2026年10月1日、STARTO ENTERTAINMENTは、アイドルグループ「timelesz」のメンバーだった猪俣周杜さんとの専属契約を、9月30日付で解除したと発表した。
猪俣さんは9月19日、知人女性にけがをさせたとする傷害容疑で逮捕され、25日に処分保留で釈放されていた。現在も捜査は続いており、起訴・不起訴を含む刑事上の処分は確定していない。
それにもかかわらず、なぜ所属事務所は捜査の結論を待たずに契約解除へ踏み切ったのか。
事務所は、猪俣さん本人への聞き取りや事実関係の確認を行った結果、「専属契約上の重大な違反」が認められ、契約に定める解除事由に該当したと説明している。一方で、その判断は刑事処分とは別のものであることも明記した。
本稿は、「逮捕」「処分保留での釈放」「契約解除」という三つの出来事を整理し、刑事責任と芸能事務所の契約判断がどのように異なるのかを解き明かすレポートである。
第一章:「処分保留で釈放」は無罪でも不起訴でもない
まず理解しておきたいのが、「処分保留で釈放」という言葉の意味である。

- 身柄の拘束を解かれた段階
- 逮捕や勾留は、捜査のために被疑者の身柄を一時的に拘束する手続きである。
- 処分保留での釈放とは、検察が起訴・不起訴の最終判断を出さないまま、ひとまず身柄の拘束を解いたことを意味する。
- 事件が終了したわけではない
- 釈放されたからといって、疑いが晴れたことにも、無罪が確定したことにもならない。反対に、有罪が確定したことにもならない。
- 捜査を継続したうえで、検察官が後日、起訴するか不起訴とするかを判断する可能性が残されている。
一部報道では、猪俣さんと女性との間で示談が成立したとも伝えられている。ただし、これは事務所や捜査機関の公式発表ではなく、「関係者による情報」として報じられたものである。
仮に示談が成立していても、それだけで刑事事件が終了したり、有罪・無罪が決まったりするわけではない。示談は検察が処分を判断する際の事情の一つとなり得るが、起訴・不起訴を決めるのは検察官である。

「ええっ!釈放されたから『無罪放免』ってわけじゃなかったんだブー!?お家に帰れただけで、事件はまだ続いてるんだブーね。」
第二章:「刑事責任」と「契約責任」は別のルール
今回の発表で最も重要なのが、事務所が契約解除と刑事処分を明確に切り分けた点である。

- 刑事手続きが判断するもの
- 刑事手続きでは、警察や検察が捜査し、起訴された場合は裁判所が犯罪の成否と刑罰を判断する。
- 人を有罪とするには、法廷で犯罪事実が厳格に証明されなければならない。
- 芸能契約が判断するもの
- 一方、芸能事務所が判断するのは、「犯罪が成立するか」ではなく、所属タレントとの専属契約を維持できるかという問題である。
- 契約上の義務に重大な違反があったか、所属関係を支える信頼が維持できるか、今後もタレント活動を管理・支援できるかといった観点から、事務所は独自に経営判断を行う。
したがって、刑事処分が確定していない段階で契約を解除したからといって、事務所が刑事裁判に代わって猪俣さんを「有罪」と認定したことにはならない。
反対に、「有罪が確定していないのだから、事務所は何も判断できない」ということでもない。刑事責任と契約責任は、目的も判断基準も異なる二つの問題なのである。

「なるほどだブー!『警察のルール』と『会社のルール』は別物なんだブー!警察の判断を待たなくても、会社のルールを破った時点でアウトになるんだブーね。」
第三章:何が「重大な違反」だったのかは公表されていない
STARTO社は、猪俣さん本人への聞き取りや事実関係の確認を行い、9月29日の取締役会で契約解除を決定。翌30日付で専属契約を終了した。

ただし、事務所は「専属契約上の重大な違反が認められた」と説明しているものの、具体的にどの行為が、契約のどの条項に違反したのかまでは公表していない。
そのため、外部から「事務所が暴行の事実を認定した」「本人が容疑を全面的に認めた」などと断定することはできない。
現時点で確認できるのは、事務所が独自に本人への聞き取りと事実確認を行い、その内容を専属契約に照らした結果、関係を継続できないと判断したというところまでである。
刑事事件の詳しい事実関係は、今後も捜査機関によって調べられる。一方、事務所は、その結論を待つこととは別に、所属タレントとの契約を維持できるかという観点から経営判断を下したのである。
第四章:なぜ事務所は「ほかの7人に責任はない」と強調したのか
今回の発表文では、契約解除の説明と同じくらい、残る7人のメンバーに関する記述にも多くの言葉が割かれている。
事務所は、今回の契約解除について次のように説明した。

- 最終判断は、ほかのメンバー7人に委ねていない
- メンバーに処分の責任を負わせるものではない
- メンバーは問題となった行為を事前に把握していなかった
- 行為への関与も確認されていない
- 具体的に予見できる兆候を認識していた事実も確認されていない
これは、猪俣さん個人の契約問題と、timeleszというグループ全体を明確に切り離すための説明といえる。
事件を契機に「メンバーは知っていたのではないか」「オーディションで選んだ側にも責任があるのではないか」といった憶測が広がれば、無関係なメンバーや関係者まで批判の対象となりかねない。
そこで事務所は、契約解除を会社の経営判断として引き受け、残る7人に判断や処分の責任を背負わせない姿勢を明確にしたのである。
終章:7人で続くtimeleszと、今後の刑事手続き
結論として、猪俣周杜さんの契約が刑事処分の確定前に解除されたのは、事務所が刑事上の有罪・無罪を判断したからではなく、自社の専属契約に照らして関係を継続できないと判断したからである。
刑事手続きでは、今後も捜査が続き、検察が起訴・不起訴を判断する。
一方、芸能活動については、事務所が契約上の判断をすでに終え、timeleszは猪俣さんの脱退後も7人で活動を継続することになった。
ここで混同してはならないのは、「契約を解除されたから有罪」でもなければ、「釈放や示談によって事件が終わった」わけでもないということだ。
被害を訴える女性への詮索や二次被害を避けること。 猪俣さんに対しても、確定していない事実を断定して誹謗中傷しないこと。
そして、事案への関与が確認されていない7人のメンバーへ責任を広げないこと。
事務所による契約判断と、捜査機関による刑事判断。 二つの手続きの違いを冷静に理解し、今後の正式な発表を待つ姿勢が求められている。



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