「やられて当然」と受け止め、親も文句を言わない。
■なぜ、そんなことが?
- 教育現場=軍隊式指導:厳しさで生徒を鍛えるのが当然。
- 親世代も体罰文化育ち:指導=叩くもの、という価値観。
- 個の尊重より集団の和:個人感情より規律優先。
■いまは?
- 学校教育法改正:体罰全面禁止、教育指導も多様化。
- 生徒の人権意識の向上:体罰は即・教育委員会案件。
ビンタもゲンコツも“愛情表現”とされた時代。
だが、今は「暴力は暴力」。教育の価値観も時代と共に進化した。
【第7章】正月三が日は全休、街はゴーストタウン
■昭和のリアル
- 正月三が日はどこの店もシャッター街。
- 商店街もスーパーも完全休業。
- 静まり返る町並みに凧あげする子供たちの姿だけ。
■なぜ、そんなことが?
- 正月=家族団欒の時間:労働より家庭優先。
- サービス業=贅沢品:24時間営業文化皆無。
- 労働観の違い:働くのは“生活”のため、“企業活動”優先ではなかった。
■いまは?
- 24時間コンビニ文化の普及:1990年代以降、正月営業が当たり前に。
- ネット通販の台頭:休業期間すら消滅。
- 年中無休社会の到来:便利と引き換えに休みが消えた。
街に静寂が戻る──。
正月が“止まる”時間だったのは、
人々に本当の“休息”があった時代だった。
【第8章】部活=根性、脱水、坊主頭強制
■昭和のリアル
- 夏でも水を飲むな、坊主頭は当然。
- スポーツとは「耐えること」。
- 体育会系の根性論が教育現場を席巻。
■なぜ、そんなことが?
- スポ根漫画文化の浸透:『巨人の星』『アタックNo.1』。
- 精神主義:「肉体を痛めつけて精神を鍛える」思想。
- 集団主義教育:個よりもチーム、規律最優先。
■いまは?
- 科学的トレーニングの普及:データに基づく体作りへ。
- 坊主強制は指導ガイドライン違反:自由な髪型が認められる。
- 熱中症リスク対策の徹底:水分補給と休息を重視。
汗と涙と脱水症状。
スポーツに求められるものが「根性」から「科学」へと進化したのは、
人の命を守る知恵だった。
【第9章】バイク三人乗り、ノーヘル暴走上等
■昭和のリアル
- ノーヘルは当たり前、むしろカッコイイ。
- 三人乗りも珍しくなかった。
- 暴走族文化全盛、爆音が夜の街を支配した。
■なぜ、そんなことが?
- 法規制の緩さ:ヘルメット着用義務化は1986年。
- 若者文化の一部:反体制・反権力の象徴。
- 自己責任意識の希薄さ:「自分の身は自分で守れ」精神。
■いまは?
- ヘルメット着用義務の徹底:罰則強化。
- 暴走族の減少:取り締まりと社会的価値観の変化。
- 交通安全意識の向上:教育課程に安全教育が組み込まれる。
危険も自由のうちだった昭和。
でも、その自由の代償は、
決して小さなものではなかった。
【第10章】飛行機でタバコモクモク
■昭和のリアル
- 機内は喫煙席・禁煙席に分かれていたが、実質モクモク。
- 国内線・国際線問わず、長時間のフライト中も堂々喫煙
■なぜ、そんなことが?
- タバコ文化が大人の常識:マナーより嗜好が優先。
- 健康被害の無理解:受動喫煙リスクが知られていなかった。
- 航空会社の意識の低さ:顧客満足のためのサービスとして認知。
■いまは?
- 全面禁煙化:1990年代末までに世界的に禁煙化の流れ。
- 受動喫煙リスクの周知:公共交通機関はすべて禁煙。
- 健康意識の飛躍的向上:WHOの禁煙推進活動。
機内の煙は大人の証だった。
いま思えば、空の旅は“空気の戦場”だったのかもしれない。
【第11章】ゴールデンタイムにプロレス中継
■昭和のリアル
- 夜8時、家族みんなでプロレス観戦。
- 流血、乱闘、反則技──暴力スレスレの攻防が“家族団欒”。
■なぜ、そんなことが?
