もし財布の中から“偽札”を発見したとき、正直に届け出たらどうなるの?──紙切れ?補償?どっち

経済
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買い物を終えお釣りを受け取る。特に確認もせず、それを財布にしまい込む。そして数日後、ふと財布の中の一万円札に違和感を覚える。手触りが違う。透かしが、どこかおかしい。――もし、それが精巧に作られた「偽札」だったとしたら。

多くの人が、この悪夢のようなシナリオを、一度は想像したことがあるのではないだろうか。そして、その次に頭をよぎるのは、極めて現実的な一つの疑問だ。

「この、ただの紙切れになってしまった、一万円。正直に警察に届け出たら、自分はただ、一万円を丸損するだけなのだろうか?」

この、誰もが抱くであろう、素朴な、しかし、切実な問い。その答えは、我々の法治国家としての、意外な“優しさ”の中に、隠されていた。

本稿は、この「偽札発見」という、非日常的な事態に直面した際に、我々が、どう行動すべきか、そして、その行動がどのように報われるのかを、警察庁が定める、ある制度に基づき、解き明かすレポートである。


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第一章:結論──あなたの一万円は、戻ってくる

結論から、先に述べよう。
もし、あなたが善意の第三者として、偶然手にしてしまった偽札を警察に届け出た場合、あなたは、その金銭的な損害を被ることはない。

  • 「協力謝金制度」という、セーフティネット
    • この仕組みの根幹にあるのが、1977年(昭和52年)に、警察庁によって設けられた、「偽造通貨発見届け出者に対する協力謝金制度」である。
    • この制度は、偽造通貨の流通を早期に発見し、捜査に協力した国民に対し国が、その“協力”に報いるためのものである。
  • 具体的な仕組み
    • あなたが、偽札の疑いがある紙幣を、警察署や交番に届け出る。
    • 警察が、それを専門の機関(日本銀行など)で鑑定し、「真正な偽造通貨である」と、判断する。
    • その判断が下されれば、届け出を受け付けた警察は、偽札と引き換えに、届け出者に対し、その券面額と、同額の「協力謝金」を、支払うことになっている。
    • つまり、偽一万円札であれば一万円が、偽五千円札であれば五千円が、あなたに支払われる。これにより、あなたの金銭的な損害は、補填されるのだ。
ブクブー
ブクブー

「ええーっ!?本当なんだブー!?正直に届け出ても、損しないどころか、ちゃんとお金が戻ってくる制度があったんだブー!知らなかった…!これなら、安心して届け出られるんだブー!」


第二章:なぜ、このような制度が存在するのか?──国としての、二つの狙い

なぜ、国はわざわざ税金を使い、偽札の損害を個人に補填してくれるのだろうか。その背景には、二つの極めて重要な狙いがある。

  • 狙い①:偽造通貨の、早期発見と、流通防止
    • もし届け出てもただ損をするだけであれば、多くの人はどうするだろうか。中には、「気づかなかったフリをして、次の支払いで使ってしまおう」と、考えてしまう人が現れるかもしれない。
    • しかし、その行為は、「偽造通貨行使罪」という極めて重い犯罪にあたる。
    • 「協力謝金制度」は、このような善意の被害者が、二次的な加害者へと転落するのを防ぎ、偽札を市中から速やかに回収するための、極めて合理的なインセンティブ(動機付け)なのである。
  • 狙い②:捜査への、重要な手がかり
    • あなたが届け出たその一枚の偽札は、警察にとって、犯人グループを特定するための何物にも代えがたい物的な証拠となる。
    • 偽札が、いつどこで、どのような形であなたの手に渡ったのか。あなたの記憶は、捜査の重要な手がかりとなる。この制度は、そうした国民からの積極的な捜査協力を促すためのものでもあるのだ。
POINT
  1. 偽造通貨の早期発見と流通防止: 善意の被害者が、二次的な加害者になるのを防ぎ、市中から速やかに偽札を回収する。
  2. 捜査への重要な手がかりの確保: 国民からの積極的な情報提供(いつ、どこで入手したか等)を促し、犯人逮捕に繋げる。

第三章:注意すべき点──対象外となるケースと、絶対にしてはいけないこと

ただし、この制度にはいくつかの重要な注意点が存在する。

  • 対象外となるケース:金融機関の「プロとしての責任」
    • この「協力謝金制度」の対象から、明確に除外されているのが、銀行などの金融機関である。
    • その理由は、「おカネを扱うプロフェッショナルである以上、偽札を受け取る段階で発見すべきである」という、厳しい考え方に基づいている。金融機関が、業務中に受け取った偽札を警察に届け出ても、その損害は補填されない。
  • 絶対にしてはいけないこと:自作自演の、偽札届け出
    • 言うまでもないことだが、「この制度を使えば、儲かるのではないか」などと、安易な考えを起こしては絶対にならない。
    • 自分で、カラーコピーなどを用いて、偽札を製造し、それを「拾った」「お釣りで貰った」などと偽って、警察に届け出る行為。
    • これは、「通貨偽造罪」及び「偽造通貨行使罪」、そして、「詐欺罪」といった、極めて重い罪に問われる、悪質な犯罪である。
ブクブー
ブクブー

「なるほどだブー…。銀行はプロだから対象外なんだブーね。そして、悪いことを考えて、自分で作った偽札を届け出るなんてのは、もってのほかなんだブー!当たり前だブー!」


終章:正しい知識が、あなたと、社会を守る

結論として、もしあなたの財布の中に、偽札を見つけてしまっても、決して慌てる必要も絶望する必要もない。

正直に、そして速やかに警察に届け出ること。
それこそが、あなた自身の金銭的な損害を防ぎ、そして社会を偽造通貨という静かなる脅威から守るための、最も正しくそして賢明な行動なのである。

この「協力謝金制度」という、あまり知られていない、しかし極めて重要なセーフティネットの存在。
その正しい知識を頭の片隅に置いておくこと。
それこそが、万が一の悪夢のシナリオに冷静に対処するための、我々にとって最大の“お守り”となるのかもしれない。

実用教養経済雑学
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