ゲーム買った後の“自由”はどう変化?──“NO RESALE”からDL時代へ、中古販売と所有の行方

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黒い手のひらに、赤い文字で「NO RESALE」。
かつて家庭用ゲームソフトのパッケージには、無許諾の中古販売を禁止すると伝えるこのマークが掲げられていた。

メーカーが作り、消費者が買ったゲームを、別の人に売ってよいのか。
中古ゲームの権利をめぐり、メーカーと販売店が裁判で争った時代がある。その結果、中古販売の差し止めは認められず、遊び終わったソフトを売ったり、過去の作品を安く買ったりする選択肢は残された。

しかし、ダウンロード販売が普及した現在、状況は再び変わっている。
自宅にいながら買えて、入れ替えの手間なく遊べる便利さの一方で、購入済みのゲームを中古店に持ち込むことはできない。正規の販売経路がすべて終了すれば、後から買いたい人の入手が難しくなる場合もある。

あの「NO RESALE」マークが目指した状態は、デジタルという別の形で実現しつつあるのだろうか。

本稿は、中古ゲーム裁判の歴史から現在の販売方式、そして将来の入手・保存に至るまで、ゲームを買った後の私たちの自由がどう変わったのかを読み解くレポートである。


第一章:なぜメーカーは中古販売に反対したのか

メーカーの立場から見れば、中古販売に対する懸念は分かりやすい。

  • 利益の回収問題
    • 一本のソフトが中古市場で何度売買されても、その取引代金がメーカーに直接入るわけではない。中古の方が安ければ、新品を買うはずだった人が中古を選び、人件費や制作費の回収に影響する可能性がある。
  • 消費者にとっての「中古」の価値
    • 一方、消費者にとって中古市場は「安く買える」だけが価値ではない。遊び終えたゲームを売り、そのお金を元手に次の新品を買う。あるいは、新品では手を出しにくかったシリーズを中古で試し、続編を新品で買う。さらに、メーカーが出荷を終了した過去の作品を探す場でもある。

中古取引がすべて新品の売上を奪うとも、必ず次の新品購入につながるとも言えない。メーカーとの競合と、利用者の購入や作品との出会いを支える役割。その両方を持つ市場をめぐって、対立が生じたのである。


第二章:裁判が認めた「買った一本を売る自由」

中古販売をめぐる争いで大きな節目となったのが、2002年4月25日の最高裁判決である。
最高裁は、適法に販売された家庭用ゲームソフトの現物について、その後の中古品の再譲渡には著作権の効力が及ばないと判断した。

  • 「権利の消尽(しょうじん)」という原則
    • メーカーは最初の販売で、その一本の対価を得る機会を持つ。適法に市場へ出した後も、売買のたびに著作権者の許可が必要となれば、商品の円滑な流通が妨げられる。そのため、「現物を再び売る行為まで、著作権者が支配し続けることはできない」という法理が示された。
  • 現物の譲渡と、複製は別
    • これは著作権そのものが消えるという意味ではない。内容を無断でコピーして販売することと、自分が買ったその一本を他人に渡すことを区別し、後者についての自由を認めたのである。
ブクブー
ブクブー

「ええっ!昔は『中古で売っちゃダメ!』ってメーカーが怒って裁判になってたんだブー!?でも、最高裁が『買った人の自由だ!』って決めてくれたんだブーね。」


第三章:ダウンロード時代に変わった「買った一本」の定義

時代が進み、ゲームは店頭で現物を買うだけでなく、オンラインでダウンロード購入するものになった。ここで変わったのは、購入したものの扱いと、他人に渡すための条件である。

  • アカウントに結びつく利用権
    • ダウンロード版では、ゲームの利用権が購入者のアカウントに結びつく仕組みが一般的だ。例えばSteamの規約では、明示的に認められる場合を除き、アカウントやゲーム利用権の売却・譲渡を禁止している。
  • 規約とシステムによる制限
    • データだから譲渡が技術的に不可能というわけではない。しかし、現物を手渡すように、購入者が自由に利用権を移せる仕組みは一般的ではない。規約と販売システムによって、売却・譲渡が制限されているのである。

パッケージ版でも、ゲームの著作権まで購入しているわけではない。違いは、手元の現物を売れるか、利用権を他人に移せるかという点にある。2002年の最高裁判決が、そのままダウンロード版の転売を可能にするわけではない。


第四章:便利になった購入、不自由になった売却

ダウンロード版は、自宅から購入でき、ソフトを入れ替えずに多数のゲームを管理できる。小規模な開発者にとっても、現物の製造・輸送・在庫の負担を減らし、作品を届けられる利点がある。

しかし、消費者の「財布」の観点から見ると事情は異なる。

  • 実質的な負担額の違い
    • 例えば8,000円のパッケージ版を買い、クリア後に3,000円で売れれば、売却代金を差し引いた負担は5,000円となる。一方、ダウンロード版では原則として売却による回収ができない。これは説明のための例で、実際の買取価格は作品や状態によって変わる。
  • 安く買う経路の変化
    • デジタル販売でも大規模なセールは行われる。ただ、中古市場では在庫や売り手の事情で価格が動くのに対し、ダウンロード販売では、値下げの時期や幅を決める主導権がメーカーやストア側に寄りやすい。

必ず高くなるという話ではない。変わるのは、安く買う経路と、遊び終えた後に購入費を回収する選択肢である。

ブクブー
ブクブー

「なるほどだブー!DL版は便利だけど、クリアしても売れないからお財布へのダメージはデカいブー…。」


第五章:販売終了したゲームは、どこへ行くのか

パッケージ版なら、製造が終わっても現物が残っていれば中古市場で探せる。
ダウンロード専用作品では、正規の販売経路がすべて終了すると、まだ買っていない人の新規入手が難しくなる。ただし、三つの「終了」は区別したい。

  • 新規販売の終了: 未購入の人が買えなくなる。
  • 再ダウンロードの終了: 購入済みでも、削除や本体交換後に再取得できなくなる。
  • オンラインサービスの終了: 通信機能やサーバーに依存する遊びが使えなくなる。

販売終了が、直ちに購入済みのゲームを遊べなくするとは限らない。任天堂も、購入済みなら再ダウンロードできる場合がある一方、再ダウンロード配信が終了したソフトは対象外と案内している。

現物でも、追加データやオンライン認証、サーバーに依存する作品では、すべてを遊べるとは限らない。逆にGOGのように、オフライン用インストーラーを保存できる販売方式もある。

保存できることと転売できることは別である。将来の機器で動くかも含め、何が手元に残り、何に依存するかが重要になる。


終章:ゲームを買うとき、何を手に入れているのか

かつて「NO RESALE」は、販売されたゲームの中古流通を止めようとする意思を示していた。最高裁は、適法に買った現物を再び売る自由を認めた。

その後のダウンロード化は、購入を便利にし、作品を届ける経路を広げた。一方で、売却・譲渡・販売終了後の入手という選択肢が制限される場合もある。ただし、この結果だけから、普及の目的が中古販売の排除だったと断定することはできない。

メーカーの収益は、次の作品を作るために必要だ。同時に、利用者にとっては、遊び終わったゲームを手放せることや、後から過去の作品に出会えることも価値である。

私たちが「ゲームを買う」とき、何を手に入れているのか。
価格や内容に加え、売れるのか、譲れるのか、再取得できるのか、将来も遊べるのか。購入するまでの便利さと、購入した後の自由を合わせて見ることが、これからのゲームの買い方を考える手がかりになる。

ITゲーム経済
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