- プロレス=エンタメの王様:視聴率30%超え常連。
- 暴力=男らしさの象徴。
- テレビ文化初期の大衆娯楽:家族で共有できるコンテンツが少なかった。
■いまは?
- コンテンツ規制の強化:暴力表現はゴールデン帯NGに。
- 視聴スタイルの多様化:サブスク・配信・PPVへ移行。
- 家族で一緒に見る番組減少:個人視聴時代へ。
流血すらエンタメだった昭和。
いま、あの熱狂は別の形に姿を変えた。
【第12章】道路遊びは日常、轢かれても自己責任
■昭和のリアル
- 道路は子どもたちの遊び場。
- 缶蹴り、ゴム跳び、チャンバラごっこ──車が来たら逃げるだけ。
■なぜ、そんなことが?
- 交通量の少なさ:今より格段に車が少なかった。
- 都市整備の未成熟:遊び場が少なく、空き地・道路が代用。
- 自己責任社会:親も「危ないから気をつけなさい」で済ませた。
■いまは?
- 子どもの屋外活動制限:道路遊びは条例で禁止の自治体も。
- 公園・スポーツ施設の整備:安全な遊び場の確保。
- 交通安全教育の充実:小学校から交通マナー徹底指導。
命がけの“缶蹴り”。
自由の裏側には、常に危険が隣り合わせだった。
【第13章】飲酒運転は“ちょっとくらい平気”
■昭和のリアル
- 飲み会帰りにハンドルを握るのは普通の光景。
- 警察に止められても「ごめんね」で済んだ時代。
■なぜ、そんなことが?
- 飲酒運転の危険認識不足:酔っても「運転できる」と過信。
- 交通法規の緩さ:飲酒運転に対する罰則が甘かった。
- 会社の飲み文化:強制飲み会文化で酔って帰るのが常態化。
■いまは?
- 飲酒運転厳罰化:2002年以降、刑事罰強化・罰金大幅増額。
- 社会的制裁も強化:飲酒運転=社会的抹殺レベルの重罪。
- 代行運転業の普及:安全な帰宅手段が増加。
「飲んだら乗るな」──。
それすら“常識”になったのは、
平成以降の話だった。
【第14章】家庭内どつき漫才、愛情表現の一環
■昭和のリアル
- 親が子どもを叩く、夫が妻を怒鳴る──家庭内暴力が“しつけ”。
- どつき漫才のような“笑い”としての暴力も。
■なぜ、そんなことが?
- 家父長制の残滓:父親は家の絶対権力者。
- 暴力を伴うしつけが一般的:「叩いて分からせる」文化。
- メディアの影響:漫才・コントでも暴力表現が定番。
■いまは?
- 家庭内暴力=犯罪:DV防止法(2001年施行)で厳格に対応。
- しつけに対する社会認識の変化:体罰を含む指導は否定的に。
- メディアコンテンツ規制:暴力表現の自粛傾向。
笑いに見えた“どつき”も、
いまならハラスメント。
時代は、暴力を“愛情”と誤認しない方向へ進んだ。
【第15章】学校の成績順位、廊下に張り出し
■昭和のリアル
- テストが終わると廊下に全員の成績順位が貼り出される。
- 学年トップから最下位まで丸見え。
- 競争心を煽る、ある種の“公開処刑”文化。
■なぜ、そんなことが?
- 個人情報保護の概念なし:成績は全員に知られるもの。
- 競争教育:成績向上には“見える化”が効果的と信じられていた。
- 劣等感も教育の一環:悔しさをバネにせよ、が指導方針。
■いまは?
- 個人情報保護法の浸透:成績の公表はプライバシー侵害。
- 競争より共育:個の尊重が重視される教育方針。
- 内申重視・推薦重視の流れ:点数だけでは測れない評価軸へ。
“名前晒し”が普通だった教室。
だけど、
競争だけでは育たないことを、
時代が教えてくれた。
【第16章】給食で鯨肉
■昭和のリアル
- 給食の主菜は鯨の竜田揚げ、照り焼き。
- 子供たちは好き嫌いなく平らげた。
- 鯨が身近な“庶民の味”。
■なぜ、そんなことが
- 高タンパク・低脂肪食材として重宝。
- 食糧難の時代背景:肉類が高級品、鯨は安価な供給源。
- 国策捕鯨:食料自給を支える国家プロジェクト。
■いまは?
