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流行語大賞なのに、知らない言葉があるのはなぜ?──2026年の候補30語を一覧解説、「今年を映す言葉」の選ばれ方

社会
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「好きすぎて滅!」「ドパガキ」「あかり、信じてるからな」。
言葉を見ただけで背景が浮かぶ人もいれば、初めて聞いたという人もいるだろう。

11月5日、「2026 T&D保険グループ新語・流行語大賞」のノミネート30語が発表された。「ちいかわ(現象)」や「りくりゅう」などのほか、暮らしやAIに関する言葉も候補入り。トップテンと年間大賞は、12月1日に発表される予定だ。

ところが、一覧には昔から使われている言葉や、何年も前に発売された曲の名前もある。
「今年の流行語なのに、なぜ?」と感じるのも無理はない。

本稿は、候補30語の意味と背景を整理しながら、新語・流行語大賞の選び方と、身近な流行との間に違いが生まれる理由を解き明かすレポートである。


第一章:候補30語は何を指す?──意味と背景を一覧で解説

候補語には、一般的な単語だけでなく、人物や動物の愛称、商品名、曲名も含まれている。 ここでは五十音順に、10語ずつ三つの表に分けて紹介する。

「青切符」から「消費税1%」まで
候補語意味・何を指すか今年注目された背景
青切符一定の交通違反について、反則金の納付により刑事手続きへ進まず処理する制度で使われる切符。4月から、16歳以上の自転車運転者にも制度が適用された。
あかり、信じてるからな料理家・管理栄養士の長谷川あかりさんのレシピを作る人が、期待や戸惑いを込めて使う言葉。意外な材料や手順に驚きながら、仕上がりを信じて作る投稿がSNSで広がった。
AI暴走AIが人間の意図や想定を外れた行動を取ることへの懸念を表す言葉。AIの自律的な行動や、安全性をどう管理するかが話題になった。
キオクシアフラッシュメモリーなどを手がける半導体企業の名前。AI関連需要への期待を背景に、株価の動きや個人投資家の反応が注目された。
ギルティ英語では「有罪の」「罪悪感のある」。今回は主に、背徳感を楽しむ食べ物の表現。高カロリーや濃厚さを、あえて魅力として打ち出す食品が話題になった。
警戒レベル5災害の危険度を伝える5段階のうち、最も高いレベル。5月からの防災気象情報の新運用で、特別警報の名称にも「レベル5」が付くようになった。
言語化感覚や考え、経験などを、言葉にして表すこと。仕事やSNSなどで、自分の気持ちや考えを説明する力への関心が見られた。
声の権利本人の声や、それに似せた声を無断利用されることをめぐる権利の問題。生成AIによる声の模倣が広がり、本人の同意や法的保護が論点になった。
酷暑日日最高気温が40℃以上の日。気象庁が4月、予報用語としてこの名称を採用した。
消費税1%飲食料品の消費税率を、期間限定で1%へ引き下げる政策を指す言葉。物価高対策として、減税の効果や制度設計が話題になった。

「青切符」は制度そのものが今年生まれたのではなく、自転車への適用が始まったことが背景にある。「酷暑日」も、従来から使われていた表現が、気象庁の予報用語になった点が今年の変化だ。

「警戒レベル5」の新運用は気象庁の資料で確認できる。「キオクシア」「声の権利」「消費税1%」などは、候補語解説で今年の経済やAIをめぐる動きと結び付けられている。

