一年で最も昼が短く夜が長い日、「冬至」。この日を境に本格的な厳しい冬が訪れる。そんな日本の冬至の食卓に欠かせない一つの料理がある。ほっくりと甘い「カボチャの煮物」だ。
しかしなぜ数ある野菜の中で、よりによって夏野菜であるはずのカボチャがこの特別な日に食べられるようになったのだろうか。
それは単なる縁起担ぎや迷信ではない。そこには冬の厳しい寒さと栄養不足を乗り切るための、科学的根拠に基づいた先人たちの極めてしたたかな生存戦略が隠されていた。
第一章:栄養学的な必然── “緑黄色野菜の王様”が冬の体を守る
冬至にカボチャを食べる最も大きな理由は、その圧倒的な栄養価にある。

- 風邪を撃退する“ビタミンの宝庫”
- 冬は寒さと乾燥で免疫力が低下し、風邪やインフルエンザにかかりやすい季節である。
- カボチャには皮膚や粘膜を丈夫に保ちウイルスの侵入を防ぐ働きのあるビタミンA(β-カロテン)が極めて豊富に含まれている。さらに免疫力を高めるビタミンCや血行を促進するビタミンEもたっぷりと含んでおり、まさに「食べる風邪薬」とも言える野菜なのだ。
- 冬に不足しがちな緑黄色野菜の代替品
- 冬は新鮮な緑黄色野菜が不足しがちな季節である。その中で夏に収穫され冬まで栄養価を保ったまま保存できるカボチャは、ビタミン類を補給するための何物にも代えがたい貴重な栄養源だったのだ。

「なるほどだブー!冬に風邪をひかないように、夏からちゃんと栄養をとっておいてくれたんだブーね!カボチャは僕たちの体を守ってくれるスーパーヒーローだったんだブー!」
冬の体調不良を撃退する、カボチャの“三種の神器”
- ビタミンA(β-カロテン): 皮膚や粘膜を丈夫に保ちウイルスの侵入を防ぐ。
- ビタミンC: 免疫力を高める。
- ビタミンE: 血行を促進する。
第二章:保存技術の奇跡──なぜ“夏野菜”が冬に食べられるのか
しかしそもそもなぜ夏に収穫されるはずのカボチャを、冬至の時期まで美味しく食べることができたのだろうか。

- 厚い皮という天然の“鎧”
- カボチャは非常に硬く厚い皮に覆われている。この天然の鎧が水分の蒸発を防ぎ、外部からの菌の侵入を阻むことで、他の多くの野菜とは比較にならないほどの長期保存を可能にしている。
- 追熟(ついじゅく)による甘みの増加
- さらにカボチャは収穫後時間を置くことで、実に含まれるデンプンが糖に変わり甘みが増す「追熟」という性質を持つ。
- つまり夏に収穫されたカボチャは冬至の頃には、最も栄養価が高くそして最も甘く美味しい食べ頃を迎えるのである。
- 冬至が保存の“限界点”
- ただしその卓越した保存能力を持つカボチャでさえも、常温での長期保存は冬至の頃が一つの限界であった。それを越えると味が落ち始めやがて傷んでしまう。
- 「傷み始める前に栄養価の最も高いカボチャを食べて、これから来る本格的な冬に備えよう」。それもまた冬至の日にカボチャが食べられるようになった、極めて合理的な理由の一つであった。
カボチャが持つ二つの特殊能力
- 長期保存能力: 非常に硬く厚い皮が水分の蒸発と菌の侵入を防ぎ、長期保存を可能にする。
- 追熟(ついじゅく)能力: 収穫後時間を置くことでデンプンが糖に変わり甘みが増す。
第三章:もう一つの理由── “ん”のつく食べ物という縁起担ぎ
科学的な理由に加え、日本人らしい言葉遊びと縁起担ぎの文化もこの習慣を後押しした。

- 「運盛り(うんもり)」という風習
- 冬至には「ん」のつく食べ物を食べると「運」が呼び込めるという「運盛り」と呼ばれる風習がある。
- にんじん、れんこん、ぎんなん、きんかん、かんてん、うどん……。これらの「ん」が二つ付く食べ物は、特に縁起が良いとされた。
- カボチャは別名「南瓜(なんきん)」
- そしてカボチャは漢字で書くと「南瓜」。その読みは「なんきん」である。
- この「ん」が二つ付く縁起の良い名前もまた、冬至の日にカボチャが食卓にのぼる大きな理由となったのだ。

「そっか!カボチャは『なんきん』だから『ん』が2回もつくんだブーね!栄養も満点で運もつくなんて、最強の食べ物なんだブー!昔の人の言葉遊びって面白いんだブー!」
終章:先人の知恵というバトン
結論として我々が冬至の日にカボチャを食べるというこのささやかな習わし。
それは単なる迷信や風習ではなかった。
それは冬という過酷な季節を健康に乗り切るための栄養学的な必然と、夏野菜を冬まで美味しく保存するための卓越した保存技術、そして「運」を呼び込もうとするささやかな祈りが見事に融合した、先人たちの知恵の結晶だったのである。
一口の甘いカボチャの煮物。
その温かい湯気の向こうに我々は、厳しい自然と向き合いそしてその中でささやかな豊かさを見つけ出してきた、名もなき祖先たちのしたたかでそして優しい眼差しを見ることができるのかもしれない。



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