宇宙空間では“ゲップ”ができない!?──無重力が引き起こす、宇宙飛行士たちの知られざる地獄

宇宙
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​コーラや炭酸飲料を飲んだ後、あるいはご飯をお腹いっぱい食べた後。私たちは日常的に「ゲップ」をして、胃の中に溜まった余分なガスを逃がしている。

​しかし、人類の夢である「宇宙空間」では、この当たり前の生理現象が“命がけのギャンブル”に変わることをご存知だろうか。

​結論から言えば、無重力の宇宙空間では「安全なゲップ」をすることができない。

うかつにゲップをしようものなら、胃の中の食べ物や水分がガスと一緒にすべて逆流してくる「ウェット・バープ(濡れたゲップ)」という恐るべき現象が起きてしまうのだ。

​本稿は、エイリアンよりも隕石よりも宇宙飛行士たちを悩ませている、宇宙空間ならではの「人体のバグ」に迫るサイエンス・レポートである。


第一章:地球のゲップは「重力」のおかげ

​なぜ、地球上では食べ物を吐き出すことなく「ガス(空気)だけ」を口から出すことができるのだろうか。答えはシンプル。地球の「重力」が、胃袋の中身を綺麗に分けてくれているからである。

  • 胃の中の美しい層構造
    • ​地球上では重力が下に向かって働いているため、胃に入った重い「食べ物」や「水分」は、自然と胃の底(下部)に沈んでいく。
    • ​一方で、軽い「空気(ガス)」は上へと浮き上がり、胃の上部にフワッと溜まる。
  • 上澄みだけを抜くシステム
    • ​このように「空気」と「内容物」が完全に分離しているため、私たちがゲップをする時は、一番上にある「空気だけ」がポコッと安全に抜けていくのだ。
ブクブー
ブクブー

「ええっ!僕たちが気持ちよくゲップできてるのって、地球の引力(重力)がサポートしてくれてたおかげだったんだブー!?」


​第二章:無重力空間でシェイクされる胃袋

​しかし、ISS(国際宇宙ステーション)などの無重力(微小重力)環境では、この大前提が完全に崩れ去ってしまう。

  • 上下の概念が消滅する
    • ​無重力空間には「物を下に引っ張る力」が存在しない。そのため、胃の中に入った食べ物や水分が底に沈むことなく、プカプカと宙に浮いた状態になる。
  • 胃袋の中はカオスなミックスジュース
    • ​食べ物、水分、そして胃酸や飲み込んだ空気が、分離することなく胃袋の中で完全に「シェイク」されてしまうのだ。つまり、宇宙飛行士の胃袋の中は、空気とドロドロの食べ物が入り混じったカオスな空間と化している。
ブクブー
ブクブー

「胃袋の中が洗濯機みたいにぐるぐる混ざっちゃってるんだブーね。想像しただけで気持ち悪くなってきたブー…。」


​第三章:恐怖の「ウェット・バープ(濡れたゲップ)」現象

​このカオスな胃袋の状態で、もし地球にいる時と同じ感覚で「ゲップをしてスッキリしよう!」と試みたらどうなるか。

  • ガスと内容物が一緒に飛び出す
    • ​空気と食べ物がぐちゃぐちゃに混ざり合っているため、「ガスだけ」を器用に逃がすことは不可能である。食道の弁を開いた瞬間、ガスと一緒に胃の内容物(消化物や胃液)までがそのまま食道を逆流し、口の中へと上がってきてしまう。
  • 宇宙飛行士が恐れる「ウェット・バープ」
    • ​NASAの宇宙飛行士たちは、この大惨事になりかねない現象を「ウェット・バープ(Wet Burp=濡れたゲップ)」と呼んで恐れている。無重力で嘔吐物をまき散らせば、機材の故障や他のクルーの呼吸を脅かす大事故に直結するため、彼らは「絶対にゲップをしてはいけない」というプレッシャーと戦っているのだ。

​終章:宇宙に炭酸飲料を持っていけない理由

​結論として、宇宙空間でゲップができないのは、無重力が人間の消化器官の前提(重力による分離)を無効化してしまうからである。

​実は、宇宙飛行士の食事に「コーラ」や「ビール」などの炭酸飲料が採用されない最大の理由もここにある。胃にガスが大量に発生すれば、ウェット・バープの危険性が跳ね上がってしまうからだ。

​次に夜空を見上げて宇宙のロマンに思いを馳せる時は、重力のおかげで今日も安全にゲップができている地球の奇跡に、少しだけ感謝してみてほしい。

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