テンポのよい掛け合いと、聞き取りやすい声。
お笑いコンビ「サンドウィッチマン」の伊達みきおさんに、そんな印象を持つ人は多いだろう。
脳梗塞で療養していた伊達さんが、2026年10月31日、ニッポン放送『サンドウィッチマン ザ・ラジオショーサタデー』で仕事に復帰した。しかし、治療とリハビリは続いており、後遺症として「構音障害」が残っていると明かした。
本人によると、「毎日」のように「い」の段の音が続く言葉などに、言いにくさがあるという。
話す内容を考えることと、その言葉を口から滑らかに出すこと。普段は一続きに感じる行為にも、異なる働きが関わっている。
本稿は、伊達さんが語った復帰とリハビリの経過を入口に、構音障害の仕組みと失語症との違い、相方に求めたサポートの意味を整理するレポートである。
第一章:脳梗塞から復帰へ、続いているリハビリ
伊達さんは、8月末にロケ中に脳梗塞を発症したと説明している。
北海道・釧路の病院で約2週間入院した後、東京の病院へ転院。復帰後も、リハビリに通いながら活動を再開するという。

- 手足の症状は、改善したと説明
- 当初は力の入りにくさなどもあったが、現在は改善していると語った。
- 発音には、言いにくさが残る
- 舌の筋肉が弱くなっていると説明し、発音しにくい言葉を専門家と確認しながら練習している。
- 復帰と、リハビリを並行する
- 仕事へ戻ることが、すべての症状がなくなったことを意味するわけではない。伊達さんも、段階的に活動を再開するとしている。
伊達さんは、2月ごろには十分に話せるようになるのではないか、という見通しも口にした。
これは、ご本人が語った今後への見通しであり、構音障害が一律に同じ期間で回復するという意味ではない。
第二章:「話す」には、脳と口の細かな連係が必要
私たちは会話のたびに、舌をどこへ動かすか、唇をどの程度閉じるかを、一つずつ意識しているわけではない。
しかし、実際に言葉を音にするには、細かな運動が必要になる。

- 舌や唇などで、音を形作る
- 口の中の形や空気の通り方を変えることで、さまざまな音を作り分ける。この発音の働きを「構音」という。
- 神経が、発音のための運動を支える
- 脳からの指令などによって、発音に関わる筋肉が適切な強さやタイミングで動く。脳梗塞によって、この運動を支える働きが損なわれることがある。
- 力だけでなく、動きの調整も関係する
- 運動障害性の構音障害では、麻痺や筋力低下、動きの協調の障害などによって、歯切れよく話すことが難しくなる。
伊達さんが説明した「舌の筋肉が弱くなっている」という状態も、こうした発音の運動に関わる問題として理解できる。
言いたい言葉が分かっていても、それを正確な音として出すには、神経と筋肉の連係が必要なのである。

「ええっ!頭の中ではちゃんと言葉ができてるのに、それを口から出す時の筋肉がうまく動かないってことなんだブーね。もどかしいブー…。」
第三章:構音障害と「失語症」は、どこが違うのか
脳梗塞後に話しにくくなる状態として、「失語症」という言葉を聞いたことがある人もいるだろう。
構音障害と失語症は、どちらも会話に影響するが、障害される働きが異なる。

- 構音障害:言葉を音にする働きの問題
- 舌や唇などの動きに問題があり、発音が不明瞭になる。構音障害そのものは、言葉の意味を理解したり、伝えたい言葉を選んだりする力の障害ではない。
- 失語症:言葉を理解し、使う働きの問題
- 脳の損傷によって、話す、聞いて理解する、読む、書くといった言語機能に支障が生じる。現れ方や程度は、人によって異なる。
ただし、脳の損傷によって、両方が起こる場合もある。
話し方だけを聞いて、その人にどのような障害があるのかを決めつけることはできない。
伊達さんが公表したのは、構音障害である。
発音しにくいことを、そのまま「言葉が分からない」「考えがまとまらない」という意味に受け取るのは適切ではない。

「なるほどだブー!『言葉が思い浮かばない』わけじゃなくて、『口がうまく回らない』だけなんだブーね。全然違うブー!」
第四章:「大丈夫」より、言い直すきっかけが欲しい
今回の放送で、伊達さんは相方の富澤たけしさんに、発音できていないときには指摘してほしいと頼んだ。
周囲が気を使って大丈夫と言ってくれても、自分では、うまく言えなかったと感じることがある。
相方に指摘してもらえれば、そこで言い直せる。そんな考えを伝えている。

- 励ましと、本人が欲しい助けは同じとは限らない
- 周囲が安心させようとする言葉も、本人の感じている困難とずれる場合がある。伊達さんは、そのずれを自分の言葉で説明した。
- 相方との掛け合いの中で、言い直したい
- 自分だけで会話を止めるのではなく、相方からの指摘を受けて言い直す。仕事を共にしてきた二人ならではの、会話の続け方を求めたとも読める。
- 希望する関わり方を、自ら伝えた
- 指摘してほしいか、待ってほしいか、必要なときに手伝ってほしいか。今回のやり取りで大切なのは、伊達さん自身が望む方法を伝えたことである。
これは、構音障害のある人には、誰にでも強く指摘すればよいという話ではない。
伊達さんが相方に求めた、具体的なサポートの形として受け止めたい。
終章:復帰した声の向こうで、続いていること
伊達さんは、構音障害が残ることを明かしたうえで、仕事への復帰を選んだ。
発音しにくい言葉を練習しながら、相方にも助け方を伝え、再び会話の場へ戻ってきたのである。
普段は意識しない、一つの言葉を滑らかに発音する働き。
その背景には、脳や神経、舌や唇などの細かな連係がある。
復帰を喜ぶことと、発音の困難が続いていると理解することは両立する。
今回の伊達さんの言葉は、話す働きの複雑さとともに、支えを受ける本人が「こうしてほしい」と伝えることの大切さも示している。




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