要人を守るため、ビシッとしたスーツに身を包み、鋭い眼光を隠す黒いサングラス。
テレビドラマや映画の影響で、誰もが「SP(セキュリティポリス)=サングラス」という強烈なイメージを持っている。「あれはオシャレなのか?」と疑問を抱くのも無理はない。
しかし現実の警備の世界において、サングラスは決して「カッコつけ」の小道具ではない。
そこには、視界を制するためのシビアで論理的な防衛戦術が存在する。
さらに驚くべきことに、「日本のSPは原則としてサングラスをかけない」という、イメージを覆す事実も存在するのだ。
本稿は、要人警護のプロフェッショナルたちがサングラスを「かける理由」と「かけない理由」に迫る、セキュリティの裏側を解き明かすレポートである。
第一章:米国シークレットサービスの「視界防衛」
私たちが思い描く「サングラスのSP」のイメージは、主にアメリカ大統領などを警護する「シークレットサービス(USSS)」の姿から来ている。
彼らがサングラスをかけるのには、以下のような複数の命に関わる理由が存在する。

- 視線を悟られないための「ブラインド」
- これが最大の戦術的理由である。警護官がどこを見ているか、誰を警戒しているかを襲撃者に悟られてはならない。
- サングラスで視線を完全に隠すことで、不審者は「いつ自分が見られているか分からない」というプレッシャーを感じ、行動を起こしにくくなる。いわば、サングラス自体が見えないバリア(抑止力)として機能しているのだ。
- フラッシュと太陽光からの保護
- 要人が移動する際、メディアから一斉にカメラのフラッシュが焚かれる。この強烈な光で一瞬でも目が眩(くら)めば、その隙を突かれて襲撃されるリスクがある。
- また、屋外の太陽光の反射から目を守り、常にクリアな視界を確保するためにもサングラスは不可欠な装備なのである。
- 異物混入の防止
- 爆発による破片や、突風で舞い上がる砂埃、液体などが目に入るのを防ぐ、物理的なシールド(盾)としての役割も担っている。

「ええーっ!カッコつけてるんじゃなくて、目線を隠すための『見えないバリア』だったんだブー!しかもフラッシュ対策まで兼ねてるとか、超合理的だブー!」
第二章:なぜ「日本のSP」はサングラスをかけないのか?
一方で、日本の内閣総理大臣などを警護する警視庁のSPは、かつては「原則としてサングラスをかけない」のが普通であった。ここには日本特有の警護哲学と文化的な背景がある。

- 「威圧感」の排除と群衆への「擬態」
- 日本では、黒いサングラスは「不真面目」「威圧的」「アウトロー」といったネガティブなイメージと結びつきやすい。要人のイメージダウンを防ぐため、あえて素顔を晒して柔らかい印象を与えていた。
- また、警護の基本は「目立たないこと」である。群衆の中にスーツ姿や私服で自然に溶け込むことで、不審な動きをいち早く察知する「擬態」の戦術を重んじていたためだ。

「日本のSPさんは、あえて『普通の人』のフリをして忍者のように紛れ込んでたんだブーね。お国柄が出てるブー!」
第三章:2024年のルール変更──日本のSPもサングラス着用へ
しかし、この日本の「素顔の警護」という伝統も、近年になって大きな転換期を迎えた。

- 過酷な気象環境による健康被害の防止
- 記録的な猛暑が続く中、屋外で長時間警戒に当たる警察官やSPの健康被害が深刻化。これを受け、警察庁の指示により「2024年8月5日から、警視庁のSPや機動隊員が業務中にサングラスを着用すること」が公式に認められたのである。
- 強い紫外線から目を守り、太陽光の乱反射による「見えづらさ(警戒力の低下)」を防ぐという、極めて実用的な目的でのルール変更であった。
終章:ただのファッションではない「防具」
結論として、SPがサングラスをかける理由は「カッコつけ」などではなく、「視線を隠し、光と物理的なダメージから目を守り抜くための、極めて合理的な防具」であった。
日本とアメリカで長年異なるスタイルがとられていたのも、それぞれの社会が求める「警察のあり方」の違いに過ぎない。
過酷な気候変動により、日本のSPもついにサングラスという「防具」を装備する時代となった。次にテレビで要人警護の映像を見た時、その黒いグラスの奥にある、プロフェッショナルたちの張り詰めた視線と覚悟を感じ取ってみてはいかがだろうか。


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