2026年3月26日夜、東京・池袋の商業施設「サンシャインシティ」内にある人気キャラクターショップ「ポケモンセンターメガトウキョー」で、凄惨な事件が発生した。
アルバイト店員であった春川萌衣さん(21・東京都八王子市)が、元交際相手の広川大起容疑者(26・住所職業不詳)に首や腕などを刃物で刺され死亡。広川容疑者もその場で自身の首を切り、死亡した。
大勢の客やスタッフの目の前で引き起こされたこの惨劇は、単なる通り魔事件ではない。警察の介入やストーカー規制法に基づく「禁止命令」が出されていたにもかかわらず防げなかった、深刻なストーカー殺人事件であった。
本稿は、春川さんが夢見た職場と、広川容疑者の歪んだ執着、そして警察の対応の限界について、報じられている事実に基づき検証するレポートである。
第一章:出会いと破局──「夢」を否定された決別
二人の関係は、アルバイト先での出会いから始まり、そして春川さんの「夢」を巡るすれ違いによって破綻を迎えた。

- 交際と転職
- 警視庁の調べによると、二人は2023年12月頃、八王子市内のファストフード店でアルバイトとして知り合い、2024年10月頃から交際を開始した。
- 春川さんにとって、「ポケモンセンターで働くこと」は長年の夢であった。2025年7月、彼女はその夢を叶えるためファストフード店を退職し、念願の転職を果たした。
- 破局の決定打
- 捜査関係者への取材によれば、春川さんはこの転職の際、広川容疑者から「ポケモンセンターのバイトはお前には合わない、辞めろ」と告げられたという。
- 自身の夢を否定し、支配しようとするこの言動が決定打となり、春川さんは広川容疑者との別れを決意。2025年7月頃に関係を解消した。しかし、ここから広川容疑者の一方的な執着とストーカー行為が始まることとなる。

「大好きな場所で働く夢を叶えたのに、それを応援するどころか『辞めろ』って否定するなんてひどいブー!別れて正解だったはずなのに…。」
第二章:エスカレートするストーカー行為と警察の介入
関係解消後、広川容疑者の行動は次第に常軌を逸していく。春川さんは身の危険を感じ、ついに警察へ助けを求めた。

- 2025年12月25日:恐怖のクリスマス
- 春川さんは「別れた元彼がつきまとってくる」と警視庁八王子署に相談。
- 同署が春川さんを自宅へ送り届けた際、付近をうろついていた広川容疑者を発見。警察は強い執着と危険性を認定し、その場でストーカー規制法違反容疑で逮捕した。
- その後の調べで、彼が乗ってきた車から果物ナイフが発見され、盗撮行為(性的姿態等撮影処罰法違反)も判明。広川容疑者は「復縁したかった。反省している」と供述していたという。
- 2026年1月29日:禁止命令と釈放
- 広川容疑者に対し、ストーカー規制法に基づく「禁止命令」が出された。彼は「もう近づきません」と宣言し、受領書に署名。
- 翌1月30日、3つの罪で略式起訴され、罰金80万円を支払い釈放された。

「ナイフまで持ってたのに、罰金を払えばすぐに出てこられちゃうんだブー!?『もう近づきません』っていう紙の約束だけじゃ、全然安心できないブー!」
第三章:防げなかった凶行──見えなかった「殺意の醸成」
釈放後、警察と春川さんはマニュアルに沿った防衛策を講じていたが、広川容疑者の「殺意」を止めることはできなかった。

- 避難と定期連絡
- 春川さんは警察の助言を受け、2月上旬までの約1ヶ月間、実家などの親族宅へ避難していた。
- 警察も3月12日までに計3回の電話連絡を行い、安全確認を実施。春川さんからは「異常ありません」との報告を受けていた。
- この間、広川容疑者が春川さんの自宅や職場に押しかけた形跡は確認されていなかった。
- 「夢の職場」への執着
- 警察は春川さんに対し「勤務先の変更」も助言していた。しかし彼女は、「ポケモンセンターで働くのが夢だった」として、転職を拒んだという。
- 広川容疑者は、かつて自分が否定した彼女の「夢の場所」を熟知しており、そこが唯一、彼女と接触できる確実なポイントであることを知っていた。水面下で一方的な執着と殺意を募らせた彼は、禁止命令からわずか2ヶ月足らずの3月26日、凶器を持ってその場所に現れたのである。

「制度は動いていたのに…それでも守れなかったのが悔しいブー…」
終章:制度の限界と残された課題
事件後、警視庁人身安全対策課は「最善の措置をとったと考えている」とコメントした。
確かに、相談当日の逮捕、禁止命令の迅速な発出、定期的な安否確認など、現行の法制度とマニュアルに照らし合わせれば、警察は「やるべきこと」をやっていたと言えるかもしれない。
しかし、結果として21歳の若い命は奪われた。
「罰金80万円を払えば社会に戻れる」「『もう近づきません』という署名だけで自由になれる」という現行の刑事手続きは、加害者の歪んだ執着心や、自暴自棄による拡大自殺(無理心中)の衝動を物理的に抑え込む力を持っていなかった。
「弟妹想いのお姉ちゃんだった」と報じられる春川さん。
彼女が憧れ、夢を叶えた華やかなキャラクターショップは、法や制度の網の目をすり抜けた男の悪意によって、最悪の惨劇の舞台となってしまった。
GPS機器の装着義務化や、加害者に対する強制的な精神医学的アプローチの導入など、ストーカー規制法の「次なる段階」への議論が、今まさに急務となっている。



コメント