2024年度の東京ディズニーリゾート来園者数は、わずか0.2%の増加に留まった。新アトラクション「ファンタジースプリングス」の総工費は3200億円、ディズニーシー並の一大投資にも関わらず、想定には届かず。
その背景にあるのは「値上げ」と「年パス休止」──そして、“夢の国”が大人の事情で変質したことに対する、ファンたちの喪失感だった。
【第1章】横ばいの衝撃──3200億円の一手はなぜ届かなかったのか?
- 2024年6月、新アトラクション「ファンタジースプリングス」オープン
- 総工費3200億円は、2001年開業のディズニーシー(3350億円)に匹敵
- オリエンタルランドは前年度比+149万人(+5.4%)=2900万人を目標にしていた
➡ 結果は2756万人(+5万人)…たった0.2%増にとどまった
これは単なる“横ばい”ではない。
史上最大級のコンテンツを投入しても、来園者数が伸びないという衝撃である。
【第2章】2つのブレーキ──「価格」と「年パス」のダブルショック
来園者数が伸び悩んだ要因として、識者や関係者はこう指摘する。
■ブレーキ①:強気すぎた“価格戦略”
- 2023年10月〜 ついに大人1デーパスポートが1万円超え(変動価格制)
- アトラクション優先搭乗権「DPA」:1回1500〜2000円
- パレードの有料鑑賞エリア導入
→ 一般家庭では2万円以上が“最低ライン”の高額レジャーに
■ブレーキ②:年パス休止(2020年〜現在も未再開)
- 常連ファンの来場頻度激減
- “再体験の魔法”を失った若年層
- ファンマーケティング機能の停止
価格は高く、常連は離れ、初心者は複雑化に困惑──“ちょうどいい”来場者が消えた
【第3章】年パス廃止が壊した「世代をつなぐ魔法」
ディズニーランドには、リピート性を自然発生させる“循環”の仕組みがあった。
- 子供のころ憧れた場所 → 学生になって友人や恋人と来園 → 結婚後は家族で再訪
- 思い出が重なり、世代を超えたファンが育つ
これを支えたのが年間パスポート(年パス)。
「いつでも行ける」魔法の杖が、定期的な来園を促し、コアファンを育てていた。
しかし、コロナを契機に年パスは休止され、その後4年以上再開されていない。
「当面、年間パスポートの再開予定はありません」
という運営側の姿勢は、ファンに見捨てられた感覚を残した。
【第4章】年パスは“悪”だったのか? マナー論争の光と影
- “地元オタク”による場所取り合戦
- DPAや予約で初心者が不利に
- 食事やグッズにお金を落とさない“貢献度の低さ”
「年パス勢が戻ったら地獄に逆戻りだ」
SNSではこうした厳しい声も目立つ。
- 「年10回通えば実質9.9万円は“得”ではない。ディズニー愛ゆえの通いだ」
- 「パークに“慣れ”があるからこそ、ゆったりマナー良く回れるのが年パス勢」
- 「USJは年パス継続中なのに、なぜディズニーだけ?」

「オタク同士のバトルも、夢の国では魔法で止めるべきだブー!」
【第5章】数字が示す“若者離れ”──失われたコアターゲット
- 18〜39歳層:2019年 → 51.9% → 2024年 → 41.2%(10ポイント減)
- 実数に直すと、150万人 → 113万人へ。約40万人の若者ファンが消失
その穴を40歳以上が埋めてはいるが…
2024年度の伸びは+2.3%止まり。もはや頭打ち。
つまり──
ターゲティングが迷走していることは、数字が物語っている。
【第6章】“夢の国”から“攻略する施設”へ──スマホ依存型テーマパークの副作用
ファンからの声に、こんな切実な意見がある。
- 「子連れでスマホをずっと見るのは地獄」
- 「抽選も注文も全部スマホ。昔はガイドブック片手で家族と相談しながら回った」
- 「スマホを使いこなせるマニア以外は不利」
- 「テーマパークというより情報戦ゲーム」
本来、全世代に開かれた“非日常”を体験する空間だったはずが、
操作できない=体験できないという構造に変質しつつある。
【第7章】再定義される“魔法”──ウォルトの魂は今どこに
ディズニーは「白雪姫」など祖業アニメーション実写化で不振が続き、
世界的にもブランド力が試されている。
- 米ディズニー本社:マーベル・スターウォーズ重視へシフト
- アニメ・童話的な“夢の国”コンテンツが相対的に弱体化
- 「夢を売る」企業の屋台骨に揺らぎが出ている
そんな中、日本のオリエンタルランドも“夢の記憶”を共有するファンを切り捨て、
現実的な価格戦略とスマホ依存に振り切った──。
だが、それは「魔法の国」の逆方向ではないか?
【まとめ】今こそ“年パス”はファンの手に戻すべきか?
年パスの是非をめぐる論争は、ただの制度の話ではない。
それは“ディズニーとは何か”を問い直す機会でもある。
- 価格とマナー、どちらを優先するか
- 一見さんと常連、どちらを中心に据えるか
- 子供にとっての“初体験”と、大人にとっての“追体験”、どちらに力点を置くか
「夢の国」とは、“すべての人に開かれていた記憶”のこと。
今のディズニーが失いつつあるのは、その開かれた記憶への扉かもしれない。

「“魔法”は、価格や効率だけじゃ測れないものだブー!」
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