なぜ千鳥は「西軍」で、ウエストランドは「東軍」なのか?──同じ岡山出身なのに分かれる理由

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テレビの特別番組などでよく目にする「お笑い 東西対決」。
関東出身の芸人を中心とした東軍と、関西出身の芸人が集結する西軍が火花を散らす、お笑い界の恒例行事である。

ここで、お笑いファンなら誰もが一度は感じる素朴な疑問がある。

岡山県出身の同級生コンビである「千鳥」は、当たり前のように西軍の代表格としてひな壇に座っている。
しかし、同じく岡山県出身の同級生コンビであり、M-1王者でもある「ウエストランド」は、なぜか東軍のメンバーとして登場することが多いのだ。

日本の地図を開けば、岡山県は大阪よりもさらに西に位置する、立派な西日本である。出身地で見れば、両者とも西軍にカテゴライズされて然るべきだ。

なぜ、同郷の彼らの所属が真っ二つに分かれるのか。

本稿は、この奇妙な「ねじれ現象」の裏にある、お笑い界独自の厳しい属性ルールと、彼らが歩んだ全く異なる育成環境(土壌)について解き明かすレポートである。


第一章:「出身地」ではなく「産湯」で決まる

結論から言えば、お笑い界における東・西の区分は、戸籍上の出身地ではなく「お笑い芸人としての産湯をどこで使ったか(結成地・所属事務所・主戦場とした劇場)」という、業界特有のルールによって厳格に決定される。

  • 千鳥のケース:大阪の劇場で育った「西の申し子」
    • 大悟とノブは岡山県の高校の同級生だが、お笑い芸人になるという夢を抱き、揃って大阪へと向かった。
    • 吉本興業(NSC大阪校には通っていないがオーディション組として)に入り、「baseよしもと」などの大阪の劇場で下積みを経験。笑い飯らと共に、ゴリゴリの関西お笑いカルチャーの中で揉まれ、大阪の番組で頭角を現した。
    • そのため、彼らのお笑いDNAと業界におけるポジションは、完全に「西(大阪)」の所属となるのである。
  • ウエストランドのケース:東京のライブハウスで育った「東の異端児」
    • 一方、井口浩之と河本太も岡山県の同級生であるが、彼らは高校卒業後に上京し、東京でフリーの芸人としてコンビを結成した。
    • その後、爆笑問題が所属する東京の芸能事務所「タイタン」に所属し、関東の地下ライブシーン(インディーズライブ)で腕を磨き続けた。
    • 彼らの芸人としてのキャリアはすべて東京で形成されているため、出身がどこであれ、お笑い界の属性は生粋の「東(東京)」として扱われるのである。
ブクブー
ブクブー

「ええっ!生まれた場所じゃなくて『芸人として育った場所』でチーム分けされてるんだブー!?お笑い界って、戸籍よりも義理と歴史を重んじる世界なんだブーね!」


第二章:言葉とテンポに見る「土壌」の違い

この「育った場所の違い」は、単なるプロフィールの区分にとどまらず、彼らの漫才のスタイルや言語感覚(テンポ)にも決定的な影響を与えている。

  • 千鳥:関西ナイズされた岡山弁
    • 千鳥の漫才は、ベースこそ岡山弁であるが、大阪の劇場でウケるために最適化された「関西弁のイントネーションが混ざった独特の岡山弁」となっている。
    • 大悟のボケに対するノブの「クセがすごい!」といった間の取り方やツッコミの強弱は、完全に関西のしゃべくり漫才の系譜を受け継いでいる。
  • ウエストランド:標準語ベースの高速ぼやき
    • 対してウエストランドは、井口が岡山出身でありながらも、ツッコミ(あるいはボヤキ)のベースに標準語を多用している。
    • 息継ぎの暇もない超高速で不満をまくし立て、相手を理詰めで追い詰めていくあのスタイルは、関西のノリではなく、関東のコントや漫才特有の「ドライなテンポ感」と「言葉遊び」にルーツを持つ。
ブクブー
ブクブー

「同じ岡山県民なのに、喋りのテンポが全然違うブー!大阪の水と東京の水、どっちを飲んで育ったかで、こんなに芸風が変わるなんて面白いブー!」


終章:お笑いの「血統」というロマン

結論として、千鳥が西軍、ウエストランドが東軍に分かれるのは、彼らが「どこで生まれ育ったか」ではなく、「どこで芸人としての骨格を作ったか」という、プロとしての来歴を重んじるお笑い界の美学によるものであった。

DNAは同じ岡山県というルーツを持ちながらも、大阪の笑いの水で育った千鳥と、東京の地下ライブの泥水をすすったウエストランド。
同じ種から育った二つの才能が、異なる土壌で全く違う花を咲かせ、現在テレビの第一線で交差している。

この「ねじれ現象」は、お笑いという芸能がいかに環境(劇場や先輩、観客の空気)に依存して形成されるかを示す、最高にドラマチックな事例と言えるだろう。

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