なぜクリスマスに「靴下」を吊るすの?──貧しい三姉妹を救った聖ニコラウスの“金貨”の伝説

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クリスマスイブの夜、子供たちは暖炉やベッドの脇に大きな靴下を吊るす。サンタクロースがその中に素敵なプレゼントを入れてくれることを信じて。
これは世界中で親しまれているクリスマスを象徴する光景である。

しかしなぜプレゼントを入れるのは袋や箱ではなく、「靴下」でなければならないのだろうか。

その答えは、およそ1700年も昔、現在のトルコにあたる東ローマ帝国で起きた一つの心温まる奇跡の物語に隠されていた。


第一章:全ての始まり──貧しい三姉妹と窓から投げ込まれた“金貨”

クリスマスに靴下を吊るすという習慣の最も有力なルーツは、4世紀の東ローマ帝国、小アジアの司教であった聖ニコラウスの善行の伝説にある。

  • 貧しさゆえに結婚できない三姉妹
    • 当時ある貧しい貴族の家に三人の娘がいた。しかし家はあまりにも貧しく、娘たちが結婚するために必要な「持参金」を用意することができなかった。このままでは娘たちは身売りをしなければならないかもしれないという、絶望的な状況にあった。
  • 聖ニコラウスの密かな善行
    • その話を耳にした心優しい司教ニコラウスは、この家族を匿名で助けたいと考えた。
    • 彼は真夜中にその家を訪れると、煙突あるいは開いていた窓から、持参金の足しになるようにと金貨の入った小さな袋を家の中に投げ入れたのだ。
  • 奇跡の“ゴールイン”
    • そしてその投げ込まれた金貨の袋は、偶然にも暖炉のそばに洗濯物として干してあった娘の「靴下」の中に、見事ストンと入ったという。
    • このニコラウスのおかげで長女は無事に結婚することができた。彼はその後も次女、三女のために同じように金貨を投げ入れ、三姉妹は皆幸せな結婚をすることができたと伝えられている。

この心温まる伝説こそが、「クリスマスの夜、聖なる人物が煙突からやって来て、靴下の中にプレゼントを入れてくれる」という全ての物語の原型となったのである。

ブクブー
ブクブー

「ええーっ!?そうだったんだブー!?貧しい姉妹を助けるために投げ入れた金貨が、たまたま靴下に入ったのが始まりだったんだブーか!ただの偶然からこんなに素敵な習慣が生まれたなんて…!まさに奇跡なんだブー!」


第二章:聖人がサンタクロースになるまで

その後、聖ニコラウスは貧しい人々を救う数々の善行を積み重ね、後に子供や学問の守護聖人としてヨーロッパ全土で崇められるようになる。

  • オランダの「シンタクラース祭」
    • 特にオランダでは聖ニコラウスは「シンタクラース」というオランダ語の発音で親しまれ、彼の命日である12月6日には子供たちにプレゼントを配る聖人として盛大に祝われるようになった。
  • アメリカへ渡った伝説
    • 17世紀以降、このオランダの「シンタクラース」の伝統はアメリカへと移住したオランダ移民によって新大陸へと持ち込まれた。
    • そして「シンタクラース」という名前が英語圏で訛(なま)り、やがて我々が知る「サンタクロース」という呼び名へと変化していったのだ。
POINT

「聖ニコラウス」が「サンタクロース」になるまで

  1. 聖ニコラウス(Saint Nicholas): 4世紀、東ローマ帝国の心優しい司教。
  2. シンタクラース(Sinterklaas): オランダ語での聖ニコラウスの呼び名。子供たちにプレゼントを配る聖人として親しまれる。
  3. サンタクロース(Santa Claus): オランダ移民と共にアメリカへ渡った「シンタクラース」の名前が、英語圏で訛り現在の呼び名へと変化した。

第三章:一編の詩が完成させた“現代のクリスマス”

そしてこのヨーロッパの古い伝説を、我々が知る現代のクリスマスの光景として世界中に決定的に広めたのが、19世紀に書かれた一編の詩であった。

  • 1823年、クレメント・ムーアの『聖ニコラウスの訪問』
    • 1823年、ニューヨークの神学者クレメント・クラーク・ムーアが『聖ニコラウスの訪問』(通称:クリスマスのまえのばん)という物語詩を発表する。
    • この詩の中には、
      • 8頭のトナカイが引くソリに乗り、
      • 煙突から家の中へと忍び込み、
      • 暖炉のそばに吊るされた子供たちの「靴下」にプレゼントを詰めていく、
    • という陽気で優しいヒゲのおじさんの姿が生き生きと描かれていた。
    • この物語が爆発的に普及したことで、「聖ニコラウス=サンタクロース」のイメージと「クリスマスには靴下を吊るす」という習慣が、現代に繋がる不動の文化として完成したのである。
ブクブー
ブクブー

「なるほどだブー!あの有名な詩が僕たちの知ってるサンタさんのイメージを完成させたんだブーね!トナカイとか煙突とか、全部この詩が始まりだったんだブーか!」


終章:靴下に込められた、一粒の“善意”

結論として我々がクリスマスの夜に靴下を吊るすというこのささやかな習慣。
それは約1700年前、一人の心優しい聖職者が名も知らぬ貧しい少女たちの未来を救うために密かに行った、一つの善意の行動にその起源を持っていた。

一粒の金貨が、一つの家族を救ったように。
一つの小さなプレゼントが、一人の子供の心を照らす。

クリスマスの靴下とは単なるプレゼントの入れ物ではない。
それは見返りを求めないささやかな、しかし確かな「善意」こそが世界を少しだけ温かくするのだという、聖ニコラウスが我々に遺してくれた最も大切なメッセージを受け止めるための器なのかもしれない。

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