「好きすぎて滅!」から「なんとかなれーッ」まで
候補語意味・何を指すか今年注目された背景
好きすぎて滅!5人組グループ・M!LKの楽曲名。好きという強い気持ちを、大げさに表したフレーズ。楽曲に加え、振り付けや「滅ポーズ」が広がった。
スクイーズ握ったり押したりして、柔らかい感触を楽しむ玩具。再ブームの中で、表面を割る音や感触を楽しむタイプも話題になった。
スマホ農場大量のスマートフォンを使い、再生数やクリック数などを組織的に水増しする拠点。ネット上の人気や評価を人為的に作る仕組みが注目された。
setlog(セットログ)短い動画で日常を記録し、共有する動画投稿型SNS。1時間ごとの短い記録を、1日分の動画にまとめる仕組みが話題になった。
だけ弁当ローソンストア100が展開する、おかずを1種類に絞った弁当シリーズ。シンプルな見た目と手頃な価格が、節約志向とも結び付いた。
ちいかわ(現象)ナガノさんの漫画『ちいかわ』と、その人気の広がりを指す。映画やグッズ、企業とのコラボなど、作品の外にも話題が広がった。
データセンターサーバーなどを置き、情報処理や通信を支える専用施設。AIの普及に伴う需要拡大と、電力・冷却などの課題が注目された。
ドパガキ強い刺激を短時間で得ることに慣れた人を、からかったり自虐したりするネット俗語。ショート動画やSNSとの付き合い方を表す言葉として広がった。医学的な診断名ではない。
ナフサ原油から作られ、プラスチックなどの原料になる石油製品。中東情勢に伴う供給不安が、包装材など身近な製品にも影響した。
なんとかなれーッ『ちいかわ』に登場するハチワレのせりふ。困難な場面で思い切って行動する気持ちと重なり、作品外でも使われた。

「スマホ農場」は、農作物を育てる場所ではなく、ネット上の数字を大量に作り出す拠点のたとえだ。「ナフサ」は専門的な原料名だが、今年は暮らしに関わるニュースとして取り上げられた。

また、「だけ弁当」は2021年に販売が始まった商品。「今年誕生したもの」だけが候補ではないことは、この表からも分かる。

「NISA貧乏」から「りくりゅう」まで
候補語意味・何を指すか今年注目された背景
NISA貧乏将来のための投資にお金を回しすぎ、現在の生活が苦しくなることを表す言葉。資産形成への関心と、日々の家計とのバランスが話題になった。
パンチくん千葉県の市川市動植物園で暮らすニホンザルの子どもの愛称。オランウータンのぬいぐるみを抱く姿などが、国内外で注目された。
ピックルボール板状のパドルと穴の開いたボールで打ち合う、米国発祥のスポーツ。幅広い年代が楽しめる競技として、日本でも関心が高まった。
フィジカルAIロボットなどを通じ、現実の空間で認識・判断・動作するAI。画面内の文章や画像生成にとどまらない、AIの活用先として注目された。
フレネミー「friend(友人)」と「enemy(敵)」を組み合わせた語。親しげに接しながら、実は足を引っ張る人などを指す。SNSも含む、複雑な人間関係を説明する言葉として使われた。
ホビ垢趣味の情報発信や交流に使う「ホビーアカウント」の略。本来の知人関係とは別に、趣味や推し活を楽しむ使い方が広がった。
ボンボンドロップシール(ボンドロ)ぷっくりとした立体感と透明感が特徴のシールの商品名。子どもに加え、大人も巻き込んだ収集・交換ブームが起きた。
モナキ純烈の酒井一圭さんがプロデュースする4人組歌謡コーラスグループ。今年のメジャーデビュー後、楽曲や振り付けが幅広い世代に広がった。
夜の踊り子サカナクションが2012年に発売した楽曲。ダンス動画などを通じ、ネットミームとして再注目された。
りくりゅうフィギュアスケート・ペアの三浦璃来選手と木原龍一選手の愛称。ミラノ・コルティナ冬季五輪での金メダル獲得が大きな話題になった。

動物の愛称からスポーツ、投資、商品名まで、候補の分野は幅広い。「パンチくん」はぬいぐるみと過ごす姿、「ピックルボール」は競技そのものの広がりが話題となった。

「NISA貧乏」は制度の正式名称ではなく、投資と暮らしの配分をめぐる表現。「モナキ」「夜の踊り子」「りくりゅう」は、それぞれ今年の活動や再流行、活躍と結び付いた候補である。

ブクブー
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「ええっ!『ナフサ』なんて理科の授業みたいな言葉も流行語の候補になるんだブー!?流行り言葉っていうより、今年のキーワードまとめだブー!」


