国際宇宙ステーション(ISS)などの閉鎖空間において、宇宙飛行士たちは過酷なミッションを遂行している。その生活の中で、避けて通れないのが生理現象だ。
地上であれば、オナラは「マナー違反」や「笑い話」で済む。しかし、宇宙空間においてそれは、時としてミッションの妨げになり、最悪の場合は「命に関わる事故」の引き金になりかねない重大事案として扱われている。
なぜ、たかがガスがそこまでの脅威となるのか。
その背景には、地上とは全く異なる「空気の挙動(対流の欠如)」と「閉鎖環境の脆弱性」が存在する。
本稿は、宇宙飛行士が直面する知られざる苦悩と、オナラが引き起こす3つの物理的・化学的リスクについて解説するレポートである。
第一章:その場に留まる“悪臭の爆弾”──対流なき空間の恐怖
宇宙空間でオナラをした際、最初に直面するのが「臭い」の問題である。地上とは比較にならないほど、その被害は甚大となる。

- 空気が混ざらない
- 地上では、温かい空気は上昇し冷たい空気は下降するという「対流」が自然に起きるため、ガスは拡散して薄まっていく。
- しかし無重力の宇宙空間では、この「対流」が起きない。放たれたオナラは拡散せず、高濃度のガス塊としてその場に漂い続けることになる。
- 高濃度の直撃
- もし、運悪く漂っているガス塊に後から来たクルーが顔を突っ込んでしまったらどうなるか。
- 希釈されていない濃厚な臭気が鼻を直撃するため、「卒倒する(気絶する)」ほどのダメージを受ける危険性がある。これは単なる不快感を超え、作業パフォーマンスを低下させる環境汚染と言える。

「ええーっ!オナラが薄まらないで、そのままの濃さで浮いてるんだブー!?そんな地雷みたいなガスに突っ込んだら、気絶どころじゃ済まないブー!まさに生物兵器だブー!」
なぜ臭いが消えないのか?
- 対流がない: 地上では、温かい空気は上昇し冷たい空気は下降するという「対流」が自然に起きるため、ガスは勝手に拡散して薄まっていく。
- ガス塊の滞留: しかし無重力の宇宙空間では、この「対流」が起きない。放たれたオナラは拡散せず、高濃度のガス塊としてその場にボールのように漂い続けることになる。
第二章:人体がロケットになる?──作用・反作用の法則
次に物理的なリスクである。無重力空間では、あらゆる力が移動のエネルギーとなる。

- ジェット噴射効果
- ニュートン力学の「作用・反作用の法則」により、ガスを後方に噴射すれば、物体(人体)は前方に推進力を得る。
- 地上では重力と摩擦があるため動くことはないが、無重力空間で勢いよく放屁すれば、体が前方へと飛ばされる可能性がある。
- 精密な機器操作中や、姿勢制御が求められる場面で予期せぬ推進力が加わることは、ミッションの阻害要因となり得る。

「プッてしたら体が前に進んじゃうんだブー!?人間ロケットだブー!大事なスイッチを押そうとした時にオナラで手がズレたら大事故だブー…。」
第三章:最大のリスクは「爆発」──引火性ガスの滞留
そして最も懸念されるのが、火災のリスクである。宇宙船という密閉された極限環境において、可燃性ガスは最大のタブーだ。

- 水素とメタンの恐怖
- 人間の腸内ガスには、水素やメタンといった可燃性の高い成分が含まれている。
- 地上であればすぐに拡散するが、前述の通り宇宙では「高濃度のガス塊」として滞留する恐れがある。
- もしこのガス塊が、精密機器の配線スパークや静電気と接触した場合、引火・爆発を引き起こす可能性はゼロではない。逃げ場のない宇宙船内での火災は、即座に全クルーの死を意味する。
本稿で紹介したのは、無重力環境における「物理的に起こり得る現象」を分かりやすく示したものである。
終章:トイレへ駆け込むプロ意識
以上の理由から、宇宙飛行士たちはオナラをしたくなった際、「トイレ(吸引機能付き)に駆け込む」ことが暗黙の、あるいは明確なルールとなっている。
現代の宇宙船には高性能な空気清浄機や循環システムが備わっているとはいえ、リスクを最小限に抑えるための配慮は不可欠だ。
また、宇宙食においても、腸内ガスが発生しやすい豆類や芋類などは調整される傾向にあるという。
たかがオナラ、されどオナラ。
宇宙飛行士たちは、ロケットエンジンの噴射だけでなく、自身の体から出るガスの噴射制御にも、命がけで取り組んでいるのである。


コメント