冷えたグラスに注がれた、黄金色の飲み物と白い泡。
ひと口飲めば、炭酸の刺激と独特の苦味が広がる。しかし、アルコール分は0.00%。ビールのように見えて、酔うための飲み物ではない。
そんなノンアルコールビールに、「そこまでしてビール味を飲みたいものなのか」と疑問を抱く人もいるだろう。
ビールの楽しさを、アルコールによる酔いや開放感に感じているなら、もっともな疑問である。酔わないのであれば、お茶や炭酸水、ジュースでもよさそうに思える。
それでも、あえてビール味を選ぶ人がいる。
その理由を考えるには、一杯の飲み物に求めるものを、「酔い」だけで捉えないことが手がかりになる。
本稿は、ノンアルコールビールを選ぶ人の飲用理由をたどり、味や食事、晩酌の習慣など、「飲む楽しさ」の中身を解き明かすレポートである。
第一章:ビールの楽しさは、「酔えること」だけなのか
同じビールを飲んでいても、何を楽しんでいるかは人によって違う。
ほろ酔いになることを楽しみにしている人もいれば、最初のひと口の爽快感が好きな人もいる。料理と一緒に飲むことや、一日の終わりに缶を開ける時間に魅力を感じる人もいるだろう。

- 味や香りを楽しむ
- 苦味や麦芽・ホップ由来の香り、炭酸の刺激など、ビールらしい風味や飲み心地を好む。
- 食事や時間を楽しむ
- 料理と組み合わせたり、くつろぐ時間のお供にしたりする。飲み物そのものに加え、飲む場面にも楽しみがある。
- アルコールによる酔いを楽しむ
- 酔うことを大きな目的としているなら、アルコールを含まない飲料では、その部分は満たされない。
ノンアルコールビールを選ぶ理由は、このうち何を残したいかによって変わる。
実際、2026年1月にマイボイスコムが実施した調査では、ノンアルコールビールの飲用者が挙げた理由として、「車を運転するときでも飲める」「お酒を飲む気分を味わえる」に加え、「おいしい」も、それぞれ2割台となっている。味そのものを理由に選ぶ人もいるのである。
第二章:「甘くない、味のある炭酸」が欲しい
ビールの苦味が好きではない人にとっては、アルコールを抜いてまで、その味を求めることが不思議に映るかもしれない。
しかし、苦味は、誰にとっても避けたい味というわけではない。 ブラックコーヒーや渋いお茶を好む人がいるように、飲み物の魅力は甘さだけでは決まらない。

- 甘い飲み物とは違う選択肢
- 食事中にジュースの甘さは欲しくないが、風味のある飲み物は欲しい。そうした人には、苦味や香りのあるビール味が選択肢になる。
- 炭酸水とも違う飲み心地
- 炭酸の刺激だけでなく、香りや後味も楽しみたい。ビールらしい風味を好む人にとっては、その違いに意味がある。
- 料理と組み合わせる楽しみ
- どの料理に何が合うと感じるかは好みだが、食事のお供として選ぶ理由もある。サントリーの飲用実態調査でも、ノンアルコールビールテイスト飲料について「食事に合う」という飲用理由が挙がっている。
「普通のソフトドリンクには、あの風味がない」という特徴は、ビール味が苦手な人には魅力にならない。
一方で、あの風味が欲しい人には、それ自体が選ぶ理由になるのである。

「ええっ!『酔ったフリ』をするための飲み物じゃなくて、純粋に味が好きで飲んでる人がいるんだブーね!甘くない炭酸って意外と少ないブー。」
第三章:飲み会だけでなく、一人の晩酌にも出番がある
ノンアルコールビールの用途として思い浮かびやすいのが、飲み会での乾杯だ。
運転などの事情で飲酒しない人も、似た見た目のグラスを手に取れる。お酒を飲む気分や、その場への参加しやすさは、実際の飲用理由にも挙がっている。
ただし、誰かと同じものを飲んでいるように見せることだけが、目的ではない。

- 飲まない本人が、乾杯を楽しむ
- 周囲への気遣いだけでなく、自分もビールらしい一杯で食事や会話を楽しみたい、という選び方がある。
- 家で、一日の区切りにする
- 冷蔵庫から缶を取り出し、グラスに注いで食卓へ置く。そんな晩酌の時間を、アルコールなしで楽しむこともできる。
- 気分を切り替えるきっかけにする
- サントリーの調査では、ノンアルコールビールテイスト飲料が、自宅でリフレッシュしたいときや、開放感にひたりたいときなどに飲まれていると報告されている。メーカーによる調査ではあるが、飲み会以外の用途もうかがえる。
ここで求められている「お酒気分」は、必ずしも酔いと同じではない。
味やグラス、飲むタイミングを含めた、晩酌らしい時間を楽しむこともあるのだ。

「お酒は飲まないけど、『プシュッ』てやって1日を終わらせる儀式が欲しい時もあるんだブー!雰囲気も大事な隠し味だブー!」
第四章:「酔わないなら要らない」という感覚も自然
こうした理由を知っても、「自分なら、お茶でいい」と感じる人はいるだろう。
それは、ノンアルコールビールの楽しみ方を理解できていないという話ではない。
一杯に何を求めるかが違えば、選ぶ飲み物も変わる。

- 酔いが中心なら、魅力は小さくなる
- ビールの楽しさを主にアルコールの作用に感じている人にとっては、酔えないビール味に、同じ価値を感じるとは限らない。
- ビール味そのものが苦手なら、選ぶ必要はない
- 苦味や香りを好まない人には、その風味を再現した飲み物も魅力的には映りにくい。
- 飲まない日の選択肢は、一つではない
- お茶でも炭酸水でも、別のソフトドリンクでもよい。飲酒しない人が、必ずビールに似たものを選ぶ必要はない。
また、ノンアルコールビールを飲む人も、いつも同じ目的で選んでいるとは限らない。
ある日は飲めない事情があり、別の日は味を楽しみたい。同じ人でも、その日の予定や気分によって選ぶ理由は変わり得る。
「ノンアルを飲む人」と「飲まない人」を分けるより、その一杯で、今日は何を楽しみたいのかと考えるほうが、選択を理解しやすくなる。
終章:同じビール味でも、求めているものは違う
酔わないのに、なぜビール味を選ぶのか。
その答えは、苦味や香りが好きだから、食事のお供にしたいから、乾杯や晩酌の時間を楽しみたいから。そして、飲酒はしないが、ビールらしい一杯は欲しいからである。
もちろん、酔いを楽しみにしている人や、ビールの風味が好きではない人には、別の飲み物のほうが魅力的だろう。
同じようなグラスを傾けていても、楽しんでいるものは同じとは限らない。
ノンアルコールビールが選ばれる理由をたどると、私たちの「飲む楽しさ」が、味と酔いと、その時間の過ごし方から成り立っていることが見えてくるのである。




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