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アーティスティックスイミングの髪形はなぜ乱れない?──ゼラチンで固める舞台裏と、「シンクロ」から名前が変わった理由

スポーツ
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水面から上半身を持ち上げ、勢いよく回転し、そのまま水中へ。 音楽に合わせて次々と技を繰り出すアーティスティックスイミングには、演技とは別に、気になることがある。

選手たちの髪形だ。 何度も潜り、激しく動いているのに、きれいにまとめられた髪はほとんど乱れない。

その秘密は、ゼリーなどを作るときにも使う「ゼラチン」にある。選手たちは、まとめた髪にゼラチンを塗り、演技中も形を保てるようにしている。

そして、この競技にはもう一つ、気になる変化がある。

かつて広く親しまれていた「シンクロナイズドスイミング」という名前は、なぜ使われなくなったのか。

本稿は、水中でも乱れない髪形を支える工夫と、「シンクロ」から競技名が変わった背景を解き明かすレポートである。


第一章:髪形を支えるのは、お菓子にも使うゼラチン

アーティスティックスイミングの選手は、髪をしっかりまとめたうえで、ゼラチンを使って固定する。 水に入る前の準備に、食品としておなじみの材料が登場するのだ。

  • 湯で溶かし、髪に塗る
    • 競技クラブの説明では、ゼラチンを湯と混ぜ、なめらかなペースト状にして髪へ塗っていく。髪の表面を覆い、形を保つために使うのである。
  • まとめた髪を、さらに固定する
    • 英国オリンピック委員会の紹介では、髪をしっかりお団子にまとめ、ゼラチンで覆った後、ドライヤーで仕上げる方法が説明されている。

元日本代表の箱山愛香さんも、粉状のゼラチンを湯で溶いて髪に塗り、固めていると説明している。
特殊な整髪料のように見えるあの仕上がりは、ゼラチンを利用した工夫だったのである。

ブクブー
ブクブー

「ええーっ!お菓子のゼリーを作る材料で髪を固めてたんだブー!?水に入っても崩れない最強の整髪料だったんだブーね!」


第二章:「髪を整える」ことも、演技を支える準備

では、なぜ髪をそこまでしっかり固定するのか。 髪形には、演技を見せるうえでの役割がある。

  • 顔や表情を見えやすくする
    • 演技中に髪が顔へかかれば、表情が見えにくくなる。髪を後ろへまとめることは、選手の顔をすっきり見せるためにも役立つ。
  • 動きの邪魔にならないようにする
    • 激しい動きの中でも髪がばらけないように整えることで、演技に取り組みやすくなる。英国の競技団体も、髪をまとめて邪魔にならないよう、ゼラチンを使うと紹介している。

ただし、演技が終われば、今度は固めた髪を洗い流さなければならない。
競技クラブでは、泳ぎ終えたらできるだけ早くゼラチンを落とすよう案内している。

観客が目にするのは、水中での演技の時間。
その前後には、髪形を作り、元に戻すための手間もあるのだ。


第三章:定着していた「シンクロ」が変わった理由

日本では「シンクロ」という略称で、長く親しまれてきた。 それでも名称が変わったのは、国際的な決定によるものだった。

  • 国際的には2017年に変更
    • 当時の国際水泳連盟(FINA)は、2017年7月の総会で「シンクロナイズドスイミング」から「アーティスティックスイミング」への名称変更を決めた。
  • 日本では2018年4月から
    • 日本水泳連盟は、2018年4月1日から新名称を採用した。日本だけで呼び方を変えたわけではなく、国際的な変更に合わせた対応である。

変更の理由は、「同調する」という意味だけでは、競技全体を表しきれないという考え方にあった。

動きをそろえることは大切だが、この競技には、音楽をどう表現するか、演技をどう構成するか、どれだけ高度な技を見せるかという側面もある。
国際水泳連盟は、新名称について、競技の本質をより適切に示すことを目指した変更と説明している。

ブクブー
ブクブー

「なるほどだブー!ただ動きをそろえるだけじゃなくて、芸術的な表現も見てほしい!っていうアピールだったんだブーね。」


第四章:「そろえる」だけでは伝わらない競技の広がり

名称変更には、競技の魅力を世界へ伝え直す狙いもあった。

  • ほかの採点競技とのつながり
    • カナダの競技団体による当時の説明では、変更の最初の提案は国際オリンピック委員会(IOC)から出たという。英語で「Artistic Gymnastics」と呼ばれる体操競技など、芸術性を伴う採点競技とのつながりが意識されていた。
  • 競技のイメージを広く伝える
    • 同団体は、名称変更を、世界での認知度や競技のイメージを高める機会と捉えていた。「シンクロナイズド」が表すのは必要な技能の一面であり、選手の身体能力や芸術性の幅広さまでは伝えきれない、という説明である。

もちろん、名前が変わったからといって、動きをそろえる重要性がなくなったわけではない。
「そろえる技術」を含め、その先にある表現まで伝えたい。 新名称には、そうした意図が込められている。

長く親しんだ「シンクロ」という呼び方と、新しい名称の間に距離を感じるのも自然だろう。
その背景を知ると、少し長い競技名にも意味が見えてくる。


終章:乱れない髪形の先にある、水中の表現

アーティスティックスイミングの髪形を支えているのは、ゼラチンを使った丁寧な準備だった。
顔を見えやすくし、髪が演技の邪魔にならないように整える。その工夫が、水中での表現を支えている。

一方、「シンクロ」からの名称変更は、動きの一致だけでなく、身体能力や芸術性も含めて競技の魅力を伝えようとしたものだった。

一見すると、髪形の秘密と競技名の変更は別々の話に思える。
しかし、どちらにも、水の中で演技をどう見せ、どう伝えるかという、この競技ならではの工夫が表れているのである。

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