2025年12月15日正午過ぎ、東京・赤坂の個室サウナで火災が発生。中にいた30代の夫婦が閉じ込められ死亡するという、あまりにも痛ましい事故が起こった。
しかしこのニュースが報じられた時、一部のテレビウォッチャーの間で静かな、そして不気味な戦慄が走ったことをご存知だろうか。
なぜなら、このあまりにも残酷な事故と奇妙なほど酷似したシチュエーションが、そのわずか7ヶ月前に、あるクイズ番組で「恐怖問題」として出題されていたからだ。
本稿は、この現実とフィクションの恐ろしいシンクロニシティを入り口に、赤坂で起きた火災の全貌と、そして近年急速に普及する「個室サウナ」という新しい業態に潜む構造的なリスクを解き明かすレポートである。
第一章:7ヶ月前の“予言”──テレビ番組『世界で一番怖い答え』
問題の番組は2025年5月12日にフジテレビ系列で放送された、くりぃむしちゅー・有田哲平がMCを務めるクイズ番組『世界で一番怖い答え』である。

- 出題された「恐怖問題」
- 番組では「サウナ」と題された以下のようなVTR問題が出題された。
- ある大柄な男性がサウナ室に入ると、そこには屈強な先客が一人。男性は15分間我慢し、ようやくサウナ室を出たその直後、扉の前で意識を失ってしまう。
- 約1時間後、店員に発見され救助されるが、その映像に隠されたゾッとする事とは何か?
- その恐ろしい「答え」
- 答えは「サウナの中にいた先客が閉じ込められている」というものだった。
- 大柄な男性が扉の前で倒れたことで、サウナ室のドアが外側からブロックされてしまった。内側からは開けることができないため、先客の男性は高温のサウナ室に1時間近く閉じ込められてしまっていたという恐ろしい結末であった。
第二章:そして現実に起きた悲劇──赤坂サウナ店火災の全貌
フィクションの中の恐怖が現実のものとなったのは、2025年12月15日だった。

- 事件の概要
- 15日正午過ぎ、東京・港区赤坂のビルに入る「プライベートサウナ」の3階の個室で火災が発生。
- 室内の入り口付近で倒れていた川崎市在住の松田政也さん(36)と、妻の陽子さん(37)が病院に搬送されたが、死亡が確認された。
- 絶望的な状況
- 警視庁と東京消防庁の現場検証により、事故当時の絶望的な状況が明らかになってきている。
- サウナ室にはもともと鍵はなかった。
- しかし消防が駆けつけた際ドアは閉まっており、ドアノブが内側も外側も外れて現場に落ちていた。
- 室内にはフロントに異常を知らせるための非常ボタンが設置されていたが、その保護カバーが壊れていた。
- 警視庁と東京消防庁の現場検証により、事故当時の絶望的な状況が明らかになってきている。
- 閉じ込められた可能性
- これらの状況から警視庁は、夫婦がサウナ室に入った後、何らかの原因でドアノブが外れて室内に閉じ込められてしまった可能性が高いと見ている。
- そして助けを求めるために必死で非常ボタンを押そうとしたのではないかとみて、捜査を進めている。

「うわー…。クイズ番組とそっくりなことが、本当に起きちゃったんだブーか…。ドアノブが壊れて閉じ込められて、非常ボタンも壊れてたなんて…。あまりにも絶望的すぎるんだブー…。怖すぎるんだブー…。」
赤坂サウナ火災、絶望的な状況
- 脱出不能: 消防が駆けつけた際、ドアは閉まっており、ドアノブが内側も外側も外れて現場に落ちていた。
- SOS届かず: 室内にはフロントに異常を知らせるための非常ボタンが設置されていたが、その保護カバーが壊れていた。
第三章:個室サウナに潜む“構造的リスク”
今回の痛ましい事故は、近年都市部を中心に急速に数を増やしている「個室サウナ(プライベートサウナ)」という新しい業態が抱える、構造的なリスクを我々に突きつけている。

- 密室性の裏返し
- 個室サウナの最大の魅力は、他人の目を気にすることなく自分だけの空間でリラックスできるという、その「プライベート性」にある。
- しかしその完全な「密室」は裏を返せば、体調の急変や設備の不具合といった緊急事態が発生した際に、外部からその異常を察知することが極めて困難であるという致命的な脆弱性を抱えている。
- 安全管理の新たな課題
- 従来の公衆サウナであれば他の利用客や、頻繁に巡回するスタッフが異常を発見することができた。
- しかし個室サウナにおいては非常ボタンや監視カメラ(プライバシーへの配慮が必要)、そして何よりも故障しにくいドアの構造といったフェイルセーフ(万が一の際に安全側に機能する設計)の思想に基づいた安全管理体制の徹底が、これまで以上に厳しく求められることになるだろう。
終章:フィクションからの警告
『世界で一番怖い答え』が描いたのは、あくまでフィクションの恐怖だった。
しかしその根底にあった「サウナ室に閉じ込められる」というシチュエーションは、専門家がかねてより警鐘を鳴らしてきた現実的なリスクの一つであったのかもしれない。
今回の悲劇的な事故は、我々がエンターテインメントとして消費していた恐怖の物語が、時として現実のすぐ隣に潜んでいるという動かしがたい事実を突きつけている。
そして同時に新しいサービスが生まれる時、その利便性や魅力の裏側で我々が見過ごしている新たな「リスク」はないか。
フィクションの世界が放った警告のメッセージを、我々の現実社会が真摯に受け止めるべき時が来ている。



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