- 国際捕鯨委員会(IWC)商業捕鯨停止:1982年採択。
- 鯨肉離れ:食卓から鯨が消えた。
- 食文化の多様化:牛・豚・鶏、さらには大豆ミートへ。
鯨を食べる日常。
いまや特別な文化財となったあの味は、
昭和の“生きる知恵”だった。
【第17章】正座・腕立て・廊下立たされ三点セット
■昭和のリアル
- 授業中の居眠り、忘れ物で廊下に立たされる。
- 体育でのミスはその場で腕立て100回。
- 教室では正座で反省タイム。
■なぜ、そんなことが?
- 身体罰=教育の一環:体に“痛み”を覚えさせる教育論。
- 精神修養的指導:我慢・忍耐を美徳とする風潮。
- 恥をかかせることで矯正:恥ずかしい思いをすれば改善するという思想。
■いまは?
- 体罰全面禁止:身体罰は人権侵害と認識。
- ポジティブ指導法主流:褒めて伸ばす教育へのシフト。
- 教師のコンプライアンス遵守:指導法にも厳しい目。
痛みと恥で学ばせる昭和教育。
けれど、
いまは心と頭で学ばせる時代に変わった。
【第18章】電話は一家に一台、黒電話でダイヤル回し
■昭和のリアル
- 家族みんなで使う電話はリビングの黒電話。
- 長電話すると怒られる。
- 0を回すときの絶望的な時間。
■なぜ、そんなことが?
- 電話機の高級品扱い:月額基本料も高額、設置も一苦労。
- プライバシー意識の薄さ:家族全体の財産感覚。
- 技術水準の限界:プッシュホン普及以前、ダイヤル式が主流。
■いまは?
- 個人のスマホ保有時代:一人一台どころか、一人複数端末。
- 通信料金の低下:家計負担が大幅に減少。
- 通信技術の革新:5G・光回線で世界と瞬時に繋がる。
0を回してイライラしていたあの頃。
いまや、
「タップ一つで世界」の時代だ。
【第19章】テレビは“神聖”、親父のチャンネル独裁
■昭和のリアル
- リビングのテレビは一家に一台、親父の絶対権限。
- 子供たちは観たい番組があっても、無言で我慢。
- チャンネルを回すのも子どもの役割(リモコンなし)。
■なぜ、そんなことが?
- テレビ=家庭の中心:貴重な情報・娯楽インフラ。
- 家父長制社会の影響:父親の威厳が家庭内に強く残っていた。
- リモコン未普及時代:チャンネルは手動でガチャガチャ。
■いまは?
- 個別視聴時代:スマホ・タブレットで一人一画面。
- VODサービス普及:観たい時に観たいものを自由に。
- 家父長制の崩壊:家族内のパワーバランスの変化。
テレビを巡る家庭内ヒエラルキー。
あの頃は、父親が“一家の王様”だった。
【第20章】お年玉=数百円、子ども経済超ミニマム
■昭和のリアル
- お年玉の相場は500円〜1000円。
- ピカピカの500円札がもらえたら大喜び。
- 「千円札」は子供の世界では破格の高額紙幣。
■なぜ、そんなことが?
- インフレ前夜:物価が安く、500円でも十分な購買力。
- 金銭教育の一環:子供は子供なりの経済圏。
- 消費のミニマリズム:モノが少ないからこそ価値があった。
■いまは?
- 物価上昇&価値観変化:お年玉の相場は数千円〜一万円台。
- 消費社会の拡大:子供もスマホ・ゲーム機を所有。
- キャッシュレス社会:現金より電子マネーの時代へ。
500円札で何でも買えたあの頃。
子どもたちは、小さな経済圏の中で大きな夢を見ていた。
【第21章】家族風呂=父親優先、最後は子ども
■昭和のリアル
- 風呂は家族順番制、父親が最優先。
- 子供たちは冷えた残り湯に入るのが当たり前。
- しかも湯舟のお湯は週一回交換なんてことも。
■なぜ、そんなことが?
