2月は「28日しかないのに家賃が同じ」は詐欺か?──泊数計算のホテルとは違う“家賃”の正体

経済
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2月28日。2月最後の日。
カレンダーを見て、ふと湧き上がる「理不尽な怒り」を覚えている方も多いのではないだろうか。

「今月は28日しかないのに、なぜ家賃は31日ある月と同額なのか?」

ホテルなら2、3泊分安くなるはずなのに、なぜ賃貸は安くならないのか。日割り計算すれば数千円〜数万円の損をしているのではないか。

この素朴かつ切実な疑問に対し、不動産業界の商慣習、コスト構造、そして我々の給与体系という「ブーメラン」の視点から、公平に分析して解き明かすレポートである。

なぜ我々はこの「2月の割高」を甘受しなければならないのか。そこには、ホテルと賃貸の決定的な商品性の違いと、社会システムを維持するための「割り切り」が存在する。


第一章:ホテルは「時間」を売り、賃貸は「権利」を売る

まず、ホテルと賃貸物件は、似て非なるビジネスモデルであることを理解する必要がある。

  • ホテル=「従量課金(Pay as you go)」
    • ホテルやネットカフェは「時間」や「日数」を切り売りするビジネスだ。
    • 1泊いくら、1時間いくらという積み上げ式であるため、28泊なら当然安くなり、31泊なら高くなる。
  • 賃貸=「サブスクリプション(定額制)」
    • 一方、賃貸契約における家賃は、「部屋を占有する権利」に対する対価である。
    • これはNetflixやスポーツジムの会費と同じ仕組みだ。2月にジムへ行く回数が物理的に減ろうが、映画を見る時間が減ろうが、会費が変わらないのと同じく、「1ヶ月間、ここを自分の城として使う権利」を定額で購入しているのである。
ブクブー
ブクブー

「なるほどだブー!ホテルみたいに『泊まった分だけ』じゃなくて、Netflixみたいに『見ても見なくても定額』っていう契約だったんだブーね。」


第二章:家賃は「年払い」の12分割である

不動産実務において、家賃設定の根底にあるのは「月単位」ではなく「年単位」の考え方だ。

  • 年間コストの平準化
    • 大家や管理会社は、「この部屋を1年間貸すなら、トータルでこれくらいの収入が必要」という年間計画を立てる。
    • 本来なら「年俸制」でも良いのだが、それでは入居者の負担が大きすぎるため、便宜上「12等分」して毎月請求しているに過ぎない。
    • つまり、「2月は損、31日ある月は得」という凸凹を、年間を通じて平均化(なら)しているのが現在の家賃システムなのだ。
  • 日割りコストの真実
    • とはいえ、日割りで見れば2月が割高なのは事実だ。家賃10万円の場合で計算してみよう。
      • 31日の月: 1日あたり約3,225円
      • 28日の月: 1日あたり約3,571円
    • 1日あたり約350円ほど、2月は高くついている計算になる。

第三章:もし「毎月変動」にしたら何が起きるか?

では、公平を期して「完全日割り制」にしたらどうなるか。そこには、誰も得をしない事務作業の地獄が待っている。

  • 管理コストの爆増
    • 毎月、引き落とし金額が変わることになる。大家は全入居者の日数を毎月確認し、銀行システムの設定を変更し、1円でも振込額が違えば督促を行わなければならない。
  • 手数料というしっぺ返し
    • この膨大な事務コストは、当然ながら「管理費」や「共益費」、あるいは「基本家賃」の値上げという形で入居者に跳ね返ってくる。
    • 「数百円の公平さ」を求めた結果、面倒な手続きと全体的なコスト増を招くため、定額制の方が双方にとって合理的なのである。
ブクブー
ブクブー

「日割り計算の手間賃を取られるくらいなら、今のままの方がマシかもしれないブー…。『年間契約の分割払い』だと思えば納得だブー。」


第四章:給料のブーメラン──「2月だけ減給」を受け入れられるか

そして、この議論における最大の急所(キラーフレーズ)がこれだ。
「家賃を日割りにするなら、あなたの給料も日割りにすべきではないか?」

  • 月給制の恩恵
    • 正社員など月給制で働く多くの人は、2月の出勤日数が少なくても、他の月と同じ満額の給料を受け取っているはずだ。
    • 「2月は働く日数が少ないから給料も10%カットします」と言われたら、誰もが暴動を起こすだろう。
    • 我々は、「収入(給料)」においては月額定額制の恩恵を享受している。ならば、「支出(家賃)」においても同じルールを受け入れるのが社会的な筋ということになる。
ブクブー
ブクブー

「ぐぬぬ…!それは言わないで欲しいブー!『給料は満額欲しいけど、家賃は安くして』なんて、虫が良すぎる話だったブー…。」


終章:例外としての「日割り」

もちろん、不動産業界に「日割り」の概念がないわけではない。
月の途中で入居・退去する場合に限り、きっちりと日割り計算が行われる。これは「権利の発生・消滅」が明確だからだ。

結論として、2月の家賃が安くならないのは、「1年を均して考えるサブスク契約だから」であり、「我々の給料も減らないから」である。

今日、2月28日。「損をした」と嘆くよりは、「短い労働日数で満額の給料をもらいつつ、短い日数で満額の家賃を払った」という、プラスマイナスゼロの帳尻合わせに納得して、明日からの3月(31日間あるお得な月)を迎えるのが精神衛生上よろしいようだ。

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