第二章:新語・流行語大賞は、誰がどう選ぶのか

一覧を見て、「使用回数の多い順なのだろうか」と思った人もいるかもしれない。
しかし、この賞は、単語の使用回数だけを集計して順位を決めるものではない。

  • 出発点は『現代用語の基礎知識』
    • 自由国民社による説明では、今年の候補30語は『現代用語の基礎知識2027』に掲載された新語や話題の言葉から、選考を重ねて選ばれている。
  • 候補から、選考委員会が受賞語を選ぶ
    • ノミネート語をもとに、選考委員会がトップテンと年間大賞を決める。全国の人に一票ずつ投じてもらう人気投票とは異なる仕組みだ。

今年の選考委員は、辛酸なめ子さん、パトリック・ハーランさん、室井滋さん、やくみつるさん、そして『現代用語の基礎知識』編集長の大塚陽子さんの5人である。

つまり、候補一覧は「日本中で使われた言葉の上位30語」という統計ではない。
どの言葉が、その年の出来事や空気を伝えるかという、選考側の視点も反映された一覧なのである。

ブクブー
ブクブー

「なるほどだブー!AIが数えたんじゃなくて、審査員のおじさんやおばさんが話し合って選んでるから、僕たちの体感とちょっとズレることもあるんだブーね!」


第三章:昔の曲や商品名まで、候補になる理由

「夜の踊り子」は2012年の楽曲で、「だけ弁当」も今年発売された商品ではない。
それでも候補になるのは、この賞が「今年初めて生まれた言葉」だけを対象にしているわけではないからだ。

  • 新しく生まれることと、新しく広まることは違う
    • 昔の曲でも、動画への利用や新しい楽しみ方をきっかけに、改めて注目されることがある。「夜の踊り子」は、そうした再流行を示す候補だ。
  • 名前そのものが、その年の出来事を思い出させる
    • 「りくりゅう」と聞いて五輪での演技を思い浮かべるように、人やグループの呼び名が、一つの出来事を象徴することもある。
  • 既存の言葉に、今年ならではの背景が加わる
    • 「酷暑日」は言葉自体の新しさに加え、気象庁が予報用語に採用したという変化がある。以前から知っていた言葉でも、今年のニュースを映す候補になり得る。

言葉の誕生日と、話題の中心になる年は、必ずしも同じではない。
候補の意味だけでなく、「なぜ今年、この言葉なのか」を見ると、選出の背景が理解しやすくなる。


第四章:「知らない言葉がある」と感じるのはなぜか

流行語の発表を見るたびに、「聞いたことがない」「自分の周りでは使わない」と感じることがある。
ただ、それだけで、流行していなかったと判断することも難しい。

  • 普段触れている情報が、人によって違う
    • スポーツをよく見る人、投資のニュースを追う人、音楽やSNSを楽しむ人では、目にする言葉が異なる。今回の候補も、それぞれ違う分野から選ばれている。
  • 会話で使う言葉ばかりではない
    • 「データセンター」や「ナフサ」は、友人との会話で繰り返す決めぜりふではない。それでも、ニュースを通じて社会的な関心を集める言葉にはなる。
  • 一つの一覧にすると、接点のなかった話題も並ぶ
    • 自分にはおなじみの言葉が、別の人には初耳ということもある。30語を横断して見ることで、普段は触れない分野の話題にも出会える。

自由国民社も、SNSなどで触れる情報には自分の興味によるフィルターがかかりやすいとし、幅広い分野の言葉をまとめる意義を説明している。

もちろん、候補の選び方に疑問を持ったり、自分なら別の言葉を挙げたりすることもできる。
選ばれた30語と、自分が実感した一年を比べることも、この一覧の楽しみ方の一つなのである。


終章:知らない言葉も、一年を知る入口になる

新語・流行語大賞の候補には、今年生まれた言葉、以前からある言葉、再注目された曲、人物や商品の名前が並んでいる。

それぞれの意味を知ると、単なる単語の一覧が、暮らしや技術、娯楽の変化をたどる記録に変わってくる。

12月1日に選ばれるのは、どの言葉なのか。
その発表を待つ前に、知らなかった候補を一つ調べてみるだけでも、自分とは違う場所で広がっていた今年の話題が見えてくるのである。

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