プロパンガス(LPガス)を利用している家庭で暮らしていても、自宅のボンベの残量を気にしたことがある人は少ないだろう。それはまるで魔法のようにガスがなくなる前に、いつの間にか新しいボンベに交換されているからだ。
しかし本当にガス欠になることはないのだろうか。
そしてなぜ都市ガスが使えるエリアなのに、わざわざ料金が高いとされるプロパンガスの物件が存在するのか。
本稿は、この我々の生活を支える身近なインフラ「プロパンガス」にまつわる素朴な疑問の数々を、その供給システム、料金体系、そして不動産業界の“裏事情”から徹底的に解き明かすレポートである。
第一章:プロパンガスは「ガス欠」になるのか?
結論から言えばガス欠になることは稀だが、理論上・現実上ともに起こり得る。
ただしそれを防ぐためにプロパンガスの供給システムは、極めて堅牢に設計されている。

- 「減る前に交換計画が立つ」仕組み
- 多くの家庭ではガスメーターの使用量をガス会社が定期的な検針や遠隔監視によって把握している。そのため「ガスがなくなったら交換に来る」のではなく「ガスがなくなる前に計画的に交換に来る」のが基本である。
- それでも「ガス欠」になるケースとは?
- ①使用量の急増: 真冬の寒波で給湯や暖房を想定以上に多用した場合など、交換予定日より早くガスが空になる可能性がある。
- ②物流トラブル: 大雪や台風、地震などで道路が寸断され、交換作業員が物理的にたどり着けない場合。
- ③設備・連絡系のトラブル: メーターの通信エラーや検針の見落としといった、極めて稀なヒューマンエラー。
- ガス欠を防ぐ“二重構え”のシステム
- しかしそれでも「突然ガスが止まる」ことは少ない。なぜなら多くの家庭ではガスボンベが2本設置されており、片方が空になると自動で予備のボンベに切り替わる仕組みになっているからだ。
- この切り替えが行われるとガス会社に通知が行き、交換作業員が駆けつける。この“二重構え”のシステムがある限り、通常の生活でガス欠を心配する必要はほとんどないと言える。

っててくれて、しかも予備のボンベまで用意してくれてたんだブーね!だから安心してお風呂に入れるんだブーか!ありがとう、ガス会社さん!」
第二章:なぜ都市ガスエリアにも「プロパン物件」が存在するのか?
「都市ガスが使えるエリア=全ての建物が都市ガスを使える」というわけではない。これがこの謎を解く最大の鍵である。

- 都市ガスは「引き込まないと使えない」インフラ
- 都市ガスは道路の下に埋設された本管から、各家庭の敷地内へとガス管を「引き込む」工事を行わなければ利用することができない。
- この引き込み工事には道路の掘削なども伴うため、数十万円から条件次第では100万円を超える高額な費用がかかることがある。
- プロパンは「初期費用ゼロ」で導入可能
- 一方でプロパンガスは、ボンベや配管、メーターといった初期設備をガス会社側が「無償で貸与」してくれるケースが多い。
- 建物のオーナーから見れば初期投資がゼロで工事も簡単なプロパンガスは、導入のハードルが圧倒的に低いのだ。
- その他の理由
- ①建築当時の事情: 建物が建てられた当時はまだ都市ガスが整備されておらず、その名残でプロパンを使い続けている。
- ②契約の縛り: 設備を無償で提供してもらう代わりにガス会社と長期契約を結んでおり、オーナーが簡単に解約できない。
つまりガスの種類は入居者の希望ではなく、建物のオーナーの「コスト」と「事情」によってあらかじめ決定されているケースがほとんどなのである。

「ええーっ!?そういうことだったんだブーか!僕たちが高いプロパンガス代を払ってるのは、もしかしたら大家さんが最初の工事費をケチったからかもしれないんだブーか…!なんだかちょっと複雑な気分だブー…。」
大家さんが「プロパンガス」を選びがちな二つの懐事情
- 「引き込み工事」が高すぎる: 都市ガスは道路下の本管からガス管を引き込む工事に数十万円〜100万円超の費用がかかる。
- プロパンは「初期費用ゼロ」で導入可能: プロパンガスはボンベや配管、給湯器といった初期設備をガス会社側が「無償で貸与」してくれるケースが多い。
第三章:なぜプロパンガスは「料金が高い」と言われるのか?
プロパンガスが都市ガスよりも割高になるのは、決して「ボッタクリ」だからではない。それは両者の事業モデルの根本的な違いによる、構造的な必然なのだ。

| 項目 | 都市ガス | プロパンガス(LPガス) |
|---|---|---|
| 料金体系 | 規制料金(公共インフラ型) | 自由料金(個別配送・サービス型) |
| 供給方法 | 地下導管で一括供給 | トラックで各戸に個別配送 |
| コスト構造 | インフラ維持費が主 | 人件費・物流費が上乗せ |
| 設備費用 | 利用者負担が基本 | ガス料金に上乗せされることが多い |
- ① 料金が「自由価格」である
- 都市ガスは地域独占の公共事業として料金がある程度規制されている。
- 一方プロパンガスは会社ごと、物件ごとに価格が異なる完全な「自由料金」。そのため競争が働きにくい地域では価格が高止まりする傾向がある。
- ②「配送コスト」がかかる
- 都市ガスが地下のパイプラインでガスを“流しっぱなし”にできるのに対し、プロパンガスはボンベの在庫を管理しトラックで一軒一軒配送・交換するという人手と燃料費がかかる物流ビジネスである。
- ③「設備費」が料金に含まれている
- 前述の通り無償で貸与された給湯器などの設備費用は、最終的に毎月のガス料金に分割払いの形で上乗せされて回収されている。
終章:高いけど、強い。それがプロパンガス
結論としてプロパンガスは、そのビジネスモデルの特性上、都市ガスよりも料金が割高になる構造的な宿命を背負っている。
しかしその一方でプロパンガスには、都市ガスにはない明確なメリットも存在する。
- 災害からの復旧が圧倒的に早い
- 供給エリアを選ばない(全国どこでも使える)
- 各家庭でエネルギー源が独立しているため供給が止まりにくい
つまりプロパンガスは「高いけど、災害時には強い」エネルギーなのだ。
料金の安さを取るか、それとも災害時の強さや供給の独立性を取るか。
我々が次に住まいを選ぶ時、そのガスの種類がどちらであるかを確認することは、自らのライフラインを選択する上で極めて重要な判断基準となるのかもしれない。


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