「この雑誌、今のと変わらない完成度だけど…どうやって作ってたの?」
昭和〜平成初期の雑誌を手にとって、ふとそう思ったことはありませんか?
今なら、パソコンでポチポチと配置して、フォントも一瞬で変えられて、写真のサイズ調整も自由自在。でも、DTP(デスクトップ・パブリッシング)が浸透する前の時代には、すべてが“手作業”で行われていたのです──。
そこには、驚くほどアナログで、驚くほど緻密な“職人芸”が息づいていました。
第1章:写真と文字は“貼って”いた──「版下」の世界
かつて、雑誌のレイアウトは「版下(はんした)」という紙の上で行われていました。
この版下とは、印刷の元になる“最終原稿”であり、印刷所に渡すための「完成形」です。
- 写真は現像したものを切り貼り
- 見出しや本文は写植(写真植字)という専門技術で作成
- それらを紙の台紙に丁寧にレイアウトして糊で固定
- グリッドやガイド線は鉛筆やルーラーで手描き
つまり…雑誌のページは、一枚の“手作りのコラージュ”だったのです!
第2章:文字組みは写植職人が担う“聖域”だった
パソコンで打ち込んだら完成──という現代と違い、
当時の“文字”は「写植屋さん」に外注して作っていました。
- 書体や級数(フォントサイズ)を細かく指示書に記載
- 指定された内容に従って、職人が機械で1文字ずつ写真感光紙に打ち出す
- それをカッターで切り抜いて版下に貼る
さらに、「見出し」用のフォントはポジ文字と呼ばれる透明フィルムに印刷された大きな文字を使用。
太字にしたければ別のポジを貼り替えるだけ──という、想像以上のアナログ操作が必要でした。

「あの“メリハリある見出し”も、全部貼り付けだったなんて…気が遠くなるブー!」
第3章:写真の“枠”や“角丸”も手作業
今ではクリック一つで写真に影をつけたり角を丸めたりできますが、昔はこれも手作業。
- 写真を貼る位置にマスキングフィルムをカットして配置
- “角丸”のガイドは専用の定規で下書き
- 黒い囲みや背景ベタ塗りは版下に“墨ベタ指定”を赤で記入
この“赤い指示”が印刷所に伝わると、製版段階で適切に処理されるのです。
こうした作業には、熟練のレイアウト職人たちの目分量と勘、そしてセンスが大きく関わっていました。
第4章:デザイン作業は分業制!編集者・レイアウトマン・写植屋・カメラマンの連携プレー
現在は1人のデザイナーがPhotoshopやInDesignで全作業を行うこともありますが、当時は完全分業体制。
- 編集者:記事企画、執筆、指示書作成
- カメラマン:撮影、現像、トリミング
- 写植屋:文字起こし&印字
- レイアウトマン(版下職人):最終の貼り付けとデザイン構成
- 印刷所:製版・印刷・製本
全員が時間との戦いのなかで神経を研ぎ澄ませて、1冊の雑誌を作っていたのです。
第5章:なぜ、そんなにも“美しい”仕上がりだったのか?
「今よりも丁寧じゃない?」
そう感じる人も多いはず。それは、“一発勝負”の緊張感が違ったからです。
- 修正=やり直しが大変 → 最初から完成度を極める
- 配置=手で貼る → ほんの数mmのズレにまで神経を使う
- 指示=すべて人力 → 「伝わる指示」が職人技
「間違えられない」からこそ生まれた緻密さと洗練された構成力──
それが、今も私たちの目を引きつける“雑誌らしさ”の正体かもしれません。
まとめ:アナログこそ「編集魂」だった時代
現代のようなデジタルツールがなかった時代、それでも雑誌づくりは、いま以上にエネルギーとこだわりに満ちていました。
- 紙とカッターと糊と定規
- 文字も写真もすべて“手作業”
- それでも、美しい構成とレイアウトは完成していた
今の便利なツールに感謝しながらも──
あの時代の編集者たちが、命を削って1ページ1ページに込めた情熱に、もう一度ズームインしてみたくなりますね。

「デジタル化しても、“伝える魂”は変わらないブー!昔の編集さん、すごすぎるブー!」
そうなんです。
昔の雑誌って、ただ“懐かしい”だけじゃなくて──
一枚一枚に“手仕事の美学”と“命がけの集中力”が宿ってるんですよね。
たとえば…
❏ 写真の切り抜き精度に注目してみると、「この曲線どうやって切ったの!?」ってなるし、
❏ 文字の間隔(字詰め)を見てみると、「ここ1mmだけ詰めてある…!」みたいな神業も発見できます。
❏ 小さな枠の整列にも、定規と目視での“ぴったり”が炸裂してたりします。

「ブクブーも思わず拡大鏡持って眺めたくなるブー!」
いま再び、古本屋さんや図書館で
「昭和のPOPEYE」や「オリーブ」を開いてみたくなりますよね。
ただのデザインではない、魂のレイアウト──そんな視点を手に入れた今、雑誌は“読む”だけでなく“観る”メディアにもなることでしょう。
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