- 家父長制社会:父親=一家の大黒柱。
- 水道事情の未発達:水の無駄遣いを避ける文化。
- 銭湯文化の延長線:家風呂が普及したのは高度成長期以降。
■いまは?
- 給湯技術の進歩:家族それぞれが快適な湯船に。
- 個人主義の浸透:風呂の順番に序列なし。
- 水資源の豊富化:日々湯を張り替えるのが標準。
湯の温度も家族の力関係を映していた。
あのぬるま湯の中に、
小さな昭和の縮図が浮かんでいた。
【第22章】会社の飲み会は“強制”、無礼講で泥酔
■昭和のリアル
- 会社の飲み会は強制出席、しかも断れない。
- 無礼講と称して上司に酔って絡むのも許された。
- 翌日出社しても「昨夜のことは水に流せ」。
■なぜ、そんなことが?
- 終身雇用制度下の会社文化:会社は“第二の家族”。
- 年功序列・縦社会:上下関係を酒で柔らかくする文化。
- アルハラ意識皆無:飲みニケーション至上主義。
■いまは?
- パワハラ・セクハラへの社会的認識:無礼講文化の崩壊。
- 職場の多様化:飲み会強制はコンプラ違反扱い。
- 飲み会離れ・ソロ飲みブーム:個人の時間重視へ。
無礼講とは名ばかり、
あれは上下関係の“ガス抜き”だったのかもしれない。
【第23章】パワハラ・セクハラ概念ゼロの職場
■昭和のリアル
- 上司の鉄拳制裁、セクハラ発言、飲み会強制。
- どれも「愛情表現」「指導」の名のもとに正当化。
- 泣き寝入り、我慢が美徳とされた時代。
■なぜ、そんなことが?
- 人権意識の未成熟:個の尊重より組織優先。
- 会社は家族論:上下関係の厳格な社会風土。
- 自己責任論:「嫌なら辞めろ」が通用していた
■いまは?
- パワハラ防止法施行(2020年):職場でのハラスメント対策義務化。
- コンプライアンス意識の浸透:企業側も研修・啓蒙強化。
- ダイバーシティ経営:個人の尊厳と権利が最優先。
笑って許せと言われても、
それは笑えない時代だった。
変わったのは、社会の成熟だ。
【第24章】女性の職業選択肢、限られすぎ問題
■昭和のリアル
- 女性のなりたい職業トップは“スチュワーデス”か“保母さん”。
- 「結婚・出産=退職」が常識。
- 男性優位社会、職場でも“女の子扱い”。
■なぜ、そんなことが?
- 性別役割分業意識:女性は家庭を守るべきという価値観。
- 法整備の未成熟:男女雇用機会均等法施行以前。
- 社会的インフラ不足:保育園・産休制度が未整備。
■いまは?
- 男女雇用機会均等法施行(1986年):女性の社会進出促進。
- 育休・産休制度の充実:働きながら子育てが可能に。
- ジェンダー平等意識の高まり:職業選択に性別の壁が消えつつある。
「女だから」という言葉が、
選択肢を狭めた時代。
いまは、自由に夢を描ける。
【第25章】正社員=安定、転職=脱落者扱い
■昭和のリアル
- 一度入った会社に定年まで勤め上げるのが美徳。
- 転職は“落ちこぼれ”と見なされ、履歴書に傷がつく。
- 終身雇用・年功序列が鉄板常識。
■なぜ、そんなことが?
- 高度経済成長期の労働市場:人材の流動性が低かった。
- 年功序列・終身雇用モデル:安定を重視する社会構造。
- 社会的信用制度:勤続年数が信用力のバロメーター。
■いまは?
