【意外】実は“マッチ”より“ライター”の方が先に発明された──常識を覆す、着火の技術史

科学
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「マッチ」と「ライター」、どちらが先に発明されたか?
この問いに我々のほとんどは、迷わず「マッチ」と答えるだろう。木の軸を箱の側面で擦るあの原始的でシンプルな姿。それに対しオイルやガスを燃料とし、金属のボディを持つ機械的なライター。

イメージの上では明らかにマッチの方が「古く」、ライターの方が「新しい」。

しかしその常識は全くの逆である。
歴史の真実はライター(の原型)がマッチよりも先にこの世に生まれていたことを示している。

なぜこのようなイメージの逆転が起きたのか。

本稿は、この着火の技術史に隠された意外な真実を紐解き、なぜ「擦って火をつける」という一見単純な技術が、実は極めて困難なものであったのか、その理由に迫るレポートである。


第一章:「近代」ライターの、意外に“古い”誕生

我々が知る携帯用のライターとは似ても似つかぬ姿であったが、その「原型」は19世紀初頭に既に誕生していた。

  • 1823年:デーベライナーのランプ
    • 歴史上最初のライターとされる装置は1823年に、ドイツの化学者ヨハン・ヴォルフガング・デーベライナーによって発明された。
    • 「デーベライナーのランプ」と呼ばれたこの装置は、ガラスの容器の中で化学反応によって水素ガスを発生させ、そのガスを白金(プラチナ)の触媒に吹き付けることで発火させるという仕組みだった。
    • それはポケットに入るような携帯品ではなく、研究室に置かれるような大型の卓上装置であった。しかし火種のない場所で化学の力を用いて意図的に火を生み出すという、ライターの基本概念はこの時に確立されたのである。

第二章:「原始的」マッチの、思いのほか“新しい”誕生

一方で我々がイメージする「擦るだけで火がつく」マッチが発明されたのは、その3年後のことだった。

  • 1826年:ジョン・ウォーカーの偶然の発明
    • 世界初の摩擦マッチは1826年(一説には1827年)、イギリスの薬剤師ジョン・ウォーカーによって偶然発明された。
    • 彼は薬を調合する際、軸木の先に付着した塩素酸カリウム硫化アンチモンの混合物を床で擦って落とそうとしたところ、突然発火した。これが摩擦マッチの起源である。
  • なぜマッチの方が遅かったのか?
    • この歴史の逆転現象の最大の理由は「制御された摩擦による発火」という技術が、当時の化学では極めて高度な挑戦であったからだ。
    • ただ燃えるだけではダメなのだ。
      1. 安全に保管できること。(自然発火しない)
      2. 擦るという意図的な動作によってのみ、確実に発火すること。
      3. そして人体に有害なガスを極力出さないこと。
    • これらの条件を満たす適切な化学物質の組み合わせを見つけ出すことは、「化学反応で火をおこす」というより直接的なアプローチよりも、遥かに困難な道のりだったのである。
ブクブー
ブクブー

「ええーっ!?そうだったんだブー!?ただ擦って火をつけるだけの方が、よっぽど難しかったなんて…!『安全に』っていうのが、一番のハードルだったんだブーね!言われてみれば、確かにポケットの中で勝手に燃えちゃったら大変だブー!」


第三章:我々の“常識”を作ったもの──「安全マッチ」と「携帯ライター」の登場

ではなぜ我々のイメージは「マッチ=古い」「ライター=新しい」と逆転してしまったのだろうか。
その理由は我々が日常的に使っている「マッチ」と「ライター」が、これらの初期の発明品とは全く別物だからである。

  • 「安全マッチ」の登場
    • ジョン・ウォーカーが発明した初期の摩擦マッチは、発火が不安定で有毒なガスも発生する危険なものだった。
    • 我々が現在使っている箱の側面(側薬)でしか火がつかない「安全マッチ」が発明されたのは19世紀半ばのスウェーデンでのことだ。これによりマッチは初めて安価で安全な日用品として、世界中に普及した。
  • 「携帯ライター」の登場
    • 一方でデーベライナーの巨大な卓上ランプが、我々の知る小型の「携帯ライター」へと進化するのは20世紀に入ってからである。
    • 発火石(フリント)を使った現代的なライターの原型が登場するのは1903年。そしてそれがZippoライターのようにオイルを燃料とする完成された製品として普及するのは、さらに後の時代だ。

つまり我々の脳内では「19世紀半ばに完成した安全マッチ」「20世紀以降に完成した携帯ライター」が比較されている。だからこそ「マッチの方が古い」と感じてしまうのだ。

しかしその“コンセプト”の誕生という一点においては、ライターの方が確かに「先輩」だったのである。

ブクブー
ブクブー

「なるほどだブー!僕たちが知ってるマッチとライターはどっちも進化した後の姿だったんだブーね!最初のご先祖様はライターの方がお兄さんだったなんて…。歴史って面白いんだブー!」

POINT

我々の“常識”を作った二つの「完成形」

  • 「安全マッチ」の完成(19世紀半ば): 箱の側面でしか火がつかない、安価で安全な日用品として世界中に普及した。
  • 「携帯ライター」の完成(20世紀以降): 発火石を使った小型のZippoライターなどが登場し、普及した。

終章:技術の“見え方”

結論としてマッチよりもライターの方が先に発明されたという歴史の逆転劇。

それは「化学反応を利用した着火」というアイデアそのものよりも「安全で制御可能な摩擦による発火」という技術を確立することの方が、遥かに困難であったという科学史の真実を示している。

一見原始的に見えるものほど、そのシンプルさの裏には洗練された技術が隠されている。
そして一見近代的に見えるものほど、その起源は意外なほど古くそして不格好な姿をしていたのかもしれない。

一本のマッチと一つのライター。
その誕生の順番は我々が物事の「進化」を、いかに表面的なイメージだけで判断してしまっているかということを、静かに教えてくれるのである。

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