アメリカの中間選挙で、野党・民主党が上下両院の多数派を奪還することが確実になった。
共和党が議会を主導してきたトランプ政権にとって、大きな転換点となる結果だ。
ただ、日本の政治に慣れていると、少し分かりにくい。
「与党が議会で負けたのなら、政権も交代するのではないか」と思うかもしれない。
しかし、今回の選挙でトランプ氏の大統領としての任期が終わるわけではない。
今後は、大統領と議会の多数党が異なる状態で、残る約2年間の政権運営が続くことになる。
本稿は、中間選挙で何が選ばれ、議会の多数派が変わると大統領の仕事にどのような影響が出るのか、その仕組みを解き明かすレポートである。
第一章:中間選挙は「大統領を選び直す選挙」ではない
中間選挙は、4年の大統領任期の中間に行われる選挙だ。 連邦議会の議員選挙に加え、多くの州で知事選なども実施される。

- 下院は全435議席を選び直す
- 下院議員の任期は2年。大統領選がある年も、その中間の年も、全議席が選挙の対象になる。
- 上院は約3分の1ずつ改選する
- 上院は各州2人、計100人で構成され、任期は6年。2年ごとに、原則として約3分の1の議席を選び直す仕組みだ。
大統領と連邦議会議員は、別々の選挙で選ばれる。
議会でどの党が多数派になったかによって大統領が選び直される制度ではないため、共和党が敗れても、トランプ氏は大統領を続けるのである。
今回の結果が議会の構成に反映されるのは、2027年1月に新しい議会が始まってからだ。

「ええっ!国会で負けたら総理大臣が辞める日本とは全然違うんだブー!?トランプさんはそのまま居座れるんだブーね!」
第二章:両院を失うと、法律も人事も進めにくくなる
では、大統領が続投するなら、議会の選挙結果はそれほど重要ではないのか。
実際には、大統領が政策を実現するうえで、議会の協力は欠かせない。

- 法律や予算には、議会との合意が必要
- 大統領が実現したい政策でも、新しい法律や予算措置が必要なら、議会での審議と可決を経なければならない。民主党が両院を主導することで、政権の提案に修正を求めたり、成立を阻んだりする力が強まる。
- 上院は重要人事の承認を担う
- 閣僚や大使、連邦最高裁判事などの任命には、上院の承認が必要となる。今後、新たに候補者を指名しても、民主党の反対によって承認が難航する可能性がある。
上院の多数派交代によって、現職の閣僚が一斉に交代するわけではない。
しかし、欠員の補充や人事刷新を進める際には、新しい議会との調整が重要になる。
大統領の地位は変わらなくても、政策や人事を実現するための条件が変わる。
それが、両院を失うことの大きな意味である。

「なるほどだブー!社長のままでも、役員会が全員ライバルになっちゃったら、新しいプロジェクトが全然進まなくて困るのと同じだブー!」
第三章:法案だけではない、政権への「調査」も変わる
議会の仕事は、法律や予算を決めることだけではない。
政府がどのように権限を使い、政策を実行しているかを監視する役割もある。

- 委員会の主導権が移る
- 多数派になった党は、各委員会の運営で主導権を握る。どの問題を取り上げ、何を調べるかという議会の動きにも、選挙結果が反映される。
- 政権への追及が強まる可能性
- 民主党は新しい多数派の立場を使い、トランプ政権やその関係者について調査を進めるとみられている。政権側は、政策を進めるだけでなく、議会への説明や調査対応も求められることになる。
ただし、調査が行われることと、不正が認定されることは別だ。
何を調査し、どのような事実が明らかになるかは、今後の議会の動きによる。
議会の多数派交代は、「どの法案が通るか」に加え、「政権が何について説明を求められるか」も変えるのである。
第四章:民主党も、大統領を自由に動かせるわけではない
トランプ氏は選挙後、民主党に祝意を示した。
一方で、結果を自分への打撃とは受け止めていないとも述べ、政権の実績を強調している。
議会を民主党が主導しても、政治の主導権がすべて民主党へ移るわけではない。

- 大統領には拒否権がある
- 議会が法案を可決しても、大統領は拒否権を行使できる。議会がそれを覆すには、上下両院それぞれで3分の2以上の賛成が必要だ。単に過半数を持つだけでは、民主党も自分たちの法案を成立させられるとは限らない。
- 双方に、交渉する必要が生まれる
- 政権は議会の協力なしに進められない政策を抱え、議会も大統領の反対を無視して何でも決められるわけではない。予算や法案を成立させるには、どこで折り合うかが問われる。
こうした、大統領と議会の多数党が異なる状態は「分割政府」と呼ばれる。
今回の選挙によって、アメリカはその局面に入る見通しとなった。
対立が強まるのか、分野ごとに協力が成立するのか。
祝意の言葉だけでは、その先の政権運営までは分からないのである。

「お互いに相手の邪魔はできるけど、自分のやりたいことも単独じゃできないんだブーね。これじゃあ政治が前に進まないブー…。」
終章:変わるのは大統領の名前ではなく、政策が進む条件
中間選挙で共和党が敗れても、トランプ氏の任期は続く。
しかし、法律、予算、重要人事、そして政権への調査を担う議会では、民主党が主導権を握ることになる。
大統領が何をしたいかだけで、政策が進むわけではない。
議会が何を認め、何に反対するかによって、実現できることは変わってくる。
今回の多数派交代は、大統領を交代させる選挙ではなかった。
それでも、大統領が残る任期を、どのような条件で務めるのかを変える選挙だったのである。




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