- ジョブ型雇用へのシフト:能力重視の人材流動化社会。
- 転職市場の拡大:複数キャリアがむしろ武器に。
- 副業・パラレルキャリア推進:働き方の多様化が進行。
“辞めたら負け”ではなく、
“変わることが成長”の時代へ。
働き方も、時代と共に進化している。
【第26章】自動販売機、子どもでもタバコ・酒が買えた
■昭和のリアル
- 道端の自販機で、未成年でもタバコ・酒が買えた。
- 年齢確認も身分証もなし、自己申告すら必要なし。
- 子供が大人のタバコを買いに行かされる光景も。
■なぜ、そんなことが?
- 販売管理の未整備:自動販売機への規制なし。
- 未成年者保護意識の低さ:大人の権利優先社会。
- 社会的放任主義:自己管理・自己責任の徹底。
■いまは?
- 成人認証システム導入:たばこ自販機にはtaspo必須。
- コンビニでの年齢確認徹底:レジでID提示が常識。
- 未成年者飲酒・喫煙禁止の強化:罰則も厳格化。
誰でも手にできた“大人のアイテム”。
いまでは考えられない、
甘すぎた自己責任時代。
【第27章】電車のトイレ、線路にダイレクト垂れ流し
■昭和のリアル
- 国鉄時代の列車トイレは垂れ流し式。
- 「停車中は使用しないでください」のアナウンス。
- 線路に“痕跡”が残ることも日常茶飯事。
■なぜ、そんなことが?
- 排水処理技術の未熟:浄化システムが未発達。
- コスト重視:安全性より建設コスト優先。
- 公共衛生意識の未成熟:インフラ整備が後回し。
■いまは?
- バキューム式・循環式トイレ普及:浄化・貯蔵型へ。
- 環境対策の進化:排泄物は処理場で浄化。
- 清潔な公共インフラ意識:線路も街も清潔化。
列車の揺れとともに、
“あれ”も流れていた時代。
いまは技術の進化が、私たちの快適を守っている。
【第28章】子どもの外遊び、暗くなるまで帰らない
■昭和のリアル
- 放課後はランドセルを放り投げ、すぐ外へ。
- 「暗くなるまで遊んでこい」が親の指示。
- 連絡手段なし、門限だけがルール。
■なぜ、そんなことが?
- 地域社会の密接:近所の大人が見守る文化。
- 治安意識の違い:犯罪率が低く、安心感があった。
- 通信技術の未発達:連絡手段がないのが当たり前。
■いまは?
- 防犯意識の高まり:子ども一人の外出がリスクに。
- スマホ・GPS普及:位置情報共有で安心を確保。
- 共働き世帯の増加:子どもは学童・習い事へ直行。
子どもの世界に広がる、
“自分たちだけの時間”。
いまは便利さと引き換えに、
その自由が少し窮屈になった。
【第29章】学園祭の“火炎瓶騒ぎ”も普通
■昭和のリアル
- 高校・大学の学園祭では政治運動まがいの火炎瓶騒ぎ。
- バリケード封鎖、警察出動も珍しくなかった。
- 文化祭と政治闘争が地続きだった時代。
■なぜ、そんなことが?
- 学生運動の熱気:政治への関心が高く、行動に直結。
- 反体制ムーブメント:若者の自己表現の手段。
- 警察=権力の象徴:反抗対象として意識。
■いまは?
- 学園祭の健全化:企画・運営も厳格なルール化。
- 政治意識の変化:SNS中心の静かな意見表明へ。
- 社会の安定志向:秩序重視の価値観に移行。
火炎瓶の飛び交う学園祭。
あの熱狂は、
時代の“疾風怒涛”だった。
【第30章】ラジオ体操、夏休み皆勤が当たり前
■昭和のリアル
- 夏休みの朝は、6時30分に町内会集合。
- 出席カードにハンコをもらうため、眠い目をこすって通った。
- 皆勤賞は子どもの誇りだった。
■なぜ、そんなことが?
- 地域コミュニティ重視:子どもの生活リズム管理。
- 健康増進政策:国民体力向上運動の一環。
- 社会の一体感志向:個よりも全体行動が重視された。
■いまは?
