「最近、スーパーで見かけないと思っていた」
おなじみのアイスが売り場から消え、製造終了を知って驚いた人もいるだろう。
明治の「明治 エッセル スーパーカップ 抹茶 200ml」が、2026年2月に製造を終了していたことが明らかになった。2002年の発売以来、長く親しまれてきたフレーバーだけに、SNSでは惜しむ声が上がっている。公式サイトにも、製造終了が掲載されている。
商品の終売と聞くと、売れ行きが落ちたのだろうと思いがちだ。しかし、明治が説明した理由は、世界的な抹茶需要の高まりによる、原料の安定供給への懸念だった。
抹茶が人気なら、もっと作ればよいのではないか。
本稿は、定番アイスの終売を入口に、抹茶の需要が増えても、供給をすぐには増やせない事情を読み解くレポートである。
第一章:明治が重視した「安定して届けられるか」
明治は取材に対し、世界的な需要の高まりを受け、抹茶原料の供給が不足する可能性があったため、商品の安定供給を重視して終売を判断したと説明している。
ここで重要なのは、「商品を買いたい人がいること」と「その商品を作り続けられること」は別の条件だという点である。

- 定番商品には、継続的な原料調達が必要
- 一度だけ製造する限定商品と違い、定番商品は繰り返し生産する。必要な原料を、継続して確保できる見通しが欠かせない。
- 説明されたのは、供給不足の「可能性」
- 明治は、原料を完全に調達できなくなったと説明したわけではない。今後の安定供給を重視した判断としている。
原料価格や採算も気になるところだが、明治が公表した説明から、値上げでは対応できなかった理由まで断定することはできない。今回の終売を理解する出発点は、売れ行きよりも「供給を続けるための原料確保」にある。

「ええっ!『売れなくなったからやめた』んじゃなくて、『世界中からモテすぎて、材料が手に入らなくなるかも』っていう前向きな理由だったんだブー!」
第二章:抹茶は「普通のお茶を粉にしたもの」ではない
では、抹茶の原料は、なぜ簡単に増やせないのか。
まず知っておきたいのは、抹茶が、一般的な煎茶をそのまま粉にしたものではないということだ。

- 原料は「てん茶」
- 抹茶は「てん茶(碾茶)」という茶を細かい粉末にして作る。農林水産省の説明では、収穫前に茶園を2〜3週間程度覆い、日光を遮って育てた茶葉を用いる。
- 加工方法も煎茶とは異なる
- 煎茶は摘んだ茶葉を蒸し、揉んで乾燥させる。一方、てん茶は蒸した後、揉まずに乾燥させ、それを茶臼などで粉末にする。
つまり、茶葉があれば、その分をすべて抹茶に回せるわけではない。
需要の増加に対応するには、原料となる茶を育てる段階から、加工する段階まで、生産体制を整える必要がある。粉にする工程だけを増やしても、その前の原料が足りなければ増産はできないのである。

「抹茶って育てる時からVIP待遇だったんだブー!急に『たくさん作って!』って言われても、そんな簡単に増やせないブーね…。」
第三章:需要は増えても、農園と工場はすぐ増えない
抹茶の供給を増やす取り組みは、すでに進められている。ただし、それには設備だけでなく、人手や技術も必要になる。
農林水産省が紹介する静岡県のハラダ製茶の事例では、海外の抹茶ブームによって2022年ごろから需要が急増した一方、契約生産者の高齢化による離農も重なり、供給が追いつかなくなったという。

- 栽培には資材と労働力が必要
- てん茶向けの茶は、一定期間、遮光資材で覆って育てる。そのため、資材の準備や作業、それに対応する栽培技術が求められる。
- 加工設備と生産者の育成も必要
- 同社は新たな生産者との連携を進め、技術指導や設備の貸し出しによって、生産の拡大を目指している。
これは明治の調達先や、今回の終売に直結する事情を示したものではない。しかし、抹茶の増産が、工場の稼働時間を延ばすだけでは済まないことが分かる。
買いたい人が増える速さに、農園や加工設備、人材を整える速さが追いつくとは限らない。その時間差が、原料の安定供給を難しくするのである。
第四章:製造終了と、店頭から消える日は同じではない
今回のニュースでは、「2月に製造を終了していた」という点にも注意したい。
製造終了は、新たに商品を作るのをやめた時点であり、全国の店舗で同じ日に販売が終わるという意味ではない。

製造済みの商品が流通や店舗に残っていれば、その後も販売される場合がある。明治は取材に対し、現在の店頭在庫については把握できないと説明している。
そのため、製造終了を知った日と、最後に商品を見かけた日が離れていても、不思議ではない。
また、再発売を望む声に対して、同社は感謝を示しているが、再発売の具体的な予定は明らかにしていない。「一時的な品切れ」とも、「今後も絶対に復活しない」とも、現時点では言い切れないのである。
終章:人気だけでは、定番を続けられない
「スーパーカップ 抹茶」の終売について、明治が挙げた理由は、世界的に需要が高まる抹茶原料を、安定して確保できるかという問題だった。
商品に支持が集まっていても、その原料がほかの商品や市場でも求められるようになれば、供給の条件は変わる。一方、農業と加工の現場は、注文が増えたからといって、すぐに生産量を増やせるわけではない。
私たちにとっての定番は、「いつでも売り場にあるもの」である。
しかし、その当たり前を支えるには、原料を育てる人、加工する設備、継続して調達する仕組みが必要だ。
今回の終売は、人気があることだけでは、商品を作り続けられないという、身近な食品の供給事情を示している。


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