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トレビの泉には“コインを回収する仕事”がある?──観光客の願いが、誰かの暮らしを支えるまで

海外
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イタリア・ローマを代表する観光名所、トレビの泉。
「肩越しにコインを泉に投げ入れると、再びローマを訪れることができる」というロマンチックな言い伝えは、世界中の観光客を魅了してやまない。

毎日、数え切れないほどの人々が背を向け、笑顔でコインを放り投げる。 しかし、水底にキラキラと沈んでいくそのコインの「その後」について、深く考えたことがあるだろうか。放置すれば水底に硬貨がたまり続ける。

実は、この泉には「コインの回収を担当する作業員」が存在する。しかもそのお金は、回収者のポケットに入るわけでも、ローマ市の財源として単に吸収されるわけでもない。

本稿は、観光客が己の未来に託した一枚のコインが、見知らぬ誰かの生活を支える資金へと変わるまでの、知られざる「回収と支援のプロセス」を解き明かすレポートである。


第一章:「ほうきとホース」で集める物理的な重労働

泉の底からお金を拾い上げると聞くと、「宝探し」のようなワクワクする仕事を想像するかもしれない。しかし現実は、極めて物理的でシビアな清掃作業である。

  • 作業の担い手
    • コインを回収するのは、ローマの公共サービス企業「ACEA」の作業員たちである。
  • 回収の方法
    • 彼らは長靴を履いて泉に入り、長い柄の付いた「ほうき」を使って底に散らばったコインを一列に掻き集める。そして、巨大な「ホース(吸引機)」を使ってそれらを一気に吸い上げていく。
    • 2024年のロイター取材時点では、この回収作業は週に2回行われており、集められた大量の硬貨は、そのままカトリックの支援組織である「カリタス・ローマ」へと運ばれる。
ブクブー
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「ええっ!一つずつ拾うのかと思ったら、掃除機で一気に吸い上げてたんだブー!?泥だらけのコインを洗って仕分けるなんて、ものすごい重労働だブー…。」


第二章:洗浄から換金まで──支援に繋ぐための「裏方作業」

カリタスに運ばれたコインは、すぐに寄付金として使えるわけではない。ここからさらに地道な裏方作業が待っている。

  • 洗浄と乾燥
    • 水と泥にまみれた硬貨を大きな台の上に広げ、洗浄・乾燥させる。
  • 仕分けと換金
    • 世界中から観光客が集まるため、ユーロだけでなく米ドル、日本円、その他あらゆる国の通貨が混ざっている。これらを種類ごとに仕分け、専門業者を通じてユーロに換金するという途方もない手間と手数料がかかっている。
    • こうしたプロセスを経て初めて、水底のコインは「支援に使える資金」へと生まれ変わるのである。

第三章:年間「3億円」を生み出す観光客の力

では、この地道な作業によって集められたコインは、一体どれほどの金額になるのか。

  • 莫大な回収額
    • カリタス・ローマの報告によれば、2023年には約197万ユーロ、2025年には約186万ユーロもの金額が回収された。
    • 2025年の金額は、日本円にして約3億690万円(※1ユーロ=165円で換算)。同年の金額から単純計算すると、1日平均で約5,100ユーロ(約84万円)もの小銭が泉に投げ込まれている計算になる。

一人ひとりが投げるのは、ほんの数ユーロ、数十セントに過ぎない。しかし、それが世界中から集まると、一つの巨大な社会福祉財源となるのだ。

ブクブー
ブクブー

「1日で80万円!?トレビの泉、世界最強の貯金箱だブー!!」


第四章:「自分で選べる」支援という尊厳

集まった資金はローマ市との協定に基づき、カリタスを通じて生活困窮者への食事提供、住まいや医療の支援などに充てられる。これらの支援は、泉のコイン以外の財源にも支えられている。

中でも特徴的なのが「エンポリ・デッラ・ソリダリエタ」と呼ばれるスーパーマーケット形式の支援施設だ。

  • 無料のスーパーマーケット
    • ここでは、あらかじめ決められた食料の配給袋を渡すのではなく、利用者が支援用のポイントカードを使い、「棚から自分や家族に必要な品物を自由に選んで買う(受け取る)」ことができる。
  • 尊厳を守る支援
    • 家庭によって必要なものやアレルギー、宗教上の食の禁忌は異なる。自分で選べる自由を提供することは、単なる物資支援を超えた「人間の尊厳を守る」という重要な意味を持っている。

終章:魔法ではなく、人の手による奇跡

結論として、トレビの泉のコイン回収は、単なる清掃作業ではなく、「世界中の観光客の思い出作りを、現地の困窮者支援へと変換するための巨大なシステムの一部」であった。

観光客の中には、寄付を意識せず、ただ「またローマに来たい」という個人的な願いを込めてコインを投げる人もいる。 しかし、その無邪気な願いを物理的に集め、洗い、仕分けし、スーパーの棚の食料へと変える「人の手(システム)」が介入することで、結果的に見知らぬ誰かの今日の命を支えている。

「コインを投げれば願いが叶う」という伝説の真偽は誰にも分からない。 しかし、投げ込まれたコインが形を変えて誰かの人生を救っているという事実は、紛れもなくローマの街で起きている「現実の奇跡」なのである。

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