- 個別行動の尊重:朝活も自由参加へ。
- 強制参加の撤廃:人権意識の高まり。
- 生活習慣多様化:夜型生活・フレックス対応の時代。
朝のラジオ体操は、
子どもたちにとって最初の“社会訓練”だった。
【第31章】テレビから流れる音楽をカセットでエア録音
■昭和のリアル
- テレビの歌番組をカセットデッキで録音。
- 家族の咳払い・食器の音が入るのは当たり前。
- ノイズも含めて“味”だった。
■なぜ、そんなことが?
- 録音メディアの未成熟:レコード・ラジオ頼み。
- CD・ストリーミング前夜:音楽を録るのは労力勝負。
- 家庭の娯楽インフラ未発達:テレビ=情報と音楽の源泉。
■いまは?
- サブスクリプションサービス普及:ワンクリックで好きな音楽が手元に。
- 高音質ストリーミング:ノイズフリーの音楽環境。
- 個別リスニング文化:ヘッドホン・イヤホン時代。
ノイズごと愛したあの時代。
音楽は、手間とともに手に入れるものだった。
【第32章】学校伝言板に待ち合わせメッセージ
■昭和のリアル
- 友達と遊ぶ約束は伝言板に書き残す。
- 「今日○○公園集合!」が日常。
- 連絡手段は、メモと伝言が頼り。
■なぜ、そんなことが?
- 固定電話普及前夜:各家庭に電話がない時代。
- 連絡網文化:情報共有はアナログで。
- 子どもの自由行動前提:親の細かい管理なし。
■いまは?
- スマホ・SNSの普及:秒で連絡がつく時代。
- 位置情報共有:集合場所もリアルタイム把握。
- 子どもの管理意識高まり:親の見守りアプリ普及。
伝言板に刻まれたメッセージが、
友情と冒険の入り口だった。
【第33章】就職=一生安泰、終身雇用信仰
■昭和のリアル
- 大企業に就職=人生勝ち組。
- 定年まで一つの会社に勤め上げるのが美徳。
- 退職金と年金が約束された“安泰”の象徴。
■なぜ、そんなことが?
- 高度経済成長期の成功モデル:企業と個人が運命共同体。
- 年功序列・終身雇用制度:安定志向の社会価値観。
- 家族も会社も“所属”重視:個より組織の時代。
■いまは?
- 転職・副業が当たり前:キャリアパスの多様化。
- 終身雇用制度の崩壊:企業側も柔軟な雇用形態へ。
- 個人主義・成果主義社会:自らキャリアを切り拓く時代。
会社が人生を保証してくれた時代は、
もはや遠い過去。
生き方は、
自分で選び、切り拓くものへ。
【まとめ】──いま、なぜ昭和を振り返るのか
昭和。
それは高度経済成長、万博、オイルショック、バブル。
激動の時代の中で、人々はただ必死に、前を向いて生きていた。
科学も、社会も、インフラも、法整備も、まだまだ未熟。
そんな中で生まれた“常識”は、いまの目で見れば非常識だらけだ。
けれど。
そこには、現代が忘れかけた、生きる逞しさと、融通無碍な自由があった。
- シートベルトをしなくても、命を繋ごうとする本能。
- 水を飲むなと言われても、耐え抜く忍耐力。
- 親父のチャンネル独占を、無言で耐える家族の和。
いまの「正しさ」に照らせば、
すべてが否定されるべき過去かもしれない。
でも、
その非常識の上に──
私たちは、今のこの豊かで安全な世界を築いたのだ。
昭和を振り返ることは、
ただのノスタルジーではない。
過去の失敗と進歩を知り、未来へのヒントを得る作業だ。
【締めに】──それでも、私たちは生き抜いた
あの非常識の海を泳ぎ抜き、
私たちはいま、ここに立っている。
そして思う。
これから50年後、
私たちが「常識」と信じていることも、
きっと誰かに笑われるだろう。
だからこそ。
いま、この時代を生きる私たちは、
過去を知り、
未来を考え、
そして、いまを大切にしなければならない。

「非常識は、常識への旅路だブー。
常識は、過去の非常識の上に立ってるブー。
そしてまた、いまの常識も、未来の非常識になるブー。」
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