よく考えたら「マリオブラザーズ」って名前おかしい?──なぜ任天堂は命名ミスを犯したのか

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マリオブラザーズ(Mario Bros.)。
それは世界で最も有名なヒゲの配管工兄弟の名である。1983年にゲーム&ウォッチで産声を上げて以来、この名前はビデオゲームの歴史そのものと同義であった。

しかし我々は、そのあまりにも有名な名前の響きに長年騙され続けてきたのかもしれない。
「マリオブラザーズ」というこの一見何の変哲もない名前。それを我々の日常の言語感覚に立ち返ってよくよく考えてみると、そこには一つの巨大な「違和感」が横たわっていることに気づかされる。

本稿は、この世界的なヒーローの名前に隠された驚くべき「命名ミス」の謎と、そのミスが生んだ数十年越しの壮大な「矛盾」の物語に迫るレポートである。


第一章:「太郎ブラザーズ」という致命的な違和感

問題の核心は極めてシンプルだ。
「マリオブラザーズ」とは兄のマリオと、その双子の弟であるルイージの二人を指す兄弟の名称である。

しかしここで兄弟や姉妹の一般的な呼び方を思い出してみてほしい。
「工藤兄弟」「吉田兄弟」「阿佐ヶ谷姉妹」。
あるいは英語圏であれば「ブルックス・ブラザーズ」や「ワーナー・ブラザース」。
その全てが“ファミリーネーム(苗字)+兄弟”という構成になっている。

これを「マリオブラザーズ」に当てはめてみよう。
「マリオ」は兄のファーストネーム(下の名前)である。
つまり「マリオブラザーズ」を日本語に無理やり翻訳すれば、それは「太郎ブラザーズ」あるいは「和彦兄弟」と言っているのと同じことになるのだ。
弟のルイージはどこへ行ったのか。彼の存在は完全に無視されている。

この致命的な違和感。
それは開発当時おそらく「外国人の名前は“下の名前+兄弟”と呼ぶものだ」という単純な誤解から生じた、世紀の命名ミスであった可能性が極めて高い。

ブクブー
ブクブー

「ええーっ!?そうだったんだブー!?言われてみれば確かにおかしいんだブー!『マリオ』はお兄ちゃんの名前だもんね!なんで今まで誰も気づかなかったんだブーか!衝撃の事実だブー!」


第二章:任天堂が公式に認めた“矛盾” ― マリオの本当の名前は

ではこの厄介な問題を解決するために任天堂はどうしたのか。
もし彼らの「苗字」が「マリオ」であったならば全ては丸く収まる。「マリオ(苗字)・ブラザーズ」となり、兄は「マリオ・マリオ」、弟は「ルイージ・マリオ」となるからだ。

  • 映画版での苦肉の策「マリオ・マリオ」
    • 実際に1993年に公開されたハリウッドの実写映画版『スーパーマリオ 魔界帝国の女神』では、この問題に対する一つの「答え」が提示された。
    • 劇中で彼らは自らを「マリオ・マリオ」「ルイージ・マリオ」と名乗っているのだ。
  • 生みの親、宮本茂の公式見解
    • しかし「マリオの生みの親」として知られる任天堂の宮本茂氏は、この「マリオ・マリオ」説を公式には認めていない。
    • 任天堂の広報室は過去の取材に対し「映画ではマリオ・マリオという名前だったようですが、宮本にも確認したところ、やはり『マリオ』が正式名称でマリオ・マリオではありません」と回答している。
  • 結論:有名になりすぎて直せなくなった
    • つまり任天堂の公式な立場は「彼らに苗字は存在しない。兄の名前はただ『マリオ』である」というものだ。
    • 結果として「マリオブラザーズ」という名称の論理的な矛盾は、解決されないまま残されることになった。
    • 製作者の初期の命名ミスがそのまま、ゲームがあまりにも有名になりすぎたために、今さら誰も修正できなくなってしまった。これこそがこの問題の真相なのである。
ブクブー
ブクブー

「うわー…。結局『苗字はない』っていうのが公式の答えなんだブーか…。じゃあやっぱり『マリオブラザーズ』って名前はおかしいままなんだブーね…。もうここまで有名になっちゃったらどうしようもないんだブーか…。」

POINT

「マリオの苗字は何か」を巡る任天堂の苦悩の歴史

  • 1993年(映画版): 苦肉の策として「マリオ・マリオ」「ルイージ・マリオ」という苗字=マリオ説が採用される。
  • しかし…: 「マリオの生みの親」である宮本茂氏は、この説を公式には認めず
  • 現在の公式見解: 任天堂の公式な立場は「彼らに苗字は存在しない。兄の名前はただ『マリオ』である」というもの。

終章:ミスから生まれた、世界一の固有名詞

結論として「マリオブラザーズ」という我々が愛してきたその名前は、言語学的には確かに「おかしい」
それはおそらく一つのささやかな国際感覚のズレから生まれた命名ミスであった。

しかしその小さなミスから生まれた名前が、40年以上の時を経て地球上で最も多くの人々に知られそして愛される固有名詞の一つとなったというこの壮大な事実。

それは物事の正しさは必ずしもその起源の正しさによるものではないということを、我々に教えてくれる。
時に一つの「間違い」は歴史の中で磨かれ愛されることで、どんな「正解」よりも遥かに強くそして豊かな物語を持つことがあるのだ。

「マリオブラザーズ」というその少しだけ奇妙な響き。
それこそが我々のゲームの記憶と、そして弟ルイージの少しだけ不憫な運命を象徴する、愛すべき名前なのかもしれない。

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