​空の旅が変わるか?──2026年4月から「機内でのモバイルバッテリー使用」が“全面禁止”へ…

社会
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2026年4月1日、日本の空から一つの日常的な光景が消える。
機内の座席で、手持ちのモバイルバッテリーをスマートフォンに繋ぎ、動画やゲームを楽しみながら目的地へ向かう──これまで当たり前だったこの行為が、航空法に基づく新たな規制により全面的に禁止されるのだ。

背景にあるのは、世界中で相次ぐリチウムイオン電池の発火事故、そして2025年に韓国で発生した衝撃的な航空機全損事故である。

本稿は、国土交通省が決定した規制強化の全容と、その科学的根拠、そして我々利用者が直面する「充電不安」への対策について包括的に解説するレポートである。


第一章:規制の全容──「使うな」「棚に入れるな」

今回の方針転換は、単なるマナーのお願いではない。法的拘束力を持つ厳格なルール変更である。具体的には以下の3点が禁止・制限される。

  1. 使用(充放電)の禁止
    • 持ち込んだモバイルバッテリーでスマホなどを充電すること、および座席のコンセントからモバイルバッテリー自体を充電することが禁止される。
  2. 収納場所の制限
    • モバイルバッテリーを座席上の収納棚(オーバーヘッドビン)に入れることが禁止される。
    • 必ず「座席の下」や「ポケット」など、常時目が届く場所(手元)で管理しなければならない。
  3. 持ち込み個数の制限
    • 容量に関わらず、1人あたり原則2個までに制限される見通しだ(※160Whを超える大型のものは従来通り持ち込み不可)。
【※重要:容量(mAh)と個数の新ルール】

これまでは「100Wh未満なら個数制限なし」としていた航空会社も多かったが、今回の改正で「容量の大小に関わらず、合計2個まで」と厳格化される点が最大の変化である。手持ちのバッテリーの容量(mAh)と照らし合わせて確認してほしい。

  • 100Wh未満(約27,000mAh以下):
    一般的なスマホ用バッテリーはほぼこれに該当する。これまでは無制限のケースも多かったが、今後は「2個まで」となる。
  • 100Wh〜160Wh(約27,000〜43,000mAh):
    PC充電用などの大型タイプ。航空会社の許可があれば持ち込み可(最大2個)。
  • 160Wh超(約43,000mAh超):
    ポータブル電源並みの超大型タイプ。持ち込み不可。
ブクブー
ブクブー

「ええーっ!今まで機内でスマホ充電しながら動画見てたのに、もうやっちゃダメなんだブー!?カバンの中に入れて上の棚にしまうのもNGなんて、知らなかったブー!」


第二章:なぜ禁止なのか?──エアプサン391便の教訓

この厳しい措置の引き金となったのは、2025年1月に韓国で起きたエアプサン391便の火災事故である。
出発準備中の機内で、乗客が棚に入れたモバイルバッテリーが熱暴走を起こして発火。消火が間に合わず機体は全焼し、修理不能(全損)となった。

  • 見えない場所での発火
    • 棚の中での発火は発見が遅れ、荷物が燃え広がる「オーブン効果」を生むため、消火が極めて困難になる。これが「棚への収納禁止」の理由だ。
  • 低気圧下でのリスク
    • 上空の機内は地上よりも気圧が低く、冷却効率が下がる。その環境で充電(発熱を伴う行為)を行うことは、劣化しているバッテリーにとって熱暴走のトリガーとなり得る。これが「使用禁止」の理由である。

第三章:世界の空も「禁止」へ動いている──日本は“推奨”を“義務”に格上げ

この規制強化は日本単独の動きではない。世界各国の航空当局や航空会社も、相次ぐ事故を受けて厳格化へと舵を切っている。

  • 「推奨」から「義務」へ
    • 国連の専門機関であるICAO(国際民間航空機関)では、「機内での充電は避けるべき(Should not)」という指針が出されている。
    • 日本政府はこれを一歩進め、2027年頃に見込まれる世界的なルール改定を先取りする形で、航空法による「禁止(Must not)」へと格上げした。世界に先駆けた法的義務化である。
  • 海外航空会社の先行事例
    • 韓国: 大韓航空やアシアナ航空などは、エアプサン事故を受け、2026年1月からいち早く機内での使用を禁止している。
    • 豪州・欧州: オーストラリアのカンタス航空やジェットスター、欧州のルフトハンザグループなども、すでに使用禁止や個数制限を導入済みだ。
    • つまり、今回の日本の規制は突飛なものではなく、「グローバルスタンダードへの追随と明文化」に他ならない。
ブクブー
ブクブー

「日本だけじゃなくて世界中のルールになりつつあるんだブーね!空の上で火事になったら逃げ場がないから、ルールが厳しくなるのも納得だブー…。」


第四章:我々はどうすべきか?──「充電不安」への対策

この規制により、長距離フライトやLCC利用時の「スマホのバッテリー切れ」は切実な問題となる。

  • 搭乗前の「満充電」が必須に
    • 空港では充電スポットの増設が進んでいる。羽田空港などでは保安検査後のエリアにも充電ポールが増えており、搭乗直前まで充電することが新しい常識となるだろう。
  • 機内エンタメの変化
    • 座席モニターがない機体でスマホを使って映画を見る場合、バッテリー消費が激しい。機内のUSBポートからの直接給電は許可されるため、モバイルバッテリーではなく「USBケーブル」の携行が必須となる。

終章:安全のための不便

「不便になる」という声は避けられないだろう。しかし、たった一つのバッテリーが数百人の命と数百億円の機体を灰にするリスクがある以上、この規制は不可避な選択であった。

これからの空の旅は、「機内で充電する」のではなく、「充電を維持する」スタイルへと変わる。

4月1日以降、飛行機に乗る際はモバイルバッテリーを足元のカバンにしまい込み、フライト中は静かに眠らせておくことが、最もスマートで安全なマナーとなるだろう。

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